XIV.その他 ■刀剣類  世界各地に伝わる神が携えている剣や、実際に存在する宝剣。その力は様々で、破魔の力を持つ神剣から、持ち主に不幸を  を呼び寄せる妖剣、あるいは単に美しい装飾を施された宝剣であったりする。どの剣にも刀匠の魂がこもっており、その刀身  は宝石のごとく美しく輝いている。 ■倶利迦羅剣 《Kurikara no turugi》  出身地:インド  五大明王のひとり、不動明王が右手に持つ剣。または不動明王が変化した姿の倶利迦羅竜王が巻き付いた剣のこと。 ■村正 《Muramasa》  出身地:日本  室町時代の刀匠。美濃系と見られる。数代続き、初代は貞治年間の人と伝えられるが、村正銘を持つ現存最古の刀は1501年の作。  鎌倉の正宗に師事したが破門され、伊勢国桑名郡千子(せんご)で刀剣を打ったと言われる。  一般に古刀は表裏の刃文がそろわないが、村正のものは表裏がそろっているのが特色。徳川幕府の禁忌にあい、妖刀視された。  同名数人あり。 ■八握剣 《Yatuka no turugi》  出身地:日本  天照大御神が邇藝速日命の降臨時に授けた十種の神宝のうちのひとつ。邪悪なる者を打ち倒す力があるとされている。  十種の神宝の残りは次のようなものである。澳津鏡(おきつかがみ)、辺津鏡(へつかがみ)、生玉(いくたま)  死反玉(まかるがえしのたま)、足玉(たるたま)、道反玉(ちがえしのたま)、蛇比礼(へびのひれ)、蜂比礼(はちのひれ)  品物比礼(くさぐさのもののひれ)。 ■天瓊矛 《Ame no Nuhoko》  出身地:日本  玉で飾った美しい鉾。伊弉諾尊、伊弉冉尊の2神が滄溟(あおうなはら)をかき回したという鉾。 ■天叢雲剣 《Ame no Murakumo no turugi》  出身地:日本  素戔嗚尊が八岐大蛇を退治した時に、八岐大蛇の尾の中から現れた剣が天叢雲剣である。この剣は後に倭建命の手に渡って草薙剣  と呼ばれるようになり、熱田神宮に祀られる。 ■草薙剣 《Kusanagi no turugi》  出身地:日本  倭建命が叔母の倭比売から授けられた剣。この当時はまだ天叢雲剣という名前だったが、相模の賊に草原に火を放たれた時、その剣  で草を薙ぎ払って難を逃れてからは草薙の剣と呼ばれるようになった。  この草薙の剣は八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊の勾玉(やさかのまがたま)とあわせて三種の神器と呼ばれ、今でも皇位の象徴と  して天皇家に受け継がれている。ただし、草薙の剣だけは、源平合戦の際に壇ノ浦に沈み、それ以降は他の剣で代用されている。 ■如意棒 《Nyoiboh》  出身地:中国  孫悟空が持っていた棒。伸縮自在でこの世のどんなものよりも硬く、そして重いという。その重さは大の大人が3人がかりでも持ち  上がらなかったというほど。 ■七星剣 《Sitisho ken》  出身地:中国  中国の星学で、貪狼星、巨門星、禄存星、文曲星、廉貞星、武曲星、破軍星の7つの星を戴いた剣。北斗七星は古来より信仰の対象と  して祭られてきており、神威を篭めるために北斗七星を剣に戴いたのであろう。  西遊記に登場する金角、銀角が持っており、孫悟空の如意棒と互角に戦うことができる。  また、日本にも七星剣が伝わっており、現在は東京国立博物館にある。聖徳太子の愛刀で、大阪の四天王寺の四天王像(のうちの一柱)  が掲げていた。北斗七星が金象嵌であしらわれている。明治維新のおりに四天王寺から皇室に寄贈され、さらに帝室博物館(東京国立博  物館の前身)に下賜され今にいたる。 ■経津御霊 《Hutu no mitama》  出身地:日本  伊波礼昆古命が那賀須泥昆古との戦いの途中、熊野に上陸した時、土地神の熊が現れ、伊波礼昆古命と兵士たちは全て衰弱して倒れてし  まう。その時熊野に住む高倉下という老人が現れ、剣を渡した途端、伊波礼昆古命たちはたちまち回復してしまった。その剣が布都御魂  で、これは建御雷神が国譲りを承諾させる時に使っていた剣である。 ■正宗 《Masamune》  出身地:日本  岡崎正宗。