【10日目:1997/06/27:鹿児島県串木野市】   

 4日目の回想でも述べたが、今回1週間の休暇を
取得した。当日が丁度その7日目であった。金曜日
だった。あと、土日曜日の2日間、自分の時間はあ
るのだが、当日のJRで帰宅することにした。  

 と言う事で、歩行予定は午前中だけ。距離も12Km
と、ままごとみたいな予定だった。その様な訳で、
今、これと言って思い返す事は無い。      

 敢えて振り返れば、串木野駅のすぐ近くに五反田
川というきれいな清流があり、そこには体長1mは
悠に超える、緋鯉や真鯉達が優雅に泳いでいた。私
が子供の頃なら、迷うことなく食用に供されていた
だろう。「今は、飽食の時代だな」と思った。  

 串木野駅から歩いて5分位のところに食堂があっ
た。ちゃんぽんが旨かった。丁度昼食の時間帯と言
う事もあり、5〜6人の客がいた。多分、人気のあ
る店だろう。                 

 串木野駅から上りの特急に乗車した。この7日間
かけて歩いた距離を、僅か2時間強で走り抜けた。
複雑な気持ちだった。「人間のやることなんて本当
にちっぽけな事だな」「自分は何のためにこんな事
をしているのだろうか?」「時間と金の浪費だけじ
ゃないのかな?」               

 などと、自分のやっていることに猜疑の心を持ち
つつ、缶ビールに竹輪で、車窓を眺めた。アルコー
ルの効力の出た頃、「どんどん金を使って、日本の
景気を良くしよう」という考えが、ささやかな頭の
中を支配していた。              

 つづく。