◆ No.197: オルセー美術館 (2007.4.5) ◆
きょう、日本から電話がかかってきてドキッとするが、ひとまず峠を越えたようで一安心。
しかし、看護する側も過労がたまりはしまいかと、いろいろと複合的に心配だ。
ちょっと一安心したところで、急に思い立ってオルセー美術館に出かける。
といっても、美術館が目的ではなくて、オルセーでやっているらしいコンサートが目的。
(美術館を見てまわるとエネルギーを消耗するので、もっと元気なとき見たい。)
いきなり行ってチケットが取れるのかどうかわからなかったけど、だめだったら軽く美術館を見て帰ろう、みたいなつもりで出かけたのだけど、行ってみたらあっさりチケットも取れて、おまけにけっこういい席に座れた。
ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番とトリオ第2番のプログラム。
ヴァイオリンはイザベル・ファウストという人だったが、この人、こいのぼりのようなすごい模様のドレスで登場してきて、『おいおい、だいじょうぶか?』と思ったが、これが弾き出した瞬間から、とんでもなく素晴らしかった。
強い集中力で虚空から最初の音をつむぎだした瞬間に、客席の意識が一点にひきつけられる。
軽くて、自然で、有機的な曲線を描くメロディー。軽い弓使いの繊細で洗練された音色なのに、ブラームスのコクのある渋さが感じられる絶妙な音色。
ピアノはAlexander Melnikovという人で、この人のピアノがまた上手くて、しかも、このヴァイオリンと本当によく合っていて、すばらしかった。
ヴァイオリンに対しては、なんとなく、キリキリ・ガリガリと弾く先入観をもっていたけど、この人は、最後までそういう音を出さなかった。
軽くてしなやか。でも、強い!
自然なメロディー。そして、新鮮な音楽。
ぼく自身、まだまだ改善していかなければいけない課題がたくさんあるのだけど、でも、いままでやってきた方向でよいのだ、と思えるところもあって、ちょっと励まされるようなところがあった。
ガリガリと、力と音量とスピードで他を圧倒するような音楽ではなく、薄っぺらい表面的な華やかさだけの音楽でもなく・・・。
きっと、もうすでに、時代は変わっているのだ、と思う。
オルセー美術館入り口。
地下の演奏会場の入り口。(これは終演後)
帰り道に振り返ってみたオルセー美術館。
セーヌ川を通る観光船のライトに照らされて、一瞬闇の中から浮かび上がる。
|