鎌倉時代の刀匠。名は五郎。初代行光の子という。生没年不詳。  相模国鎌倉の住人新藤五国光(しんとうごくにみつ)の門と伝えられ、国光が開拓した相州伝を開拓して一派を開き、無比の名匠と称せ  られた。義弘、兼光はその弟子。  作品にも年紀のある確実なものはないが、沸出来(にえでき)の美しさを最大限に発揮し、地肌には美しく地景を交え、のたれ刃に特色  のある独特の作風を樹立した。 ■無想正宗 《Musou Masamune》  出身地:日本  小説『眠狂四郎シリーズ』に登場する眠狂四郎の佩刀。岡崎五郎入道正宗の作で、豊臣秀頼の愛刀であったと伝えられる。 ■大般若長光 《Daihanja Nagamitu》  出身地:日本  足利将軍の宝刀。備前長船の刀匠の作。 ■ゲイボルグ 《Gaborg》  出身地:アイルランド  ケルト神話に登場する魔の槍。ケルトの英雄クー・フーリンが影の国の女王スカアハから授かった。彼はこの槍を用いて1日に100人の敵  を倒したと言われている。しかしカラティン3兄弟にかけられた呪いにより、彼はこの槍で生き別れになっていた自分の息子を殺してしま  い、自分自身も敵に奪われたゲイボルグによって刺し殺されてしまう。 ■備前物 《Bizen mono》  出身地:日本  備前の刀匠の作った刀剣の総称。古刀に優れたものが多い。  平安時代に古備前派(友成、正恒ら)、鎌倉時代には一文字派(則宗、助宗ら)、長船派(光忠、長光、景光、兼光ら)をはじめ、多く の流派が生まれ、匂出来で流麗な作が多い。室町時代以降は長船派が中心となって栄えた。 ■古備前包平 《Kobizen Kanehira》  出身地:日本  古備前派の刀工。助平、高平とともに備前三平(さんひら)の名がある。後鳥羽上皇の釜歯、蒲穂、鈎切り、平重衡の稗穂、源頼朝の靫  丸、簾丸、箱王丸、小手丸などの数々の名剣を打った。備前岡山の池田家に伝えられた大包平は特に有名。のち、河内の国に移る。 ■左文字 《Samonji》  出身地:日本  銘に「左」の文字を刻した鎌倉末期から室町時代にかけての筑前の刀匠。初代を正宗門人と伝え、大左(おおさ)という。 ■紅雪左文字 《Kosetsu Samonji》  出身地:日本  名前の由来は、小田原北条氏の臣、板部岡越中守融成入道江雪斎の佩刀であったところから。後に豊臣秀吉に献上され、さらに徳川家康  徳川頼宣へと伝わった。徳川頼宣はこの太刀を帯びて大阪冬の陣、夏の陣に参加。以後紀州家に伝えられ、昭和7年、国宝に指定された。 ■関の兼定 《Seki no Kanesada》  出身地:日本  美濃国の関の刀工。二代目は室町時代後期の人で和泉守を受領し、「定」の字を宀+之と切ったため俗に「之定(のさだ)」と呼ばれと  くに有名。切れ味がよく、池田信輝の「篠ノ雪」を始め、武田信虎、織田信澄、柴田勝家、細川忠興、明智光秀らの武将に愛用された。 ■虎徹 《Kotetu》  出身地:日本  江戸前期の刀匠。名は興里(おきさと)、通称三之丞。はじめは加賀金沢(越前福井とも)で甲冑工として名があったが、後に近江長曾  禰(おうみながそね)に住んで刀匠となり、明暦初めのころ江戸で大成した。師は上総介兼重とする説が有力。2代興正(おきまさ)も  師に継ぐ上手であった。  地鉄の鍛えが優れ、刃文は匂口(においぐち)のさえた「互(ぐ)の目乱れ」を得意とした。時代により銘字が変遷し、長曾禰興里、長  曾禰虎徹入道興里、虎入道など6種ある。人気があるため偽作が多い。 ■長道 《Nagamichi》  出身地:日本  奥州会津藩の刀工。通称は籐四郎。その作は、最上大業物と評され、会津では「会津正宗」「会津虎徹」とも呼ばる。二代目以降も代々  藩工として活躍。 ■仁王清綱 《Nioh Kiyotsuna》  出身地:日本  清綱は鎌倉時代末から、室町時代初頭にかけての周防国の刀工。鎖で繋がれていた運慶作の仁王像を、火災から助けるために初代清綱が  自作の刀で鎖を断ち切り事無きを得たことから、以後銘に「仁王」を冠した。仁王像が鎖で縛められていたのは、夜な夜な堂より抜け出  して、里人の災いとなっていたため。