TOURING2(8月13日・14日)戻る


8月13日(金)a.m.10:00〜p.m.9:00(日中)雨ときどき曇(夕方)どしゃぶり

家→4→16→大宮
総走行距離 350km
総走行時間 8時間40分
平均時速 40km
有料道路 利根川(4号)200円

「そろそろ出発か・・・。」そんなことをぼやきながら、僕は部屋を出た。もしかしたら、この扉を2度と開けることはない。そんな、胸騒ぎを脱ぎ捨て、僕はシートをまたぎ、メインスイッチにキーを回した。空は僕の気持ちに応えるように、大粒の涙で迎えてくれた。「なぜ、こんな俺の邪魔をする。」そして、僕は相棒のJADEと共にアクセル音で別れのあいさつをして、この街を跡にした。

相棒の調子はいい。しかし、天気は相変わらずだ。しかし、68km過ぎ、福島にもうすぐ着こうとしているときに、事態は急変した。いきなり、出力が落ち、いくら右手を回しても、ギュ〜ンという音と共に空回りし、そして止まった。こんなことは初めてだ。動揺がはしる。焦り・・・そして、人の悲しい抵抗。エンジンスイッチを、押しつづける。現実は無常にも、ダダダ・・・という悲しい泣き声が鳴り響くだけだ。僕は、呆然とした。どうすればいいんだ。焦りで汗が、流れ落ち、しょっぱい味がした。・・・数分後・・・僕は、エンジンタンクにあるスイッチをFUELに回し、最後の抵抗を試みた。ダダダ・・・、まだまだ、エンジンはつかない・・・。はやく、はやくついてくれ。たった数十秒が数分にも感じた。そして・・・カタカタカタ・・・エンジンがついた。やった。再び希望の道が開いた。しかし、あの絶望の数分間は、ただのガス欠ということを恥ずかしく思い、風と共に忘れようと、再び風の中に消えるのであった。

ひたすら一直線の4号線。CoCo壱番でカレーを食べ、宮城・福島・栃木・群馬を過ぎ、ついに埼玉に入った。天気も晴れたり雨が降ったりを繰り返していたが、埼玉で急変した。いままでのは、お子様の雨だったが、いきなり大人の雨が降り出した。ものすごく大粒で、しかも、滝のようにすさまじい勢いで雨が降り出したのだ。視界は急激に悪い。本当に何も見えない。ヤバイと思って、キャップを上に上げると、すさまじい雨が顔にあたり、だてめがねをしていても、雨が目に入ってくる。前傾姿勢になっても、容赦なく顔にふりつける雨。「早く、早く着いてくれ。」私は、真剣に祈った。しかし、根本的に目的地ってどこ?と気づいた。別に、東京なら泊まるとこいっぱいあるだろうと思っていたので、どこで泊まるかはまったく決めていなかった。また今日も、例の無計画性がでてしまった。とりあえず、八王子まで行きたかったが、もう夜8時を回り、しかもこのどしゃぶりで気力が完全にダウンしてしまったので、この大宮で泊まることを決めた。そうすると、雨はまたお子様の雨に戻った。なんなんだ、こりゃ。誰かに操られてるみたいな感じがした。とりあえず、駅横にカプセルホテルがあったので、そこで泊まることにした。「ふぅ、やっと一息つける。」そんなことを思って、入ったが、しかし、どこにも安息の地はないと気づくのは、そう時間はかからなかった。

