夢への第一歩 「管弦合奏」

 

 一度でも、オーケストラの一員として演奏された事がある方には、この気持ち、理解して頂ける事と思います。

 決して一人では味わう事の出来ないあの感動と、緊張と、充実感。「もう一度みんなと一緒に舞台に立ちたい!」

 社会人になって仕事にも慣れてきた頃、そんな気持ちが益々強くなってきました。高校時代の活動が、いかに充実したものであったかが思い知らされたのです。

 学生時代には音楽室があり、楽器もメンバーも、当たり前のように揃っている環境の中で、思う存分音楽を楽しむ事が出来たのに、いざ社会人になってみると現実の問題が山のように在りました。オーケストラへの夢は、益々果てし無く遠い夢へとなって行くようでした。

 その頃私は、たまたま中央公民館に勤務しており、数々の市民講座の運営に携わっておりました。講座についての話し合いの中で、何気なくもう一度オーケストラをするのは夢だけど、現実には難しい事を話した事がきっかけで、思いがけない方向に展開していったのです。全ては、その時の上司が大変温かい理解を示して頂けた事に尽きると思います。まさかその事が、夢への第一歩につながるとは、その時には思いもしなかったのです。

 時、昭和60年の事です。

 すでに市民講座では、「三味線」と「大正琴」の楽器を使用する講座が昼の部に開設されており、夜の部で、「管弦合奏」という形で市民講座の中の一つに加えて頂ける事になりました。当時、徳島文理大学音楽部の非常勤講師をされていた村田先輩に講師依頼をしたところ、快く引き受けて下さり、準備としては、まずまずの滑り出しでした。ただ、一番の心配は、果たして受講生が集まるかどうか・・・事前に楽器を持っている先輩、同級生、後輩達に講座案内をしたものの、私だけの夢の話で口座開設に至るとは思っていなかっただけに、責任とプレッシャーとで、受付け当日までは不安な気持ちを隠せませんでした。ところが、受付当日名簿を見ると、私の知らない方の名前が数名並んでいるでは在りませんか!私と同じように、音楽を楽しみたいという方がいるんだ!それが解っただけでも十分でした。その中に、70過ぎのおばあちゃんもいらして、世代を超えた新鮮な交流があった事を、今とても懐かしく思い出しました。

 毎週水曜日の午後6時30分からのニ時間。それぞれの弦楽器を持ち寄って合奏するひと時は、あわただしい毎日の生活の中に潤いを与えてくれました。また、合奏する楽しさだけでなく、日頃の学習成果を発表する機会を与えて下さり、「公民館祭り」と「歳末助け合いチャリティーコンサート」に、進んで参加する事で、練習する励みにもなりました。

 受講を重ねていくうちに、それぞれの心の中に「やれば出来る」という気持ちが湧いてきたのは確かです。夢が夢でなくなる日は、そう遠くない・・・

 「管弦合奏」の」講座が、再び熱い思いを抱き始めるきっかけになったに違い在りません。あらためて、良き理解を示して下さった当時の上司の方々に、心から感謝致します。

 あれからもう15年。あの頃は若かったから・・・と思うと同時に、もう一度あの頃のような熱い思いを掘り起こしてみたいと思う今日この頃であります。

 

2000.10.25 沖の洲、主婦、T.T

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