・『地下街の雨』(宮部みゆき/集英社文庫)
7編から成る短編集。 宮部さんの短編ていうのは、以下のような感じに大きくわけられると思います。 最後にほっと、ほろりとさせてくれるもの。 ラストがすがすがしいもの。 ホラー的な、「怖い」色合いの濃いもの。 この本は3番目のタイプの話が多いです。 以前にも書きましたが、宮部さんの「怖い」話は、文章そのものより行間から 感じられるものがさむざむとしてて、ほんとに怖い。 「混線」という作品は、描写もかなり怖いです。 ・『本当は恐ろしいグリム童話』(桐生操/KKベストセラーズ) ・『本当は恐ろしいグリム童話・』(桐生操/KKベストセラーズ) 最近、童話や民話の残酷性を知らしめる、みたいなコンセプトの本がたくさん ありますね。この本はそういったものの中でも結構早めに出てきたような気が。 グリム童話関連の本ではきっと一番売れているでしょう。 だいたいどこの本屋でもベスト10に入っていて、図書館でも予約がいっぱい、 いらなかったら寄付してねと掲示されていることがよくありますから。 桐生さんの歴史関連本は結構昔から好きです。 プラス、このシリーズはイラストが私好みなので、ハードカバーで高いにも関 わらず(爆)買ってしまいました。 …………うーん、でも、1冊目はともかく、2冊目になると飽きちゃいますね。 面白味がマンネリ化しちゃってるというか。 桐生さんて、性的な描写をわりとよく取り入れてるんですよね。いくら元々の 童話にそういう側面があったとは言え、あんまりそういうのが多いと、読んでる 側としてはちょっと辟易しちゃいます。
・『姑獲鳥の夏』(京極夏彦/講談社文庫)
ずいぶんと人気の高い作家さんですが、私はこれが文庫で出るまで全く読んだ ことありませんでした。新書の分厚さにひいちゃったというか……別に分厚い本 が苦手なわけではありませんが、なんとなく……読むタイミングを逃したという か。 で、まぁ、文庫になったついでに読んでみるかと買ってみました。 ……なんか、特殊な作品世界ですね (^_^; あえて分類するならホラー系なのでしょうか。でも一概に言えない感じが。 新鮮な感じがして面白いと思いましたが…………これしか読んでないのにこう いうこと言うと怒られるかも知れませんが、一冊目だから面白いかな、という気 も、ちょっと…………事件の真相の一部も、「ここまで書き込んでおいて、そう いうことってあり?」と、なんかいただけない思いがしましたし。うーん。
・『クロスファイア』(上)(下)(宮部みゆき/光文社カッパノベルス)
これも人気が高いですね。図書館でも何十人待ち……(ひえ〜) 中編集『鳩笛草』(光文社カッパノベルス)収載の『燔祭』を先に読んでおく と、より深く味わえる作品。 『燔祭』は好きな作品だったので、この作品が出た時、ぜひすぐ読みたい! と2冊いっぺんに買っちゃいました。 宮部さんは特殊能力者の出てくる話も時々書かれますが、これはその集大成と いう感じがします。すごい作品、そして「悲しい」作品です。
・『朝霧』(北村薫/東京創元社)
北村さんの代表作「円紫さんシリーズ」の第5作、3編から成る中編集。 この作品も面白いのですが、私個人は初期の作品の方が、いろいろと広がりや 主人公の感性が感じられて、好きかな。 さすがに5作目まで来ると、いろんな意味で「落ち着いちゃった」感じがしま す。 ・『西の善き魔女4 世界のかなたの森』(荻原規子/C・NOVELSファンタジア) ・『西の善き魔女5 闇の左手』(荻原規子/C・NOVELSファンタジア) ファンタジーが好きな人はぜひ読んで、と言いたい作品。 5冊で完結です。 (ちなみに『西の善き魔女1 セラフィールドの少女』 『西の善き魔女2 秘密の花園』 『西の善き魔女3 薔薇の名前』……で『4』に続きます) 当初は日本古代が舞台のファンタジーを書かれていた作家さんなので、こうい う「純ファンタジー」的な作品を書かれるとは、初めはちょっと意外でした。 でも読んでみてそんな気持ちもふっとびました。 人それぞれ好みはあるでしょうけど、私はこの作品大好きです。素敵です。 