【14日目:1997/08/16:宮崎県山之口町】    

 これから6日間は宮崎シリーズである。前日深夜
博多駅バスセンターを出発した夜行バスは、夜の九
州路をひたすら南下し、小雨降る早朝の都城に、よ
うやく到着した。               

 折から、超大型で非常に強い台風13号が、南西
諸島付近を北西方向に通過中であった。朝方は雨だ
けで、風は殆ど吹いてなかった。宮崎市までの山越
えは国道269号線を使う。          

 雨のせいか街に人影がない。雨の日に人が出歩か
ないのは当たり前である。「こんな日にうろうろし
ているのは俺ぐらいだろう」と素直に認めた。「俺
は変わり者だな」とまた思った。        

 私は「この世の中には、変わり者がいるから、ま
ともな者に価値が生まれる」と無理矢理屁理屈をつ
け、自分自身の存在を正当化した。       

 平野部を歩き終えた。これからは山越えだ。ほど
なくすると、台風の影響が出始めた。「山と平野で
はこんなに違うのか」と思った。一旦荒れ始めると
もう止まらない。どんどん激しくなる一方だ。  

 嵐の中を突き進むのは初めてだ。「もし街中だと
飛び交う瓦や看板で危険だが、山では、風でもぎ取
られた小枝さえ気を付けていれば、どうにかなる」
と思いながら歩いた。             

 昼食は、上り坂の途中にあった一軒の食堂で摂っ
た。思いもかけない所で、お腹を満たすことができ
幸せだった。食欲第一。たしか「山菜うどん定食」
の様なメニューだった。大変美味しかった。   

 私は、びしょ濡れの状態で店に入ったので、フロ
アーや腰掛椅子を濡らしてしまった。店主に丁寧に
お詫びをして、再び、荒れ狂う自然の中に身を投げ
入れた。                   

 間もなく峠を越え、下り坂に入った。当日は国民
宿舎「青井岳荘」に宿泊する。その「青井岳荘」に
はチェックイン開始の1時間前に到着した。チェッ
クイン開始前なので部屋には入れてくれなかった。

 フロント係に「チェックインできるまで別の部屋
を借りる手があります」と言われた。私は、玄関に
1時間も立ちんぼしたくなかった。やむを得ず別の
部屋を1時間借りた。1時間分の料金を支払った。
複雑な気持ちだった。             

 どういう訳か、「青井岳荘」の方々は、都会の人
のようなクールさが漂っていた。はっきり言うと、
暖かさに欠けていた。濡れ鼠で訪れた私が悪かった
のか・・・。だけど、人は一目で「善人」か「悪人
」かは大体判断できる筈だが・・・。「あっ、そう
か俺は悪人か・・・」(ーー;)           

 「青井岳荘」のロビーには、土地で収穫された南
瓜が飾ってあった。相当に大きなものだった。南瓜
の周囲に両手をまわしたが、とても届かなかった。

 この南瓜。重量当てクイズが実施されていた。私
も応募箱に一票を投票した。          

 つづく。