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  水晶の朝


つひに水晶が狂つた。
芽出度いことだ。

あゝといつては彼は頷き、
あゝといつては彼は頷く。

頷く。
また、横に振る。直撃。

ふらふらと、揺れて揺れて揺れゆれてゆれて……
空の青さに雪がしみる。

あの光も硝子なんだ、
あの光も硝子なんだ。欠片なんだ。
刺さつて血がでる、でる? でる。

完全に視覚をやられても、此の世の光からはのがれられない。
此の世の暗がりはまぶたの奥にある。だから仕方ない。
仕方ない、出掛けるか。
光にやられる、やられてしまふ、ふ、ふ、ふ。ふあ。ああ。
あゝ。

此の世の陽だまりも、まぶたの奥にある。
だから仕方ない。
往くか。

降り注ぐ尖りも乱反射充密しすぎる尖つたそれらはそれらで鎬を削り削り削りけずり此の身が

噴飯するには朝飯前だ。
かはりに血を噴いてやらう血と乳とちと意気を噴いてやらう、つらぬくやうに。嘗める様に。様に。やうに。さうだ。

ぼくらはしつさうするエンサイクロペヂアにのつてゐる。
わるくない、わるくないきぶんだ。
此の世はさう明るいんだよ。水晶だつてくるつちまー。

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