2002年2月の読書日記

  〜03日 梨木香歩「からくりからくさ」
04日     梨木香歩「りかさん」
04〜05日 梨木香歩「丹生都比売」
05日    梨木香歩「エンジェル エンジェル エンジェル」
06〜07日 梨木香歩「西の魔女が死んだ」
08日    三谷幸喜「気まずい二人」
12〜14日 吉本ばなな「アムリタ」
15日    湯本香樹実「夏の庭」
16日    湯本香樹実「ポプラの秋」
16〜19日 テリー・ケイ「白い犬とワルツを」
21〜22日 三浦綾子「雨はあした晴れるだろう」
25〜28日 萩原規子「空色勾玉」



02年02月28日 木曜日 萩原規子「空色勾玉」徳間書店pp.203-366

読了。

楽しかった。お見事。

以上^^;
・・・・・・いや、だってさ、でくさんがこれでいいって言ってるし。いや、ほんとに。

さーて、次は「白鳥異伝」だ。



02年02月27日 水曜日 萩原規子「空色勾玉」徳間書店pp.64-202

どうやら、でくさんからの注目を浴びている模様の「空色勾玉」。言っておきますが、僕は、初めて初めて読んだ本にはろくなこと書けないぞ(←これまでの読書日記を見ればよーくわかる)。まあ、でくさんの視線は無視して^^;マイペースで読み進めることにしましょう。というか、読み進んでると、話の筋以外にはよけいなこと考えなくなるからな、この手の作品は。

で、話の方は期待していた方向に進む。おもしろくなってきたなあ、といった感じ。序盤戦は期待通りの(予想を裏切られない)方が、読み進めやすいような気がする。



02年02月25日 月曜日 萩原規子「空色勾玉」徳間書店pp.1-63

今日からでくさんお気に入りの「勾玉三部作」です。今日はあまり時間がとれなくて、ページ数は進んでないけど、話にはもう入りこんでます。というか、むっちゃ読みやすいんですけど。小説読んでるという感じよりも、漫画読んでるときの感じに近いかも。

ということで、今日少し読んだだけだけど、早くも先が気になってます。でも、明日以降も読書の進みは鈍いかも。←時間はこれまでより減らすつもりなので。そろそろ、電車の中で専門書を読む比重を高くしないといけない時期だから。小説だけ読んでる方が気楽なんだけど、さ。



02年02月22日 金曜日 三浦綾子「雨はあした晴れるだろう」角川文庫pp.115-332

はい、読了。良くも悪くもやっぱり三浦作品だなあ、と思いながら読んでました。ちょっと青臭い展開だけど、きっちり胸打たせる力を持った、話の筋とかはちょっと強引で「いいんか?」と思いながらも、人に訴える力を持った、三浦作品。



02年02月21日 木曜日 三浦綾子「雨はあした晴れるだろう」角川文庫pp.1-114

まだ読んでない三浦綾子さんの中編集を見つけたので、とりあえず。いやいや、三浦さんの小説で読んでないのはほとんどないと思ってたので、新たな気持ちで読めるのはうれしいね。比較的初期の作品みたいだけど。



02年02月19日 火曜日 テリー・ケイ「白い犬とワルツを」新潮文庫pp.71-272

「白い犬とワルツを」読了。うーーーむ。良質な作品なのは確かだと思う。しかし、ベストセラーになりそうな作品には見えないなあ。←必ずしも、良いものがベストセラーになるとは限らない。これは、作品は良い。だが、一般ウケするのか?本当に? ・・・したんだよなあ、本当に。こりゃ、この作品のヒットのきっかけとなった本屋の店員さんの功績大ですね。素直に、本好きの店員さんを讃えましょう♪ こういう店員さんがもっと増えることを切に願う。



02年02月15日・16日 湯本香樹実「夏の庭」新潮文庫pp.1-221
                    「ポプラの秋」新潮文庫pp.1-218
             テリー・ケイ「白い犬とワルツを」新潮文庫pp.1-70


新幹線の中で、快適に読書してました。

「夏の庭」
泣いちゃった・・・ふ、不覚。
話の筋は序盤戦からかなり想像できて、実際推測通りに話が進むんだけど。途中からやばいなあ、なんか今日は感じやすいなあ、と思いつつ、やっぱりやっちゃった(苦笑)。
弥生おばあちゃんを訪ねるシーンでまずぐらっときた(137ページあたり)。で、ラストで主人公が「だけど、ぼくは書いておきたいんだ。忘れたくないことを、書きとめて、ほかの人にもわけてあげられたらいいと思う」って言うシーンで、ぶわっときちった。