神霊を捕縛していた鎖を切断したことから、清綱の刀にはさらなる神威を認められ、江戸時代初期  には、狐憑きや瘧を治すという伝説がうまれた。 ■村雨丸 《Murasame maru》  出身地:日本  曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」に登場する源氏累代の宝刀。結城合戦の混乱から、八犬士の一人犬塚信乃へ渡り、物語の大団円とともに  足利成氏の元へ戻る。名前の由来は、刀身より露滴り、村雨の如く血で濡れた刃を洗い流すところから。 ■小狐丸 《Kogitunemaru》  出身地:日本  京都三条の刀匠、三条小鍛冶宗近(さんじょうこかじむねちか)作の霊剣。稲荷明神が相槌をつとめ、表には小鍛冶宗近、裏には小狐丸  と銘が入っている。   2)その他  おもに神が使用するアイテムであったり、人間に恩恵を与える物。 ■ドラウプニル 《Dorawpnill》  出身地:北欧  鍛治の神シンドリが作りオーディンに献上した、王権を象徴する黄金の腕輪(指輪)。このドラウプニルは9日ごとに自分とまったく同  じ物を8個作り出すという不思議な性質がある。 ■グレイプニル 《Grapenill》  出身地:北欧  怪狼フェンリルをラグナロク到来時までつないでおく鎖。 ■蠱毒 《Kodoku》  出身地:中国  呪殺術。穴の中に、蜘蛛、蛇、蜥蜴、猫など毒を持つ生き物や霊力が強い生き物を1匹ずつ入れておく。穴の中の生き物の喰い合いの結  果、最期に生き残った1匹を使って行う呪法。かなりの効果のある強力な呪術である。  もともと「蠱」という字は人に害をなす虫のことで、そこからそれを利用した呪術のことを指すようになった。 ■ソーマ 《Soma》  出身地:インド  インドのヴェーダ神話に登場する神。ヴェーダ祭式における神酒の名であり、またその原料となる植物の名であり、さらにその神酒を神  格化した神名である。  原料となる植物の絞り汁から精製される飲み物で、酒というよりは麻薬に近いものらしい。人間に栄養と活力を与え、寿命を延ばし、霊  感をもたらす。インドラが愛飲していた。  3)レイアの追加記事♪ ■アミュレット  持ち主を邪悪な力から守るものタリスマンと対比される。タリスマンはそこからエネルギーを取り出す物であるが、アミュレットは、持  ち主の周りの邪悪なエネルギーから、持ち主を切り離すものである。 ■カドゥケウスの杖  様々な力の象徴。知恵と知識、あるいは精神的エネルギーの流れを象  徴する2匹の蛇もしくはバジリスクが巻きついている。元はヘルメスの持ち物であった(絵画のなかのヘルメスはしばしば、羽根付きの  サンダルとカドゥケウスの杖を身に付けた姿で描かれる)が、医神アスクレピオスの手にわたったのちは、医療関係の象徴としてよく用  いられるようになる。 ■クラウ・ソナス  ケルトの神話。ダーナ神族の4つの秘宝の一つ。神王ヌァザ・アガートラムが所有する不敗の剣。ひとたび鞘から抜かれると、どんな敵  でもそれから逃れることはできなかったといわれる。 ■賢者の石  錬金術師が作りだそうとしていた物。その作業は「大いなる秘法」と呼ばれた。賢者の石さえあれば、金は簡単に製造できるという。赤  い粉末のような物体だとの説や、赤く透明な液化できる石だとの説がある。病を治す効果もあった。 ■サルンガ  ヴィシュヌが持つ光の弓。ラーマの姿をとったときにラーヴァナを この弓で倒した。この弓につがえる矢は翼を持ちその先は 太陽の光  と炎から出来ている。 ■デュランダル  ローランが直接天使にこの剣を賜り、それを国王になったばかりのシャルルマーニュに捧げた。 シャルルマーニュはこの剣の価値を知り、再びローランに与え、「今後も、この剣で自分(シャルルマーニュを守り、戦って欲しい」と言った。  デュランダルという名は、シャルルマーニュがつけたものである。  別の由来は、この剣は妖精が鍛えたもので、怪力の巨人ユトムンダスが持っていた。  ローランはこの巨人と戦い、剣を手に入れ、国王シャルルマーニュに捧げた。 シャルルマーニュはこの功績を称え、褒美として与えた。 ■七支刀  七枝刀。しちしとう。