あおく透きとおった初冬の空を、さめた陽光が天空から つらぬく。そんな時刻だ。 私は広大な青空の下に出た。荒野を渡ってきた風がひん やりとすり抜けていく。街を囲む城壁の門を抜けたのだ。 そのまま冬枯れの街道を歩き、郊外の遺跡へ向かう。風 化した旧王都の瓦礫の合間に奈落がある。街を出てほん のわずかの道程だ。 頭上には、はかりしれない遥かな天空がひろがっている。 ならば足下には、人にはおよびしれない大地の深淵が息 づいているのか。 この古い都に地の底へ続く道がある。夢のようだ。大地 の裏にひろがる茫漠とした穴がこの世にひっそりとちい さな口を開け、伝説を吐きだしては世界を呑みこんでい る。はかりしれない。 私は青空の世界に背を向けて、奈落への階段を下りた。