「ポプラの秋」
p.178「ポプラの木は、行き場がないなんてことは考えない。今いるところにいるだけだ。そして私も、今、ここにいる」

この2作品どっちかと言われれば、「夏の庭」。

で、ついに手にとってしまった「白い犬とワルツを」。これについてはまた今度。



02年02月14日 木曜日 吉本ばなな「アムリタ(下)」角川文庫pp.33-301

「アムリタ」一気に読了。・・・といっても、話に引き込まれた、というわけでもない(笑)。明日は、東京に行くんだけど、旅先に読みかけの本を持っていくのがいやだったから。まだ開いてない本持っていきたいじゃない? そんなことない?

で、とりあえず、読み終えることが目的になってしまったせいか、いまいち内容を味わう読み方ではなくなっちゃったな。残念。気に入った表現は何カ所かあったけど、抜き出そうとまでは思わなかったので、パス。



02年02月13日 水曜日 吉本ばなな「アムリタ(上)」角川文庫pp.157-286
                     「アムリタ(下)」角川文庫pp.1-32


ひとまず上巻は読み終わった。まずまず、の感じかな。話としては悪くはない。もう一度読むかと言われたら、うーん、という感じだけど。 何カ所か抜き出したい箇所もあったけど、初めて読む本だし、引用はやめとく。

・・・と、ちょっと気になって久しぶりに福田和也の「作家の値打ち」を見てみた。
「アムリタ」…35点。あ、やっぱり(笑)。35点はちょっとひどいけど、60点前後かな、っていうのが僕の感触。

ちなみに、「キッチン」は76点、「うたかた/サンクチュアリ」は77点、「TUGUMI」は71点、と福田和也にしては高得点がついてる。やっぱり「アムリタ」は、吉本ばななでも少し落ちるのかも。あまり長編は向いてないタイプの作家なのかもしれない。昨日も書いたけど、なんか「間延び」した感じがするし。←長編好きの僕にしては珍しい感触。

とりあえず最後まで読んじゃいましょう。うん。先は気になるし。



02年02月12日 火曜日 吉本ばなな「アムリタ(上)」角川文庫pp.1-156

とりあえず、吉本ばなな。掲示板を見てから、湯本香樹実作品が読みたかったけど、手元になかったので(今は持っている^^;)。

最初の方は、なんか間延びした感じでなかなか入っていけなかったんだけど、だんだん読むスピードが加速してきた。この後がどうか、だな。



02年02月08日 金曜日 三谷幸喜「気まずい二人」角川文庫pp.1-269

今日は三谷幸喜の対談集を読んだ。たまには気分を変えて小説以外も、ね。
僕はかなり三谷幸喜贔屓。三谷幸喜は僕の笑いのツボをかなり刺激するお方だから。そして、やっぱり今日も電車の中で、笑いをこらえきれないことが数度あった。あー、苦しかった(笑)。



02年02月07日 木曜日 梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫pp.79-226

「西の魔女が死んだ」読了。

p.96「自分で見ようと決めたものを見ることができるように訓練するんです。〜でも、気をつけなさい。いちばん大事なことは自分で見ようとしたり、聞こうとする意志の力ですよ。自分で見ようともしないのに何かが見えたり、聞こえたりするのはとても危険ですし、不快なことですし、一流の魔女にあるまじきことです」

p.112「そういう一見不思議な体験を後生大事にすると、次から次へそういうものに振り回されることになりますよ」

p.116からの魂と身体の考え方はけっこう好き。初めて読んだときから頭に残ってる、印象的な話。

p.119「魂は身体をもつことによってしか物事を体験できないし、体験によってしか、魂は成長できないんですよ。ですから、この世に生を受けるっていうのは魂にとっては願ってもないビッグチャンスというわけです。成長の機会が与えられたわけですから」
この発想も好き。なかなか、こういう発想は出てこない。

p.138「魔女は自分の直感を大事にしなければなりません。でも、その直感に取りつかれてはなりません。そうなると、それはもう、激しい思い込み、妄想となって、その人自身を支配してしまうのです。直感は直感として、心のどこかにしまっておきなさい。そのうち、それが真実であるかどうか分かるときがくるでしょう。そして、そういう経験を幾度となくするうちに、本当の直感を受けたときの感じを体得するでしょう」
う゛。直感に支配されやすいんです>僕^^;

