【5日目:1997/06/22:熊本県富合町】

 昨日来の雨が依然として降り続いていた。しかし
当日の雨粒は霧の様に小さくなっていた。だが雨は
雨。濡れることには変わりがない。       

 ビニールの雨合羽に身を包んで歩いた。この雨合
羽は作業用のもので、造りはしっかりしている。そ
のせいか、雨を完全にシャットアウトしている。だ
がしかし、この事が完全に裏目に出た。身体から湧
き出た汗と熱は外に発散せず、雨合羽の内側にこも
りっきりとなり、相当な不快指数だった。    

 熊本は、街路樹が沢山植樹されており、手入れも
ちゃんと行き届いていた。銀杏の樹が多い。藤崎宮
前を通過しながら「この分だと、秋の紅葉の季節に
なると、黄色が凄いだろうな」と思った。フランク
永井の「公園の手品師」を想い出した。     

 白川を渡った。いつもは、歩き疲れたら、どこで
あっても腰を下ろして休憩するのだが、当日は終日
雨模様で下が濡れており、休憩場所が見つかるまで
ずっと歩き続けた。湿度と暑さと少ない休憩のため
疲労の度合いは大変高かった。         

 昼食は、ほか弁屋さんで、やきそばとおにぎりを
買い込み、道端の本屋さんの軒先で済ませた。  

 少ない回数の休憩ではあったが、1回あたりの休
憩時間はかなり長いものとなった。その様なわけで
当日はなかなか前に向かって進まなかった。   

 当日は、歩く意欲が弱かった。緑川を渡ってしば
らく歩いたところで、温泉センターが目に入った。
中に入ってみた。特に宿泊設備はないが、24時間
営業とのこと。「ホテル代を浮かせるな」と内心ほ
くそ笑んだ。 ここは富合町。「今日はここで1泊
だ」と宿泊する事に決めた。          

 お湯は気持ちがよかったが、温泉センターのあの
独特な雰囲気には馴染めなかった。時間の経つのが
遅く感じられた。喧騒のため、とても気を休めるこ
とはできなかった。時計の針が深夜0時を回っても
その状態は続いた。深夜1時を過ぎて暫くして、や
っと周りが静かになった。           

 眠りが浅かった。睡眠不足になりそうだ。「宿泊
はホテルに限る」と思った。          

 つづく。