◆ No.232: 予備選抜試験当日 (2007.5.10) ◆
ああ、とうとうこの日が来てしまった。
わかってはいるんだけど、いつかこうやって当日が来ちゃうんだよね。
自分がいつか死ぬ日とかも、ある日、こんな感じで当日を迎えちゃうんだろうかね・・・などとつまらないことを考えながら、音楽院に向かう。
サル・コルトーの控え室は、試験とかコンクールとかの控え室の、あの、なんともいえない、独特のいや~な感じ。
この感じは、普通のコンサートの本番前の緊張感とはぜんぜん違う種類のものだ。
こういうところで練習しても、どんどん体が固くなっていくだけなので、ちょっとホールで音出ししてみたり、写真を撮ったり、部屋の近辺をうろうろしたりして、時間をつぶす。
サル・コルトーで吹いた感じは、とても美しい響きを持っていながら、とても細かいニュアンスまですべて客席に届く感じ。
これは、つまり、いいところも、悪いところも、全部客席に聞こえてしまう、ある意味ちょっと怖いホールだ。
さて、30分ほど遅れて審査員がホールに入っていって、順番に中に呼ばれて中に入って演奏する。吹いている子の演奏を聴いてると、みんな、ふだんのレッスンのときと違って、すごい気迫で、うまい!
いやー、フランス人の子が強いのは分かるけど、他の子たちも、女の子ひとりで海を渡ってここに来ちゃうような子たちだから、そりゃ、やっぱり当然強いよね。
自分の番が、突然回ってきて、先生(ぼくの先生)が呼びに来たので、行こうとすると、なんと、ぼくの楽譜がない。
きっと忘れてきたんだと思って、「楽譜忘れました」と言って、もう試験が終わった子に「貸して!」と言って楽譜を借りてホールに出て行くと、別の子が「あったよ!」と言って顔を出してくれたので、「ああ、ありがとう!」と言って、小走りで取りに行って・・・、という恥ずかしい光景を、審査員先生の前で披露してしまう。
肝心の演奏の方は、2~3箇所、技術的に一瞬あやうい状態になったところがあった。
その瞬間、『このまま崩れてしまって、このたった5分間で台無しにしてしまったら、フランス行きを応援してくれた家族やいろんな人たちの努力まで無駄にしてしまう』などという、ぜんぜん音楽的でないことを(0.1秒ぐらいの間に)考えて体勢を立て直して、なんとか最後吹いた・・・みたいな感じ。
特に大きなミスはしなかったものの、少なくとも完璧な演奏ではない、という、微妙な感じだ。
帰りに、いっしょに試験を受けた子に、「結果はいつ分かるの?」と聞いたら、「たぶん土曜日だと思うけど、こんどの火曜日かもしれない。」という、なんともあいまいな感じ。
うーん、試験結果発表まで、フランス的にはそんな感じなんだねー。
家に着いたら、もうくたくた。
あ、でも、あした、室内楽のレッスンがあったな・・・
早く寝て、早く起きなきゃ。
サル・コルトーの控え室。
そう、あの、試験前の緊張感漂う、さむーい雰囲気の中、
セルフタイマーで自分の写真を撮っている変なぼくです。
そんな感じで写真撮っているぼくを、不審そうに見ている子がいたので、
「この写真、家族に送るの」と言ったら、「じゃ、私が撮ってあげる」と言っ
てくれたので、「じゃ、みんなといっしょに撮って」と頼んで撮ってもらった
写真がこれ。写ってるのは、たまたま居合わせた台湾の子と朝鮮の子。
この前メール・アドレスを交換した子に、この写真を送る約束をする。
(人の写真を勝手に載せちゃうのもあれなので、小さい写真にしました。)
試験会場のサル・コルトー。審査員の先生方が時間になっても
現れないので、みんなで勝手に出たり入ったり吹いたりしてた。
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