ずぶぬれになった体を連れて、僕は中に入った。バイクの後ろにネットで縛り付けておいたものは、ごみ袋の中に入れてあったので、無事だった。担いでいた荷物を調べてみると、防水のつもりでナイロン袋の中に入れてあったが、それも赤子の抵抗で容赦なく、雨が浸透していた。地図はぬれて、ページとページがくっついてる。それくらいなら、どうにでもなる。地図もそんなに高いものではないので、いざとなったら買えばいい。問題は電子機器類だ!!!。荷物の中に3つ入っていた。ひとつは、ラジオ。ロングツーリングにはラジオで情報をてにいれる必要もあるだろうと考え、最近購入したものだ。1回も使ったことがない。価格1万2千円。・・・・電源がつかねぇ。もうひとつは、MDウォークマン。半年間使用している、俺に音楽という命を吹き込んでくれる大切な代物だ。価格は2万5千円。・・・・まったく反応しねぇ。最後の極めつけはPHSだ。半年前に機種変更をして、以降いつも手放さず(ウソ)にもっている、PHSだ。価格は4800円+事務手数料2000円だが、それ以上の価値がある。まず、電話帳に登録してある電話番号。必死にいれておいた数十件が、一気にパ−。おまけに、機種変更するときにメモった番号は残っているが、それ以降のやつはメモってないやつもあるので、数件不明。おまけに、苦労して作った着メロもこれまたパー。・・・電源がウンともスンともいわない。「女の子なら、こんなの自殺もんだぞ。」そんなことを思って、気を落ち着けようとしたが、ささやかな抵抗にすぎなかった。とりあえず、これらをタオルでふいて、ドライヤーで乾かして放置した。とりあえず、待つしかなかった。問題はほっておいて、風呂で体を温め、カプセルでHな番組をみたが、心の動揺と絶望は拭い切れず、ただ呆然と時がすぎるのを待った。PHSが壊れているなら、誰からも連絡がはいるはずないし、○○部の夏合宿に行ってる人間の電話番号は全然わからないから、こっちから連絡することもできない。明日はどうなるんだ?こんな、孤立状態でたどり着けるのか?というか、明日行く意味があるのか?こんな逆境にあってまで・・・。頭が煮詰まってきたので、下におりてマイルドセブンを買い、ライターで火をつけた。「今日は、いくら吸っても許す・・・。とりあえず、後で考えよう。きっと明日は晴れるさ。余計な心配はいらない。PHSも時間があれば、機種変更していけばいい。あせることはない。明日は、今日の半分の150kmしかない。朝早くいけば、北大企画さえ出られる。余計な心配はいらない。今日は、あと寝ればいい。」3本吸い、部屋に戻り、再びHな番組に興じることにした。そして、僕は眠った。・・・と思ったら、隣がめちゃくちゃうるさくて全然眠れなかった。ほんと、最低だ。

しかし・・・今日はただの前夜祭で、本当の地獄は明日ということは、まだこのとき気づいていなかった。

8月14日a.m.9:00〜p.m.17:00 一日中どしゃぶり

大宮→16→20→大垂Uターン→48→41→412→相模湖Uターン→412→八王子バイパス→中央道(八王子〜長坂)→八ヶ岳
総走行距離 250km(120km)←内高速
総走行時間 7時間30分(1時間30分)←内高速
平均時速 20km(80km)
有料道路 八王子バイパス(250円)・中央道(2450円)

朝、天気予報・・・熱帯低気圧接近、関東地方に大雨洪水注意報が・・・。僕は愕然とした。「ここまで、神は俺を見放しているのか?」それでも、まだこの時はいかなきゃならないと思っていたので、しぶしぶ出発した。

東京は迷路だ。一方通行が多くて、思うような方向に行かない。なんとか、目的の道にたどり着き、コンビニでおにぎりを食う。今日は、昨日以上に気力が必要と感じ、コーヒーでカフェインをいれておく。このときはまだ昼飯は食べるつもりでいた。まさか、このおにぎりでこれからの死線をくぐりぬけるはめになるとは、このとき予想だにしていなかった。朝食を食べ終わり、八王子に向かった。「さっさとついて、寝てぇなぁ。でも、○○部だから、所詮宿は・・・だろうな。」などと考えてる余裕が、まだこのときはあった。

午前11時、八王子・・・60km離れた八王子に、2時間もかかってしまった。「でも、大丈夫。まだまだ、余裕はある。あと、100kmちょっとで着くんだ。早く行きすぎても、まだ北大企画やってて、宿に入れないかもしれないから、このロスはさほど痛くない。しかし、雨はどんどんひどくなる。体温もじりじりと失い、体力もどんどんなくなっていく。こうなれば、短期決戦だ。」そう考え、FamilyMartで栄養ドリンクを、体に入れようとしたら、店員が、どしゃぶりになっている僕に対して、「外は雨ですから、中で飲んでっていいですよ。」と言ってくれた。なんとも、親切な店員なんだと、人の温かさに感動した。しかし、神は容赦なくすべてを洗い流そうとしているのか、一向に雨は弱まらない。

