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No.157: ラジオ・フランス (2007.2.24)

きょう、急に思い立って、無料の音楽情報誌に載っていたコンサートに行ってみた。ちなみに、情報誌に載っている情報はこれだけ。

24 / ADES, DAVIS, BARRY (24日 / 3人の作曲者名)
Birmingham Contemporary Music Group (バーミンガム現代音楽団)
Dir.: Thomas Ades (指揮者名)
18h00 Maison de Radio France. (18時からラジオ・フランスで)
Entre libre. Tel. :00 00 00 00 (入場無料)

演奏団体名から察するに、現代音楽のコンサートっぽいけど、それ以上のことは、とにかく行ってみないとわからない。



「ラジオ・フランス」に到着。(またエッフェル塔のすぐ近く)
しかしこれ、なんだろう。国営のFMラジオ放送局だろうか?


マイクや機材などが無骨においてあって、なんだか、いかにも「業務用」
っぽいかんじのホールだが、でも、けっこうおもしろいデザインだなぁ・・・。
これ、公開録音ってことで無料なんだろうか??


開演してしばらくたってから気がついたのだが、これ、イギリスの演奏家たちのようだ。
(というか、「バーミンガム現代音楽団」という名前だから、あたりまえか・・・。)

演奏された曲は、以下の3曲。
Thomas Ades作曲:「Chamber Symphony」
Tansy Davies作曲:「Falling Angel」(初演ぽい。作曲者も臨席していた。)
Gerald Barry作曲:「The Triumph of Beauty and Deceit」(コンサート形式のオペラ。これも初演かな? これも作曲者が臨席していた。)

一曲目は、いきなりドラムが複雑なリズムを刻み始め、アルト・フルートが無調の旋律で加わり、コントラバスもジャズのようなピチカートで加わり、その後、変な編成の小さなオーケストラも加わって、どんどんますますカオスみたいな音楽になっていく・・・という、現代音楽な感じの音楽。

二曲目は、金管楽器が、いきなりブヨブヨブヨ~と強烈な不協和音のトレモロみたいなのを吹き出して、他の楽器もブヨブヨとトレモロもどきのものを演奏しだし・・・とにかく、最後まで、聴いたことのないような変わった響きの音がいろいろ出てきて、それぞれの音はおもしろいのだけど、最後の方になると少し飽きてくるような感じはあった。
あとで作曲者が出てきたのだが、若い女性の作曲家だった。

三曲目は、5人の男声が出てきて、コンサート形式のオペラをやった。
これも、拍が数えられないような複雑なリズムで、無調の超絶技巧的な曲だったのだけど、歌がそれをやっているのはびっくり! すごいソルフェージュ能力だ。
(指揮者を見ていると、歌い始めの場所で「3・2・1・Go!」みたいなサインをさりげなく送っている。でもこれ、そうでもしないととても歌えないような、本当に複雑な拍の曲。)
最初のうちは、そういった技巧的な部分に驚いていたのだが、そのうち『聞いたことのないような響きだけど、でもきれい!』というかんじの響きだとか、不思議な強さを持った音楽の流れにひきつけられて、1時間近く(だったと思う)の大曲を食い入るように聴いてしまったのだった。



終演後。外には、局の車が並んでいる。


ここ、けっこう大きなホールだったのだけど、お客さん、ほぼ満席だった。
いくら無料だとはいえ、現代曲のコンサートにこれだけのお客さんが集まってくるというのは、すごいことだなぁ・・・。

思いつきでとっさに出かけたコンサートだったのだけど・・・
思いがけないところで、見たこともないようなものに突然出会えたりして、ここは、ほんとうにおもしろい街だなぁ。

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No.156: 野外彫刻美術館 (2007.2.23)

サンルイ島のいちばん東に行くと、対岸にぽつぽつと彫刻作品が見えるのを先週発見したのだが、ここ、地図で見てみると「野外彫刻美術館」という名前がついているようだ。
最近少し日が長くなってきて、午後7時ごろでも少し明るいので、練習が終わってから見に行ってきた。
行ってみると、川岸が石畳の殺風景な細長い散歩道のようになっていて、そこに、ぽつぽつと彫刻が点在している。小さいものから、けっこう大きなものまである。
50年くらい前の作品が多いようで、一昔前の現代作品、といった雰囲気。
ぽつぽつと点在する作品の間に、ほつぽつとカップルが座り込んでいる。



彫刻の作者の国籍はいろいろ。対岸の左側はサンルイ島。


特に強く惹かれる作品があったわけではないけれども、
なんとなく風景として違和感がなくて、街の一部みたい。

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No155: ケ・ブランリー美術館 (2007.2.22)

早朝からのリコーダーのレッスンから帰ってから、ケ・ブランリー美術館に行ってきた。
ここも「パレ・ド・トウキョウ」と同じく、またエッフェル塔のすぐ近く。
ブランリー川岸通りにある、アジア&オセアニア、アフリカ、アメリカの文明の美術館らしい。

