<00.1〜3に観た舞台の記録>

  ・花組芝居『泉鏡花の天守物語』(2000.1)
  ・ランニングシアターダッシュ『風のピンチヒッター〜特訓中』(2000.2)
  ・『ララバイまたは百年の子守唄―「ハッシャバイ」より』(2000.2)
  ・演劇集団キャラメルボックス『MIRAGE〜ミラージュ〜』(東京公演)(2000.3)
  ・惑星ピスタチオ最終公演『4人のN氏』(2000.3)
 
 

 ・花組芝居『泉鏡花の天守物語』

    新神戸オリエンタル劇場で、1/21〜23の公演。
    1/22の夜の回を観てきました。
    G列(前から11列目)24番(右サイドブロック、最もセンター寄り)で観劇。
 
    当初は、観に行ってみたいけど予算がなぁ……状態だったのですが、直前に
   あるツテで招待券の話が回ってきたので、便乗させて頂くことにしまして。
 
    期せずして1月中に初観劇。
    キャラメル関係以外でオリエンタルに来るのはこれが3回目。……やっぱり、
   緞帳を下ろしているここの舞台には慣れませんねー。舞台セットが見えるのが
   当たり前の気分が身に付いてるので(よく分からない方への注:キャラメルは
   どこの劇場でも緞帳(下ろすと舞台が見えなくなる幕)を下ろしていません。
   その他、ピスタチオもそうですね)
 
    直前に私のところまで招待券が回ってくるくらいだから、もしかしてあまり
   客入りが良くないのかな……と思ったら、やっぱりもうひとつな感じでした。
   1階席でも空席がありましたから、2階席・3階席はだいぶスカスカだったの
   ではないでしょうか……見えないんで正確には分かりませんでしたが。
 
    さて、花組は初見です。
    (構成・演出の加納さんは別の舞台で観たことがありますけど)
    男ばかりの和風の舞台、といった認識だけ=まぁほとんど先入観無しで観た
   のですが………………うーん。
 
    どう、なんでしょうね。
    …………少なくとも、私の好みじゃないかも、と感じました。
    『天守物語』は原作そのものは読んでいないのですが、内容は多少他の本で
   見て知ってます。
    あるいは、その予備知識がいけなかったと言えるかも知れません。
    それでも、なんだか、「はしゃぎすぎ」な感じがしてしまいました。
 
    この物語は、本来悲恋ものであると思うのですけれど。
    そういうふうに、見えなかったんですよね……
    加納さん演じる、物の怪の姫君は、確かに綺麗でしたけれど。
    相手役の武士に、もうひとつ存在感が感じられなくて。姫君や、他の脇役に
   負けている気がしました。
    加えて、二人の出会いより前の部分が、どうも「ふざけすぎ」な雰囲気で。
    これは出会いのシーン以降にも言えるんですけど、「ショー的要素」の部分
   が多すぎたような感じなんですね……踊りとか、パフォーマンスとか。だから
   どうも、ストーリーそのものに重みが感じられない。
    『ライオンキング』の時などにも書いたと思うのですけど、私はストーリー
   の作りが「しっかり」していない・見えてこない芝居は、苦手なんですね。
    もちろんそういうふうには思わない人も、ショー的な要素が強い舞台が好き
   な人もいますし、「ショー」だと割り切ってしまえばそれなりに楽しめるのか
   も知れませんけれど……
    個人的には、もっと話自体を「見せて」ほしかったです。
                                (00.3.4)
 
 
 

 ・ランニングシアターダッシュ『風のピンチヒッター〜特訓中』

    大阪・扇町ミュージアムスクエアで、2/11〜27の公演。
    2/16の夜の回を観てきました。
    A列(指定席最前列だが、実質4列目)12番(若干左サイド寄り)で観劇。
    ……のはずでしたが、開演直前になっても右横の2席が空いていたために、
   席を詰めることになり、さらにセンター近くの席(A列10番)になりました。
 
    扇町でダッシュを観るのは初めて。
    今までは、伊丹アイホールや近鉄アート館など、ある程度舞台との距離が
   取れる席・劇場で観てきたんですけど、ここは、舞台と客席の距離がかなり
   近いです。アイホールでも、指定席より前の桟敷席だと舞台がだいぶ目の前
   って感じなんですけど、扇町だと文字通りそうなります。舞台が小さいから、
   役者さんがかなり舞台の際まで来ますしねー。私は4列目でしたけど、役者
   さんの細かい表情も汗までもはっきり見えるし、舞台の熱気も直接伝わって
   くる距離でした。
 