p.139「まいの言うことが正しいかもしれない。そうでないかもしれない。でも、大事なことは、今更究明しても取り返しようもない事実ではなくて、いま、現在のまいの心が、疑惑とか憎悪とかいったもので支配されつつあるということなのです」
「わたしは……真相が究明できたときに初めて、この疑惑や憎悪から解放されると思うわ」
「そうでしょうか。私にはまた新しい恨みや憎しみに支配されるだけだと思いますけれど」
「そういうエネルギーの動きは、ひどく人を疲れさせると思いませんか?」
これは確かにその通り。僕もなるべくこう思うようには心がけてます(なかなか思ったようにはいかんけど)。

p.162「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」
これはハードカバー版の帯に引用されてた名台詞やね。

そして、やはりこの作品の圧巻はラスト。このラストシーンは一回読んだら、決してわすれないぐらいのインパクトあり。そして感動も。本当に暖かい気持ちが押し寄せてくる。

文庫版に収められてる「渡りの一日」。
個人的にはお間抜けな藤沢兄弟が好き^^;



02年02月06日 水曜日 梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫pp.1-78

「西の魔女が死んだ」これも大好きな梨木香歩作品です。でも、今日は、なんだか電車の中で爆睡しちゃったから、あまりすすまなかったな。

関係ないけど、今日、大学生協の書籍コーナーに行ったら、「からくりからくさ」「裏庭」「西の魔女が死んだ」が3冊全部まとめて、文庫コーナーに平積みになってた。もちろん、「人気急上昇中 梨木香歩の本」っていう札付きで。さらにさらに、レジの前の一番目立つところに、「からくりからくさ」「裏庭」が平積みに。ここって、村上春樹とか江國香織とか学生に人気のある定番本を集めたコーナーなんだ。ここに2冊も平積みになるってことは、梨木香歩人気もいよいよ定着してきたみたいですね。



02年02月05日 火曜日 梨木香歩「丹生都比売」原生林pp.48-197
                 「エンジェル エンジェル エンジェル」原生林pp.1-165


今日は一気に2冊、読み終えた。

まず「丹生都比売」から。
テーマは、善と同時に悪、悪と同時に善なるもの、って感じかな?
権力にとりつかれて、息子を毒殺するような母。
だけど同時に、倒れた息子の側につきっきりで一夜を過ごす母。
p.161「……ああ、それもおかあさまの真実……」。
この他にも、泣く鬼の描写(p.185)も、鬼という一つの存在が抱える善悪の両面性を窺わせる。

こういうふうに、陰陽の両面を抱え込んだ存在、っていうのは、梨木香歩の作品にたびたび登場してくるテーマですね。「からくりからくさ」にも出てきたし、「エンジェル〜」もそうだし、「裏庭」もそうだった。梨木香歩の中心テーマの一つでしょう。

だけど、この「丹生都比売」は、梨木香歩の作品の中ではあまり好きじゃない部類に入りそう。テーマには問題ないと思うんだけど、どこかとってつけたような感じがする(気のせいかもしれないけど)。


で、次は「エンジェル〜」。この作品は梨木作品の中でもかなり好き。強く惹かれるものがある。「なんでだろ?」と読みながら考えてたけど、たぶん、さわちゃん同様、僕にも思い出したくない少年時代があるからじゃないかな。自分の醜さを自分にさらけだしたような。
だから、少女時代の思い出したくない思い出を抱え込んだ、さわちゃんに惹かれるんだろう。そして、梨木さんがさわちゃんを包み込んでくれたことに。

「エンジェル」も、中心テーマは善悪ともに抱え込んだ人間という存在、でしょう。
ラストが象徴的。
p.164
「どこまでも高みに向かう純白の天使の羽でなくて
闇に巣くう悪魔の蝙蝠の翼手でもない。

大鷲の翼
天と地の間を
つかず離れず飛翔する

ねえ
バランスとって飛ぼうよねえ さわちゃん
力いるけど」


関係ないけど、
p.22で、コウコが「大学すら宗教関係で選びたいと思っているほどだ」っていう表現が少し気になった。だって、確か梨木さんって同志社の神学部出身じゃなかったっけ? カフェイン中毒のコウコにご自分を投影なされてるのかな。だったらおもしろいなって。