かなりおもしろいデザインの建物に入り、凝ったデザインの通路を抜け、展示室に到達すると、その光景に唖然とする。
これを、なんと言ったらいいんだろう・・・
アフリカの仮面やら彫刻やら楽器やらがすさまじいディスプレイ(そう、展示というよりはディスプレイ!)で並んでいる。

アフリカの仮面やら彫刻やら楽器は、ひとつひとつを近くで見れば、木彫りの素朴なものなのだが、これが計算しつくされた配置と照明のディスプレイによって、エキゾチックで呪術的な雰囲気に過度に演出されている。(というふうに、ぼくには見えた)

展示品の配置や選択も、時代考証やら文化背景やらは無視して、視覚的に最大の効果をあげることしを優先している。(というふうに、ぼくには見えた)

つまり、作品展示の方法としては、かなりご都合主義なものだ。
美術館のように、ありのままを自然に見せようという態度でもない。
博物館のように、学術的に整理して並べるとか、そういう態度でもない。
なんだか、フランス人による、エキゾチックアイテムの、セレクトショップみたいだ・・・
(「ZEN」とか「SUSHI」とか「TAKARA」だとかを思い出してしまった。)

* * *

いま、いったいあれは何だったのか考えているのだけど・・・

展示品、一点一点については、これは、いわゆる芸術家が作る「芸術作品」とは別物だと思う。少なくとも、これを作った未開の地の誰かは、「芸術作品」を作ろうなどという意図はなかっただろうし。
こういうものは、本来は、その土地のその生活習慣の中ではなんらかの意味を持っているのだろうが、異国の人間が作品として見るならば、なんとも素朴なものだ。
そういう作品を普通の展示室で普通の見せ方をしたならば、ただの稚拙な木彫り細工にしか見えないかもしれない。

そんなモノに、現代的な手法で強い呪術的な意味づけをするこの大掛かりな装置。
― この装置を作った人を仮にAさんとすると ― このような意図的な意味づけは『私はこの作品をこういうふうに感じている』というAさんの表現活動そのものであるし、それを表現するための装置はAさんの作品そのものだといえる。
さらには、展示品のエキゾチックアイテムは、Aさんが「ケ・ブランリー美術館」というひとつの巨大な作品をつくるための素材として使われているようにさえ見えてしまうのだ。

ぼくは、Aさんは確信犯でやっている気さえするのだけれども、どうなのだろう?
とにかく、こんな美術館が建ってしまうということは、すごいことだ。

そんなかんじで、ぼくは、展示作品そのものよりも、ひたすらこの美術館そのものや、展示方法そのものに気を奪われ(そっちは本当におもしろい!)、ひたすらそれを鑑賞して帰ってきてしまったのだった。

・・・それにしても、フランス人の若い子がたくさん、食い入るように展示品に見入っていたけど、いったいどういうふうに見えているんだろう??



エッフェル塔を背景に建つ、こんな美術館!


チケットを買うために行列。見にくいが、梅のような木が花を咲かせている。
他にも、笹や、ススキのような和風チックなものがあちこちに植わっていた。


長いうねうねした通路を抜けると、アフリカアイテムコーナー。これも見に
くいけど、空間デザイン、採光方法、展示品の配置のセンスなど、圧巻!


これも写真ではわかりにくいけれども、数枚のガラスが奥のほうに並んで
いて、それに仮面が展示していある。(つまり、3次元的にお面が宙に浮いて
並んでいるように ―まるでたくさんの霊が行進しているみたいに― 見える)


うねうねと有機的な曲線を持つ壁の表面は、革でできている。
皮の表面には、呪術的な文字や図形が浮き彫りされている。


日本のコーナー。なんじゃこれは!? 「kimono」がどうとか書いてあるが、
あまり趣味は良くないなぁ・・・。あ、フランス人の女の子、なんだか真剣に
見てるけど、いやー、そんなにたいしたものではないんじゃないかなぁ・・・


切符を買うためにならんでいたところ。
帰りぎわ、薄暗くなると、下の庭のガラス棒から光が出て、天井に水紋
のような模様が浮かびあがっていた。夜になるときれいなんだろうなぁ。

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No.154: 6ヶ月目 (2007.2.21)

あっという間に1週間が経ち、明日はまたリコーダーのレッスン。
ああ、いつもより時間はあったはずなのに、なんでこう仕上がらないんだろう。

そして、パリ滞在もあっという間に6ヶ月目。
なんだか、時間があっという間に過ぎていく。

こちらに来たのは夏の終わりごろだったけど、だんだん暖かくなってきたし、あっというまに夏が来てしまいそうだ。



アパートの螺旋階段。


サンルイ島(手前)とシテ島(奥)。きょうもいい天気。

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