ななつさやのつるぎ。ろくさのほこ。  奈良県天理市の石上(いそのかみ)神宮に古来より神宝として伝えられた鉄剣。  全長74.9cm。  左右交互に各3個の分枝をもつ特異な形状は、《日本書紀》神功紀52年条の〈七枝刀(ななつさやのたち)〉の名と合致する。  刀身の表裏両面に金象嵌された61文字の銘文は、4世紀後半の東アジアの国際関係を示す金石文史料となっている。  銘文は判読が困難な部分が多く、多くの案が出されているが、表銘は〈泰和四年五月十六日の純陽日中の時に、百練の銕(鉄)の七支(枝)  刀を造る。百兵を辟除し、侯王の供用とするのに宜しい。某(あるいは工房)これを作る〉の意と考えられる。  裏銘文は〈かつてなかったこのような刀(七支刀)を、百済王の世子である奇生が聖音の故に、倭王の旨のために造った。後世に伝示せよ〉  の意と考えられる。  剣の形状をしてはいるが、突き出した枝は戦闘には使えず、柄を固定するための目釘穴もない。  戦場で使うためではなく、儀礼のために作られた珍しい形の剣である。 ■フィランギ  17世紀、ムガール帝国が栄えていたインドにて、帝国の崩壊を早めたとされるマラータ族が用いた刀剣。  全長110-150cm。重さ1.6-2.0kg。  名前の由来はフランクFrankを語源とする、フェリンギFeringi(外来)とされる。  まっすぐな剣身と、鍔と柄頭からなる形状が、西洋で用いられていた、剣に似ていたからであるという ■フルンティング  英雄ベーオウルフの剣。  怪物グレンデル討伐の際(正確には、その母を倒す際に)、フロスガー王の道化から借りうけた名剣。  しかし、怪物には通じず、戦い半ばで曲がってしまったという。  ベーオウルフの怪力と、敵の強さを強調するために登場した剣であったのかも知れない。 ■レーヴァティン 「古エッダ」の「スヴィプダーグのバラード」(「グロアの呪文」と「フィヨルスヴィドのバラード」から成る)に登場する巨人スルトの  持つ杖。「傷をつける魔の杖」と訳されている。  スヴィプダーグは、義母に呪いをかけられていた。  それは、巨人族の娘メングラッドを探し出し、妻にしなくてはならないというもので、そのために、世界中をさまよう運命であった。  ニフルヘイムでは死んだ巫女の母グロアを呼び出し、数々の助言と守りのまじないを受ける。  彼は、ヨツンヘイムの砦、魔法の炎に揺らめいている「リュル」についた。  門番である、フィヨルスヴィド(オーディン?)との問答となる。  砦に入るには、番犬(名は、オーディンの狼ゲリとフレキと同名)の気をそらす肉が必要である。  その肉は、ユグドラシルの上に住む黄金の雄鶏ヴィドフニルでなくてはならない。  ヴィドフニルを倒せるのは、スルトの持つレヴァティンだけ。  レヴァティンは、スルトの妻シンモラが守っている。  シンモラからレヴァティンを譲ってもらうには、ヴィドフニルの黄金の尾羽を贈るしかない。 ■レヴァンテイン [Laevatain]   害なす魔の杖という意味。ロキがニヴルヘイムの門の前で作った…もしくは、ロキの子? 炎の国ムスペルヘイム[Muspelheim]に住む  炎の巨人スルト[Surt]の持つ太陽より明るい炎の魔剣。その剣はフレイを切り裂いた。そして、世界を焼き尽くす。  VP:魔竜ブラッドヴェインの腹の中にある剣らしい。 ■カドゥケウス  メルクリウスゆかりの湾曲した杖。  くねっているのは、2匹の蛇が棹に巻き付いている様を表すため。  後世、公式の使者の象徴、また神聖の印として、伝令使や大使がもちいるものとなった。  ウェルギリウスの「アエネーイス」によれば、この杖は、ヘルメスにもらったリラの返礼として、アポロンがおくったもので、ローマ神話  では、ヘルメスに該当するメルクリウスのシンボルとなっている。  形態は、当初はオリーブの枝のようなものだったが、のちには2匹の蛇がまきつき、スピードの象徴として2つの翼がついたものになった。  ギリシア神話の医術の神アスクレピオスがもつ、1匹の蛇がまきついている杖もカドゥケウスとよばれていた。これは医療関係者のシンボル  となり、たとえば米国の陸軍・海軍の医療部門の紋章にもなっている。 ■クリーバー  英語で、「肉切包丁」。  RPGでは、敵が振りかざす、巨大な武器になっている ■カラドボルグ  フェルグス・マグローイの持つ魔剣。  ティル・ナ・ノグ(神の国)の妖精によって鍛えられた。  アーサー王のエクスカリバーの語源になっている。  その形状についての記述は残されていないが、当時の戦士の持つ剣と同じく、両刃の片手剣であったと思われる。  彼の父ローイはウルスター(アルスター)の王であったが、兄弟によって殺され、フェルグスはウルスターを追放されてしまった。  そして、ウルスターと敵対する女王メイヴの支配する王国コノートに仕えることになる。  その後、聖なる雌牛をめぐる争い(クーリーの牛争い)では、反ウルスターの司令官として出陣した。  しかし、彼自身は故郷であるウルスターの騎士たちと戦うことは望んでいなかった。  幼い頃のことを知っているクーフーリンに対しても、同様である。  そこで、彼はクーフーリンがたった一人で戦っている(この時、ウルスター側の騎士には呪いがかけられており、戦闘にでられなかった)  ところに、カラドボルグを持たずに赴き、潔く殺されようとした。  しかし、クーフーリンも、丸腰の相手を倒す人間ではない。彼を立てて、今日のところは引き下がると言う。  フェルグスは、その日は勝利を宣言して自陣に帰った。  しかし、翌日からは戦場に出ないことを決意する。  以降、クーフーリンを倒せる戦士がいないために、戦闘は膠着状態となる。  痺れを切らした女王メイヴは、フェルグスを臆病者とののしった。  こうなると、誇りを大切にする騎士は、戦いに赴かないわけにはいかない。部隊を率いて、戦場に向かった。  だが、彼はクーフーリンの姿を見ると、その場から逃げてしまう。さらに、クーフーリンを攻撃しようとした魔法使いを妨害し、助けてし  まう。  このため、女王メイヴ側は、多大な被害を受けた。  これにより、フェルグスは、部下を見殺しにした卑怯者、裏切り者という汚名を被ってしまう。  この後、彼と、彼の剣カラドボルグの名がウルスターの神話に現れることはない。 ■イージス  エイジスとも呼ばれる。  女神アテナの持つ、山羊の皮の盾。  神託を告げる蛇や、見た者を石化してしまうメデューサの首が飾られている。 ■ウイングド・スピアー  ウィングド・スピアーは、中世暗黒時代に用いられた長槍の一種で、穂先に特徴がある。それはソケット状の差込み口に設けられた羽根のよう  に突き出した短い突起で、それが“羽根”(ウィング)のようであるためにこの名がついた。  今日ではランスの一種として見なされることが多いが、必ずしも騎兵が用いたわけではなく、本来は投擲(とうてき)した際に深く刺さらない  ように工夫したものだった。しかし、ノルマン人が侵入してくる8世紀以後は、ほぼ騎兵用の槍として用いられた。騎乗して突撃すると、相手に  突き刺す威力が増したために、十分な致命傷を負わすだけの穂先を残しウィングはさらに大きくなった。 ■コルヌスピア  コルヌコピアという語は、ラテン語の、「角」を意味する“コルヌス”と、「豊かさ」を意味する“コピア”からきている。これは、「豊  穣の角」という名でも呼ばれている。そもそもコルヌコピアは、最高神ゼウスの乳母でアマルテイア(彼女は牧神パンと何らかの縁続きで  あると思われる)にたいそう感謝し、天空に輝く星に変えて山羊座に住まわせた。このときゼウスは、彼女の片方の角を切りとってニンフ  たちへの贈り物にした。ゼウスはニンフたちの誘惑に明け暮れていたが、コルヌコピアは、かたくなな彼女たちをなんとか懐柔するための  手立てだったようである。ゼウスはニンフたちに、食べ物や飲み物が欲しいときには、この角に頼めば望みのままだと言って、コルヌコピ  アを与えた。なるほどこの角に関しては(ゼウスの約束は当てにならないことも多かったが)、彼の言ったことに間違いはなかった。ニン  フたちが、コルヌコピアに果物や穀物、蜂蜜、ブドウ酒などの食べ物や飲み物を頼むと、いくらでも好きなだけ出してくれた。おかげで彼  女たちは、ぜいたくなごちそうを心行くまで満喫することができた