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  空間


隙間を埋める煙草をわたしは持たない。
隙間を満たす何もそこにはない。
隙間には依然隙間が空いていて、何時まで経っても隙きっ放し。
そんな隙間の襞はいつも何もないにさらされていて、痛みを訴える
のです。生温かいようで真は温度のない風に凍みるのです。

隙間をみたす煙を私はもたない。
だからぽっかり空いている、何時も
何時までも、そこは。
それで裸で晒される粘膜はかわいて悲鳴を挙げるのです。
罅割れ悲鳴を挙げるのです。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
血を垂らす

それでわたしはかわいそうなすきまを煙に似た空ろなもので仮に埋
めてやるのです。なにかほやっとした偽りの儚で満たしてあげるの
です。すると空虚な隙間はそんな仮想に満たされたような気になっ
て救われるのです。痛みを感じなくなるのです。その空隙を満たし
た煙の刺激で痛みが和らぐのと違い、でも流し込まれた幻になんと
なく満たされてしまう満足してしまうのです。気のせい。

何もない隙間を何もないで埋めてもらった何もないすきまは、じつ
はそのことを知っていながらそれでもなぜかなんとなく満たされた
ような気になってしまい満足して痛みなんか感じられなくなって何
も感じられなくなって感じることを失ってしまうのです。粘膜にし
みこんでくる人為の嘘に酔い痴れ冒され腐れてしまった襞は神経を
やられてしまっているのです、あの痛みすら感じられなくなった
私の隙間はそれでも
そのことを知っているので、満たされて幸福に笑い乍ら泣くのです。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
さみしいよう。
感覚の喪失痛みの記憶。
何処かで知覚 血の滴り
いたい、いたい、いたい。

傷をこじ開け隙間を覗き込み雫の命の滲むのを一滴ずつ眺め数えて
喪いながら私は生命を確かめるのです。知っている
隙間に溢ちる精神を私はもたない。
気のせい。
     

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