    やる気も実力もナシの府立三高野球部。ひとりの転校生の入部をきっかけ
   に、少しずつ変わっていく。夏の甲子園予選、相手は強豪の星上学園。とに
   かく1点でも取ろう! 彼らの必死の攻防は実を結ぶかに見えたが、残念な
   がら負けてしまう。……それから16年。家業の酒屋を継いだかつての三高野
   球部主将・近藤イサムは、星上学園理事長の使い・岩倉に、野球部の新監督
   を依頼される。迷いながらも引き受けたが、星上野球部は甲子園出場から遠
   ざかって久しい。そのくせ部員たちのプライドは高く、弱小校出身の近藤に
   反発して練習をボイコットする始末。そんな中、入部してきた一年生・岩崎
   ヒロミ。小柄な体からは想像できない豪速球に、肩を壊したエースの代わり
   を見つけたと近藤や部員たちは大喜び。……ところがヒロミはなんと女の子
   だった! 女と野球はできないと再び反発する部員たち、即刻退部させろと
   迫る理事長。ある事情から娘の野球に反対するヒロミの母親も介入してきて
   大騒動。星上野球部の行く末は果たして…………?
 
    16年前の部分は、1997年に上演された『風のピンチヒッター』の内容です。
    今回、本編の前に前作が、ダイジェストの形で上演されました。
    30分足らず、いつもよりもスピード感が激しかったですが、短いながらも
   「見せる」ところは「見せて」くれまして、これだけでもひとつの「感動」
   が味わえました。……私、群唱にはわりと無条件で弱かったりします(笑)
 
    で、本編。
    ダイジェストがあったためか、いつもよりも短くなっていて(1時間40分
   弱?)こちらも結構展開が速く感じられました。なので、1シーン1シーン
   はそれなりに時間があったにも関わらず、どことは言えないけど「なんか、
   足りない?」と少ーし感じてしまったような。いくぶん話が雑……な感じも
   してしまったでしょうか。
    もう少し、星上ナインの一人一人を掘り下げる余裕があったら良かった?
 
    でも、おもしろかったです。
    ヒロミを演じてた岸本多恵子さん、可愛かったですねー。
    男だとか女だとかは関係ない、ひとりの「人間」としての「可愛らしさ」
   「一途さ」がありました。野球が好きで好きでたまらない女の子。
    彼女の双子の兄は、ある意味野球のせいで事故に遭い、夢と命を断たれた。
   ……それが母親が、ヒロミの野球に反対する理由でもあるわけですけど。
    でも彼女は、そんな兄のことも、何も気負ってないんですよね。
    きっとヒロミにとっては、「自分が代わりに夢を叶える」対象ではなく、
   「一緒に夢を叶える」相手なんだろうな、という感じがしました。
    彼女の気持ちは、いつも兄と一緒にいるんですね。
 
    いつも意表をついてくださる、佐久間さんと岡部さん。
    今回も、期待を裏切らない飛ばしぶりといいますか……壊れぶりというか。
    佐久間さんはダイジェストでは野球部の女監督、本編では岩崎家のメイド。
    岡部さんは野球部のナインの一人と、ヒロミの母親。
    ダイジェストでのお二人は、まだ今まで観てきた作品の役に繋がるものが
   大きかったですけど、本編の方は…………いや〜もう(笑)
    佐久間さんは女子高生の格好で顔グロまでしちゃうし。
    岡部さんはドレスを着てるし、言葉も一応「奥様」だし。
    なんか、めったに観られないものを観たかも、って感じですね (^o^;
    でもそういうのもできちゃうのは、やっぱり「自分の持ち味」がしっかり
   してるからなんでしょうね。
 