02年02月04日 月曜日 梨木香歩「りかさん」偕成社pp.1-225
                     「丹生都比売」原生林pp.1-47


はい、梨木香歩を続けて「りかさん」。「からくりからくさ」の後(前?)にはやっぱり「りかさん」。

p.24
「ええ、おいしかったわ。
 りかちゃんはまだようこには届かない声で返事をする。けっこうシリアルが気に入った」
p.67
「それから二人で、『日本のりかさんの家に遊びにきたアメリカのリカちゃんごっこ』をした。
 りかさんもけっこう、のっていた」
りかさんのこういう市松人形離れした(?)ところは大好き。

p.54あたりにある享保雛のエピソードに出てくる、清子さんと内山さんは、「からくりからくさ」の紀久の祖父母だよね?

p.136では、「からくりからくさ」でお馴染みの井之川家の初枝さんのエピソード登場。あのおばさんにも、お気に入りの人形があったわけだ(笑)。

p.201アビゲイルをようこが解放するシーン。
「自分のどこか奥のほうから、けっして絶えることのないように泉のようにあふれるものがあり、それはアビゲイルの『ひりひり』と拮抗していた。〜すると心の奥の泉から今までにも増して温かく穏やかな慈しみの川のようなものが流れだし、ようこの苦痛を包み、アビゲイルの存在の痛みまでくるんで流していったかのようだった。」

このシーンって、「からくりからくさ」のラストの紀久を襲う感覚とそっくりだよね。・・・そうか、そういうことか。これまで全然気づかなかった。うかつ。

こういう感覚ってわかるようなわからないような・・・。たぶん僕自身がまだ経験したことのない感覚だからでしょう。

「丹生都比売」については明日以降に。



02年02月03日 日曜日 梨木香歩「からくりからくさ」pp.370-447

「からくりからくさ」読了。とりあえず抜き出します(←いっぱい!)

p.386
「私にはあのとき、自分たちの存在そのものを蹂躙されているようなクルドの人たちの苦しみが全然分かっていなかったのだと思ったのです。」

p.389
「私が礼をいって立ち去ろうとしたとき、おばあさんは後ろからもう一度私を呼び止め、あんたさんのこと、覚えてるよ。(中略) それでしかたなくあたしが教えたんだ。あたしが教えたんだ。」

p.393
「生き物のすることは、変容すること、それしかないのです。
 それしか許されず、おそらくまっすぐにそれを望むしか、他に、道はないのです。だって、生まれたときから、すべてこの変容に向けて体内の全てがプログラミングされているのだもの。
 迷いのない、一心不乱な、だからこそ淡々としたその一連の営みは、わたしの出会った、何人かの織り子たちに感じたものと同じでした。個を越えた何か、普遍的な何かと交歓しているような……。
 幼虫の姿ではもう生きていけない。追い詰められて、切羽詰まって、もう後には変容することしか残されていない。」

p.395
「伝えること 伝えること 伝えること
 大きな失敗小さな成功 挑戦や企て
 生きて生活していればそれだけで何かが伝わっていく
 私の故郷の小さな島の、あの小さな石のお墓の主たちの、生きた証も今はなくてもきっと何かの形で私に伝わっているに違いない。きょうのあのおばあさんが、私が教えたと繰り返したように。
 私はいつか、人は何かを探すために生きるんだといいましたね。でも、本当はそうじゃなかった。
 人はきっと、日常を生き抜くために生まれるのです。
 そしてそのことを伝えるために。
 クルドの人々のあれほど頑強な闘いぶりの力は、おそらくそのことを否定されることへの抵抗からきているのでしょう。
 生きた証を、生きてきた証を。」

p.408
「ほら、このパターンはここから明らかに変化している。(中略)ねえ、大事なのは、このパターンが変わるときだわ。どんなに複雑なパターンでも連続している間は楽なのよ。なぞればいいんだから。変わる前も、変わったあとも、続いている間は、楽。本当に苦しいのは、変わる瞬間。根っこごと掘り起こすような作業をしないといけない。かといってその根っこを捨ててしまうわけにはいかない。根無し草になってしまう。前からの流れの中で、変わらないといけないから」
「唐草の概念はただひとつ、連続することです」