降水量が100ミリを超えていたらしい。車は容赦なく水ははじき、か弱い二輪者に水をぶっ掛ける。車に乗って、優々と人生と送ってる奴らめ・・・俺はどうせ、こんなに無駄に苦労を重ね重ね生きてるんだ。馬鹿野郎〜〜!!!などと、車に怒りをぶつけていたが、ただのねたみにすぎなかった。「そうさ、俺は人のものはうらやましくみえるのさ。」などと、馬鹿なことを考えていると、道路の電光掲示板に20号大垂〜相模湖間通行止めと掲示されているのを発見した。まずい・・・迂回しないと。しかし、道路表示を見逃していたのか、ず〜と迂回できずにいると、結局、通行止めという看板で道を封鎖してる地点まで来てしまった。大垂水峠通行止め。かっぱきた作業員が引き返せって、合図を出す。なんか、ムカツク。でも、ものすごく山道になってるのに、行きすぎてるって確信できずにここまでくるほうが馬鹿だろうが。結局、7kmくらい行きすぎてたので、そのまま引き返した。このときから、もうカッパはほとんど無意味化していた。雨が完全に体に浸透し、胸の部分がカッパにひっついたシャツにふれるとめちゃくちゃ冷たくて、なんか心臓の部分が痛くなるのだ。なんか、心臓発作でも起きそうなきがするので、無駄だと思いながら、最後のタオルを胸の部分に入れる。前から受ける雨が、直接胸に浸透しなくなったので、幾分か楽になった。危機感は、かなり現実実を帯びてきた。この時点で、もう3時間ずっと雨と風に打たれたまま、しかもすべてぬれているので、もう店に入って昼飯を食うなんてことはできない。つらい。めちゃくちゃつらい。しかし、このときはまだ”引き返す”などという言葉は、頭にこれっぽちもなかった。

迂回して、なんとか412号に乗った。これで、相模湖から20号に復活できる。問題が起きれば、中央道(高速)に乗ればいい。これで大丈夫。はやく、風呂にはいりてぇ。そう考えていた。しかし、超〜〜〜渋滞。はっきりとはわからないが、5kmくらいは渋滞してたような気がする。最初は、左から横抜けをしていたが、その車幅が狭くなっていき、左にすきまがなくなってしまった。渋滞・・・じっと待つ。じりじり体力は失われる。結構、もう限界が見えてきていた。車はいいよな〜、外がどんなに荒れようとも、安全な中からちょいと動かせばいいんだから。でも、こういう人間こそ、人生を要領よく生きてるって言うのかなぁ?などと、馬鹿なことを考えていると、横から山口ナンバーが黄色い線をはみ出して、反対車線に入りながら横抜けをしていた。「よっしゃ、これについてこっと。原付王国”仙台”で鍛えたこの宮城ナンバーをなめんなよ。」そして、黄色の線を無視して、反対車線を走り、延々と続く車の列に、「や〜い、や〜い。2輪はいいやろ〜。くやしいやろう」と車へ逆襲しながら、抜かしていった。しかし、20号についてみると・・・

「あ〜、駄目駄目。通行止め。ICの前で道が終わってる。」といわれた。通行止めの区間が延びているではないか。相模湖〜大月間通行止め。しかし、まだまだ通行止めは続いてるかもしれない。「20号は、ほとんど通行止め。こっちも全然わからないんど、八王子まで戻って、中央道に乗るコースを勧めとる。小道さえ知っていれば、相模湖のICに入れるかもしれんけど・・・。」そんなことを言われた。さっきの一緒に横抜けした人の横に、バイクを止めて、地図を見る。今、つらい選択を迫られていた。ひとつは、八王子に戻って中央道に乗る。ひとつは、小道を探して相模湖ICにのる。ひとつは、また迂回する。最後の究極選択は東京戻って、夏合宿ボイコット。時刻は、もう午後2時を回っていた。雨風に打たれつづけて、もはや5時間。昼飯も食べてないので、おなかもすき、体力も限界が近づいていた。本当に、夏合宿サボルかなと考えたが、ここまできたら行くしかない。そして、決断。八王子に戻って、中央道に乗る。もう、休憩も取らない。(とれない。なぜなら、とどまっていたら体力が奪われるから、休めない)俺は、行く!空がないていた。俺を試そうというのか。それとも死ねといっているのか?全身ズブヌレで、もう感覚はなく、幻聴が聞こえはじめていた。