    今回もゲスト出演の方がいらっしゃいました。
    ダッシュには以前も出ている首藤健祐さんと、名古屋のシアターガッツの
   藤元英樹さん。お二人は、ダッシュの何名かと、「Cucina Milano Voi.1」
   でも一緒にやっていらっしゃいましたね。
    まだそんなに観たわけではありませんけど、このお二人もすごーく個性的
   な役者さんで、かなりお気に入りです。首藤さんは「素で、ギャグを言う」
   ようなところが面白すぎますし(笑)、藤元さんは思いっきりはじけてて、
   気持ちいいです。そういえば、この作品では藤元さん、名古屋弁ばりばりで
   したねー。ダッシュの皆さんは関西弁だし、みんな(?)自分の地元の言葉
   での舞台……なんか、おもしろい。
 
    総合的に言うと、前回の『エイト!』の方が私は好きですけど。
    でも舞台の近さもあって、作品の雰囲気を間近に感じました。
    あの劇場の大きさでは支えきれないほどの勢いと、わくわくする気持ちと、
       いつも変わらない爽快感も、めいっぱい。
                                (00.3.4)
 
 
 

 ・『ララバイ または 百年の子守歌―「ハッシャバイ」より』

    大阪上本町・近鉄劇場で2/23〜28の公演。
    2/23(初日)の夜に行ってきました。
    Y列(25列目)14番(センターブロック左サイドより)での観劇。
 
    東京公演での評判があんまり良くなかったので、ちょっと不安でした。
    でも先入観入れて観たらもったいないので、忘れるように努めながら
   行きました。
 
    公演初日が間近に迫った劇団と、公演でやる劇が劇中劇として絡む。
    主演俳優が初日を前にして女優と失踪。助っ人として、女座長が呼んだ
   「流れの俳優」がやって来る。劇団員の反発に遭いつつも稽古は進むが。
    奇妙な夢を見る女が、夢の女性を助けたいと探偵に依頼する、劇中劇。
   探偵はとにかく夢の場所を探そうとするが、いつしか彼も、奇妙な世界に
   巻き込まれ……
 
    この劇中劇に使われる『ハッシャバイ』は、台本をちょっとだけ読んだ
   ことがある以外は全くの未見なのですが。
    いや、未見だからこそかも知れません。……こちらの物語(劇中劇)の
   方が、本編であるはずの劇団の話(以下、「本編」と書きます)よりも、
   印象が強かったです。逆に言えば、劇団の話がどうもインパクトに欠ける
   と言いますか。
 
    どちらの話が本編なのか、もしかしたら区別はないのかも。
    でもベースになる話は普通ひとつですよね。
    「本編」がベースであるなら、やっぱり本編たるべき「重み」が足りな
   かったんじゃないかな、と思いますし、劇中劇がベースならば……こんな
   形にわざわざ作り変えなくても、ストレートに『ハッシャバイ』の再演で
   良かったんじゃないか、と思うのです。少なくとも私は。
 
    恋人だった主演俳優が他の女と逃げてしまった、女座長の気持ちの行方
   もいまいちつかめませんし。
    他の劇団員の気持ちもいろいろ複雑に絡み合ってるのに、ひとつとして
   「これからこうなるのかな?」と思えるもの、糸口がない。……もしくは、
   分からなくてもいいやと思えるほどのものを、話に感じなかったんです。
   (前回の鴻上ネットワーク第1回公演の時は、そう思わせてくれるだけの
   ものが伝わってきたんですけど)
 
    東京公演時からだいぶ酷評も多かった、女座長役の石田ゆり子さん。
    これが初舞台だったそうですが……うーん、ちょっと存在感に欠けたか
   なぁ。まぁ筧さんとか、WAHAHA本舗の佐藤正宏さん(この時が初見でした
   が、いやはやすごい役者さんですね(笑))の横では、霞んでしまっても
   仕方ないと言えばそうかも。……でもやっぱり、一応「座長」なんだから、
   それ相応の「威厳」というか、もっとしっかりした雰囲気がほしかった。
   劇中劇の時はまあまあでしたけど……舞台慣れしてないせいなのか、姿勢
   が前かがみになりがちなのが気になりました。
 
    約一年ぶりに見る筧さん。……登場の時から、圧倒的すぎます(笑)
    固定ファンの多い方ですからねー。この日もかなりそういったお客さん
   が多かったのか、客席から出てきたとたんに拍手喝采。そういう派手さが
   妙に似合っちゃう人ではありますね。テレビなどのフリートークでは信じ
   られないくらい大人しい時もあるのに(笑)
 