話がどんどん大きくなっていくので、予定の5冊でおさまるのか、読者として もとっても気がかりでしたが、ちゃんと予定通りいきました(ほっ)。 ラストがああなるとは、かなり意外でしたが……うーん、でもおさまるべきと ころにおさまった、とも言えるかな。 荻原さんの日本古代ファンタジーもおすすめの作品です。 『空色勾玉』『白鳥異伝』『薄紅天女』(徳間書店)の三部作です。 児童文学の分類ですが、読んでみたらそんなこと忘れちゃいます。 ・『ウォッチャーズ』(上)(下) (ディーン・R・クーンツ/松本剛史訳/文春文庫) ある劇作家さんがあるところで推薦されていたので、大学の古本市で見つけた のを機に買いました。 おもしろいです! 見つけてよかった (^_^) SF好きな人、犬の好きな人、最近面白い本に出会ってない人……とにかく、 本が嫌いじゃなかったら、ぜひ読んでください。
・『蒲生邸事件』(宮部みゆき/光文社カッパノベルス)
宮部さんが直木賞を受賞されたのを機に(そういう人多そうだな……)買って みました。この作品も直木賞の候補になったことがあるようです。 二・二六事件が背景にあるということで、てっきり事件の渦中を書いていると 思って読んでましたが、違いました。背景にはあるけれど、登場人物、特に主人 公はほとんど事件そのものとは関わりを持ちません。 関わる事件そのものも、小さくはないけれど多いわけではない。 事件よりも、人々を描くことに重点が置かれている、そういう印象を受ける話 ですね。 ラスト、私はちょっと泣けました。
・『理由』(宮部みゆき/朝日新聞社)
買った理由は上と同じ+大学卒業記念に、と大学の書籍部で購入。 事件を追う経緯も細かいのですが、登場人物の心理的な面の描写に関しても、 とても丁寧で緻密です。宮部さんはそういうのがすごく上手い作家さんだなぁ、 といつも思わされます。 知り合いが言っていたように、たしかに「暗い」話ではありますが (^^; (99.6.28)
・『日日平安』(山本周五郎/新潮文庫)
……(これは短編集なのですが)じつは、この中に入っている『失蝶記』と いう作品が、私の大好きな劇団のあるお芝居の元ネタになっているのです。 それまで山本周五郎さんの本なんて手に取ったこともないくせに、元ネタを 読みたいばかりに唐突に買ってしまいました(爆)(ちなみに買ったのはその お芝居を観た次の日でした) …………なんか得した気分です (^^) 元ネタの『失蝶記』はお芝居とはまた違うふうに泣けますし、表題作である 『日日平安』もおもしろいですし、その他の作品も各々読みごたえがあって。 こんな機会でもなければ読まなかったでしょうからね〜。 だから得した感じです(笑) これを書きながら、そういえばどの作品にも感嘆符や疑問符が使われていな いんだな〜ということに思い当たりました。 そのせいでしょうか、文章が淡々と見えながらも、見えないところにすごい パワーを秘めているような……そんな感じがするのは。 いろんなことを、「自分で想像しながら」読めるなっていう気もします。
・『震える岩 霊験お初捕物控』(宮部みゆき/講談社文庫)
あるお芝居の当日券に並ぶ前に、暇つぶしのためにと買った本です (^^;;; ……いや、もともと宮部さんの作品は好きですし、この本もいつかは買おう と思ってましたがなかなかタイミングが合わなくて。で、その日はずいぶん早 く現地についちゃったので、どうしようと思って、「あ」と思い出して、この 本を買ったんです。 このお話に出てくる主要登場人物は、『かまいたち』(新潮文庫)収載の作 品『迷い鳩』『騒ぐ刀』にも出てきます。作品中の時間としてはそちらの方が 前になりますので、先にその2作を読んだ方が話が分かりやすいでしょう。 時代物であり且つ特殊能力者が出てくる、と宮部さんのお得意なネタが2つ 一緒になっています。ミステリーでもある作品で、こういったネタを同時に使 うことは簡単なことではないでしょうが、さすが宮部さん、上手く融合させて おいでです。 ……難を言うならば、タイトルの「震える岩」が作品中でそれほど活かされ ていないことでしょうか……他の要素が占めている比率が大きい感じがするの で、そんな印象を受けてしまうのですが。 (99.7.31)