パシフィック・リム・アート・ナウ2003

ケリー・デットワイラー

 今から20年近く前、サンタクララのトライトン美術館で、日本のアーティストたちによる展覧会が行われた時から、北海道とカリフォルニアのアーティストたちの関係が始まりました。その数年後、札幌の北海道近代美術館で行われたふたつの展覧会―「アート・ドキュメント」と「北海道現代作家展」に、アメリカから数名のアーティストが招待されました。このふたつの展覧会を通して、日米アーティストたちの間に関係が築かれ、現在のパシフィック・リム展へと発展してきたのです。トライトン美術館やデ・サセット美術館、アプライド・マテリアルズ、サンタクララ大学美術学部ギャラリー、サンノゼ現代美術館で、日米が共催してきた展覧会は、アメリカの人々に、日本の優れたアーティストの作品に触れる機会を与えました。そして今回アメリカでの開催地となるのは、老舗であり、サンノゼでもっとも注目を集めているギャラリーのひとつ、ワークスギャラリーです。このギャラリーは、アート界のさまざまな動向のなかで、いつも活気と柔軟性があり、今でもサウス・ベイ・エリアのオルタナティブな、若いアーティストたちにとって最も重要なギャラリーといえるでしょう。過去25年間のワークスギャラリーの運営者を見れば、サウス・ベイ・エリアのアート・シーンにおける重要人物が分かりますし、ギャラリーの歴史の長さは、この地域のアーティストたちによるコミュニティがどれほど強力であるかを物語っています。

 日米アーティストたちの協力と友好関係は、長く、実り多いものでした。私たちはこの関係を通して、それぞれの文化の独自性を、異なった方法で表現することを、認めあえるようになりました。そしてその表現方法は、一見かなり違いますが、実はそれほどかけ離れていないのだと分かるようになりました。そうした違いはアーティストたちに、お互いの作品を理解し、評価するための対話を可能にする、独特のヴィジョンをもたらしてくれます。インターネットが普及し、より早く情報を集められるようになって、世界は小さくなり、私たちはかつてなかったような方法で、お互いの作品について語ることができます。私たちはアーティストとして、異文化を理解し友情を育んでくれるような、アイデアやイメージを交換できるのです。

 私は1988年に初来日して以来、こうした交換に参加し、多くの日本のアーティストと友人になれたことは、とても幸運だったと思います。この展覧会を実現させてくれた、日本の主催者たちと、ワークスギャラリーの運営者たちに感謝いたします。もちろん、この交換に貢献し、私たちが今回ふたつの展覧会で鑑賞する作品を制作してくれた両国のアーティストたちにも感謝します。また、市立小樽美術館と、アーティストたちの関係がずっと繁栄し続けるように、時間や労力、援助を惜しまなかったたくさんの人々に感謝します。そして私は今回のこの交換を、展覧会には参加できませんでしたが、日本のアーティストたちが持つ強さと独創的なヴィジョンを、自ら私に教えてくれた、一原有徳さんに捧げたいと思います。

ケリー・デットワイラー
サンタクララ大学美術学部教授
翻訳 岸井 千

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