【15日目:1997/08/17:宮崎県宮崎市】    

 霧雨の中、青井岳荘をあとにした。台風による風
は、もうすっかりおさまっていた。空には鉛色の雨
雲達が沢山いた。               

 灰色と緑色でつくられた深い山中を歩いた。夕方
には宮崎市に到着する予定なのだが、そこにいると
とても信じられなかった。「このまま、ずーっと山
また山が続くのでは・・?」と言う思いにかられた
からである。それだけ深い山々であった。    

 雨は、降ったり止んだりの状態だった。そういう
事でもあり、当日は地味な一日であった。ただ、山
を下り終え、やっと人間の生活臭が感じられる様に
なった所でトピックス的な出来事がひとつあった。

 対抗車線を走っていたワゴン車が、私とすれ違っ
たあと引き返して来た。わたしはまた、私を激励し
てくれるために近寄ってきたのかと思ったが、そう
ではなかった。                

 ワゴン車に乗っていた二人のおっさんは、刑事だ
った。見た目は本当に「おっさん」だった。刑事は
私に職務質問するために近づいたのであった。  

 私は、会社の社員証明証と運転免許証を提示した
。刑事はすぐに納得してくれ、直ぐに世間話をする
ような仲になった。強盗を探しているところとの事
だった。別れるとき、不審者を見かけたら、通報し
てくれとの事。首を縦に振って別れた。     

 この旅行を始めて以来、多くの警察官に接触した
。裏を返すと、警察官の大半は常日頃から不審者に
対し目配りをし、安全な社会を維持するための努力
を続けておられるのである。          

 田野町、清武町を経て、宮崎市の市街地に着いた
頃には、きれいな青空が広がっていた。山手を振り
返って、「よくあそこから歩いてきたもんだなぁ」
と思った。その後ですぐいつもの通り、「俺は変人
だな」という定番の言葉を想いうかべ、自分が生き
てる事を確認した。山には雲がかかっていた。  

 とうとう東シナ海から山越えをし太平洋まで辿り
着いた。                   

 つづく。