    前述の佐藤正宏さん。面白いというかなんというか……
    ある種の爆弾みたいなところがありますね(笑)
    でも爆発するだけじゃなくて、普通の演技もOKの役者さん。
    両方がちゃんとできる人って、案外多くはないと最近思うのですが。
 
    他は……舞台では(私は)初めて観る佐藤アツヒロさんと、前回公演も
   出ていらしたサードステージの若手さんが3名ですね。
    佐藤アツヒロさんは、可もなく不可もなく?な感じだったでしょうか。
    わりと難役であったことを考えると、結構健闘した方なのかな。
    若手の方々(旗島さん・高橋さん・生方さん)は、それぞれに見応えを
   感じられる演技を見せてくださいました。もっとこれから成長していくん
   でしょうね。楽しみです。
 
    『ハッシャバイ』はきちんとした形で全部観てみたい作品ですね〜。
    ちなみに「ハッシャバイ」とは、「眠れそうにない時に言う、おやすみ
   の挨拶」だそうです(劇中劇より)
                              (00.3.20)
 

 ・演劇集団キャラメルボックス『MIRAGE〜ミラージュ〜』(東京公演)

            →こちらへどうぞ。*ネタばれあります

 

 ・惑星ピスタチオ最終公演『4人のN氏』

    3/24(大阪初日)&3/29(千秋楽)のソワレの2ステージ。
    21列10番(左サイド)&24列41番(センターブロック右端)席で観劇。
 
    海外の学会へ行く途中、見たこともない草原に迷いこんだ学生。
    そこで彼は、聞いたこともない名の「友人」の葬式に参列させられ、
   魔物に襲われ、魔術の生け贄にされかかり、大陸の大統領に指名されて
   しまう。ここは自分の夢の中なのか、それとも…………?
 
    うーーーん。
    難しい、というか。一言では言えない、というか。
    まさに夢の中、しかもとことん奇妙。
    分かりやすい、とは言い難いですね。ただただ不可解なことばかりが
   続いているように見えてしまうし。
    実際、分かってもらうことは求めていないかも知れない。
    表したいものを書いたらこうなった、という感じで。
 
    はっきり言って、眠くなる人は多かったでしょうね。私も眠くならな
   かったわけではないですし (^^ゞ
    いつのも「パワフルな」ピスタチオが好きな人ほど、今回の作品には
   違和感やつまらなさを感じてしまったりしたかも。そういう好みにこだ
   わらない人でも、やっぱりおもしろいとは言えなかったし眠かったかも。
 
    逆に言えば、最後までお客さんに「媚を売らない」のは、シャトナー
   さんらしいのかも。自分の書きたいものを書き、作りたいものを作る。
    一般的に考えれば、最後だから「代表的な作品」や「集大成」みたい
   なものをやりたいと思いますよね、きっと。でもピスタチオはそういう
   ものを選ばなかった。文字どおり「大冒険」な作品を作り、舞台にした。
    ……最後にこういう作品を作ったというのも、ある意味すごいですね。
 
    なんていうんでしょう、普段はもっと「視覚的」に見せていくものが
   多いんじゃないでしょうか。セットはシンプルだし、小道具も基本的に
   は使わないけど、動いたり、マイムで表すことによって、そこに何かが
   「ある」ことを観ている側に「見せる」部分がたくさんあるんですよね。
    もちろんこの作品でもそういう部分はあるんですけど……いつもほど
   ではないというか。
    「見える」ものに対する想像力より、「見えない」ものに対する想像
   力の方が問われている感じがします。言い換えてみれば、内面的なもの
   がかなりの割合で扱われているように思いました。それは他の人の感想
   でも書かれていたりするのですが。
 
    登場人物ひとりひとりが、人の心の一部なのかもしれない。
    冒険心も、愛も、狂気も、恐怖も、逃避も。
    混乱も、希望も、誰の心の中にも存在するもの。
    人はすべての心の要素をコントロールしながら生きる。
    でも時として、どこかが突出することもある。
    心の一部分が大きくなりすぎたかのような登場人物たち。
 
    もしかしたらいろいろ含まれていたかも知れないことに、私はなにも
   気づいていないかも知れない。
    でも。
    「芝居」は終わっても「物語」は終わっていない。
    「劇団」は終わっても「ひとりひとり」は終わっていない。
    物語もひとりひとりの人生も、これからまた、何かが始まっていくん
   だろうと思う。
                              (00.4.3)
 

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