p.420
「ようこちゃん、おばあちゃんが人形の体はお旅所だっていったの、覚えてる?」
「覚えててね。私も蛹から出られるの。このお旅所を発つんだわ」

p.429
「ねえ、これからきっと、こうやって、僕たちも、何度も何度も、国境線が変わるようなつらい思いをするよ。何かを探り当てるはめになって、墓を暴くような思いもする。向かっていくんだ、何かに。きっと。小さな分裂や統合を繰り返して大きな大きな、緩やかな統合のような流れに。草や、木や、虫や蝶のレベルから、人と人、国と国のレベルまで、それから意識の深いところも浅いところも。連続している、唐草のように。一枚の、織物のように。光の角度によって様々に変化する。風がふいてはためく。でも、それはきっと一枚の織物なんだ」

p.430
「蔦唐草。鳥や花、獣までその蔓の中に抱き込みながら伸びていく蔦唐草のツタ、伝えるのツタ。断ち切れないわずらわしさごと永遠に伸びていこうとするエネルギー。それは彼らの願いや祈りや思いそのものだったんだ」
「自分の与かり知らぬ遠い昔から絡みついてくる蔓のようなものへの嫌悪といとおしさ。蔓は個の限界を超えようと永遠を希求する生命のエネルギーだ。
 呪いであると同時に祈り。憎悪と同じぐらい深い慈愛。怨念と祝福。同じ深さの思い。媒染次第で変わっていく色。経糸。緯糸。リバーシブルの布。
 一枚の布。
 一つの世界。
 私たちの世界。」

p.436
「男の嫉妬も女の嫉妬も、恨みも怒りも憎しみも、それは本当は大したことではない。それはほんの入口、業火の溶鉱炉のようなマグマへ導く、案内の蛇のようなものだ。
 私たちは、人は皆その同じひとつの溶鉱炉でつながっている。」

p.437
「〜赤光は確かにこれを見たのだろう。そして自分たちにそれを伝えた。問題はその次だ。次の展開だ。
 神崎が探しているのも、たぶん。」

p.439
「存在ということ全ての底で、深く淵をなしながら滔々と流れゆく川。
 ひとつに繋がりゆく感覚。」

p.439
「……この川は、きっと、あのマグマと同じ場所を別の位相で流れている。永遠に混じり合わない唐草のように……
『……永遠に混じり合わない唐草。二体のりかさんたちのように』」

さて、それではこれから、まとめの作業に取りかかります。



02年02月02日 土曜日 梨木香歩「からくりからくさ」新潮文庫pp.342-370

正直言って、今日読み終える予定だったんだけど・・・。なんかどたばたしてて、ちょっと時間が割けなかった。ちょうど、紀久の出版問題に突入する直前まで読んで、キリがいいのでここまでにしときます。読もうと思ったら、あとちょっとだし、一気にいけるんだけど、落ち着いて最後まで読み終えたいし。←特にこの作品に関してはこれまで読んだときに最後は勢いにまかせて一気に読んじゃってるし。今回は、落ち着いてゆっくりじっくり最後までいきましょう。



02年02月01日 金曜日 梨木香歩「からくりからくさ」新潮文庫pp.244-341

今日、一気に読んじゃおうかと思ったけど、話が一気に押し寄せてくるラストはじっくり読んだ方がいいだろうと思って、とりあえず今日はここまで。

p.273
「帰化植物が日本の植物染料の奥行きを深くするってのもおもしろいねえ。文化の純血性にばかり神経尖らせていたら、文化って痩せて貧弱になっていくのかもね」
まあ、純血性が種の衰退を招くっていうのはよく言われることだけど、一応抜き出し。

今日、読んだ箇所だと、マーガレットのジェリーとピーナッツバターのサンドウィッチのエピソードには毎度のことながら弱い。僕はこの種のエピソードがどうしても好きなんだよなあ。

紀久の沈滞とそこから立ち直るシーンも好き(これは嫌いな人いないと思うけど)。
その紀久の立ち直るシーンの描写はうまいなあ、と思う。
p.330
「それを聞いて蓉子は思わずりかさんを抱き上げ、与希子は感激したのかくるりと後ろを向いた。マーガレットはさっと顔を紅潮させ、何も返せずにいた」
・・・見てよ、このまったく無駄のない生き生きとした完璧な描写。お見事だよな〜。

そして、神崎がトルコに旅立った。
このあたりから僕は中立な読者ではいられなくなるんだよなあ。なんてったって、僕の研究対象国。地下宮殿のメドゥーサ像も生で見たことあるし。←自分で見たものを取り上げられるのはうれしいけど、うれしい分気持ちが乱れる。



  
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