【20日目:1997/10/09:大分県臼杵市】     

 これから3日間は大分シリーズである。前日深夜
「ドリームにちりん号」に乗って、JR鹿児島本線
の小倉駅まで上り、小倉駅から日豊本線に入って、
当日の未明に佐伯駅に着いた。         

 今回の九州一周旅行のルールに則ると、今シリー
ズの出発点は、先日の歩行停止地点の「宗太郎駅」
にするところであるが、宗太郎駅から直川駅間の約
20Kmは、道路は狭くトンネルの多い、山深い難所で
ある。ここを歩くことは、歩行者にとって危険であ
ることは言うまでもなく、車にとってもはなはだ迷
惑なことであろう。こんな訳で、出発点を直川駅と
した。                  

 直川駅は佐伯駅から下り方面へ向かって3っつ目
の駅である。未だ佐伯の朝は暗かった。下りの1番
電車まで1時間半ほど時間があったのでベンチで横
になった。                  

 肌寒くてとても眠れるような状態ではなかったが
他に何もすることがないので、そのままじっとして
いた。なかなか時計の針は回らなかった。    

 ようやく、待ちかねた1番電車の発車時間になっ
た。すっかり明るくなった佐伯駅から普通電車に乗
り、直川駅に到着した。佐伯駅からは20分もかから
なかった。                  

 宮崎シリーズから1月半程時間が経過していた。
ちょっとあき過ぎたかなと思いながら、すっかり秋
めいた直川村を、臼杵に向かって歩き始めた。  

 空は快晴。流れの水面には川霧がたっていた。丁
度、学校の登校時だった。横断歩道で黄色い旗をも
ったおじさんに会釈をして通り過ぎた。小学校の児
童は声を出して挨拶をしてくれた。       

 直見駅を過ぎると弥生町に入った。番匠川を渡り
東に向かった。上岡駅から程なく県道36号線へと左
折した。この道路は通称「佐伯津久見線」と呼ばれ
ている。道幅は狭いが、津久見までの山越えの近道
である。                   

 この道路の情報は、前もって会社の後輩のK君か
ら教えてもらっていた。ちなみに彼は、津久見市出
身である。                  

 この山越えは、途中に全く店がないと言うことな
ので、ふもとの小さなスーパーで、パンを1個買っ
た。リュックには非常食のビスケットも入っていた
ので安心だった。               

 峠までは狭い道に悩まされた。車が身体の直ぐ傍
を通り過ぎる。生きた心地などしなかった。   

 峠を上りきったところには、真新しいトンネルが
あった。まだセメントの色が白っぽい。出来たての
ほやほやの様だ。「彦岳トンネル」だ。付近は公園
のようにきれいに整備されていた。ここで昼食を摂
った。                    

 食後10分間ほど休憩して、トンネルに入った。こ
のトンネルは1500mはあったと思う。中は幅3mも
ありそうな歩道が付いていた。気持ちよく歩けた。
と、言いたいところだが、何せ車の排気ガス。準備
してたマスクが役立った。           

 トンネルを抜け出た所は、眼下に津久見市街を一
望にできる、なかなか景観のよい所だった。よく色
づいたみかんが、たわわに実っていた。     

 下りきったところは、津久見市街。セメント一色
の街である。一気に市街地を通り過ぎ、また次の峠
に向かった。                 

 峠をのぼった所にあるのは「新臼津トンネル」。
新と言う文字が冠になっているが、かなり古い黒ず
んだトンネルだ。トンネルの入口に「石井農場」と
書かれた看板をかかげた店があった。「農場」とな
っているが、普通の店だった。そこで一休み。  

 店の前に自動販売機があったので、冷たい飲み物
をのんだ。そうすると、店の中から女の人が、私に
声をかけてくれた。「寄って行きませんか」。彼女
は店の女将さんだった。            

 店に入ると、「みかんを食べなさい」と言って、
商品のみかんをくれた。すっかり打ち解けて、つい
つい世間話に花を咲かせた。そうする内に、卸し屋
さんが来たので、お礼を言って店を出た。店を出る
とき飴玉やガム等をもらった。その節は、大変お世
話になりました。感謝・・・。         

 トンネルに入ろうとした。中は真っ暗だ。それで
もちゃんと50cm位の歩道が付いていた。ほっとした
。このトンネルも彦岳同様1500mはあっただろう。
このトンネルの向こうは今日の目的地の臼杵市だ。
そうしていると、女将さんが店から出こられて、先
程の卸し屋さんに、「トンネルは危険なので、臼杵
側出口まで乗せてやって頂戴い」と、私の事を心配
して頼んでくれたが、私は、歩道が付いていること
を理由に、丁重に断った。           

 ホテルに着いた。通された部屋は、そのホテルに
相応しくない、変な部屋だった。それは、きっと私
が塩のふいたTシャツを着て現れたからだろう。も
う、慣れっこになった。ただ、料金は当たり前に支
払った。頭に来た。              

 夕食時に、ホテルのおかみさんから、大分市まで
の道路情報を入手した。            

 つづく。