もう、金に糸目をつけていられない。もう最短でいくしかない。250円払って、八王子バイパス使って、再び数時間前通った道に戻ってきた。時刻はもう、午後3時を迷っている。4時間前もこの場所にいたのに、なんて無駄なことをしたのだろうか。戻ってみると、なんと橋まで、通行止めになってる。ツーリングに道路情報は欠かせない!また、ひとつ勉強になった。ガスを満タンに入れ、いざ中央道へ。初めての高速道路。こんな形で君と会いたくはなかった。ズブヌレの手で通行券を取る。ドキドキものだ。さぁ、もう迷っていられない。行こう。まず、最初のPAで、本当に中央道に乗っているのか確認。あと方向も正しいのか確認。とりあえず、あっているようだ。そして、またコーヒーを入れておく。カフェインだらけで、体に悪そうだが、もう健康なんて気にしていられない。これは、もう死ぬか生きるかの瀬戸際なのだ。命には、代えられない。もう、疲れ果てていた。こんな状態で高速道路、しかもドシャブリの道路状態最悪を走っていいものだろうか・これは、俺に向けた挑戦状だ。高速道路すら通行止めになっていたら、もうおしまいだ。俺は、もう行くのはあきらめよう。これが最後の道だ。そう考え、初高速を生きて戻ってくる決意を固めた。「もう、やるしかないんだ。これは。ここで死ぬなら、神が俺に死ねといっているのだろう。」

雨が襲う、前が見えない、全身ビショヌレ、寒い・・・寒い・・・寒いよう。眠いよう・・・。ヤバイ。これは、ヤバイ。全身寒くなったら、人間眠くなるって本当だったのか。こんな感じで体験したくはなかった。精神をしっかりたもっておかないと、ヤバイことになる。とりあえず、眠らないように、考えよう。でも、本当寒い。こんな真夏に、寒いなんて思うとは、予想だにしなかった。そういえば、いつのまにか、冷たいが寒いになっている。でも、めちゃくちゃ怖い。怖いからスピードは80kmぐらいしかだしていないから、横から車はどんどん追い抜かしていく。でも、ここで冷静さを失ってはいけない。抜きたい奴は抜かせれば良い。スピードを出せば、それだけ危険が増す。初高速なんだから、安全に走れば良い。雨は最悪だが、(横)風はそんなに強くないのだけは、不幸中の幸いだ。これで、横風もあったら、本当に倒れてそのまま死んでいただろう。転んだらどうなるんだろ。とりあえず、死ななくても、かなり衰弱してるから、そのまま血失ったら、気失って死にそうだな。あと、車線変更などは本当に怖い。車線と車線で微妙な段差があるので、すこし”ガタッ”とふらつくので、本当にこのとき転ばないかと考え、ちょっと勇気がいる。でも、俺はまだ恐怖感をもっていたのか。この世に、なぜまだ恐怖する。もう、この世に未練はないはずだろうが。これが、いつでも死んでもいいといっている人間の考えることか。お前に恐いものなどないはずだ。死ぬきで、なんでもやれという精神に反しているんじゃないか。ああこの世でやり残したことは、ないかなぁ。○○○や○○○したかったなぁ。あぁ、こんなことなら、誰か襲っとくべきだったな。(もはや、壊れてます)

分岐点・・・長野方面か、名古屋方面。しまった、もう何も記憶できる状態じゃないからって、おりるIC(長坂)しか見ていなかった。ヤバイ・・・。どっちだろ。ここで間違えると、致命傷だ。八ヶ岳ってどこだっけ?やべぇ、PAで調べようと思っても、もうPAがない・・・。もちろん、高速は駐停車禁止。どっちだ。なぜ、俺にこんな選択をさせる。あの看板不親切だぞ。あ〜、う〜、ぜんぜん頭が働かん。とりあえず、また勉強になった。高速道路乗るときは、分岐も見ておけってことが。あ〜、もう、これでまちがってたら本当に、ボイコットしてやる。大体、なんで俺がこんな目にあわなきゃなんねぇんだよ。俺が何したっていうんだよ。なんなんだよ。こんな不幸な少年いじめて、なにが楽しいっていうんだ。畜生、本当につらいだけの人生なんだぞ。なんで、不幸なものをさらに不幸にするんだ。馬鹿野郎・・・。この言葉、俺何回言ってるんだ。もう、ストレスたまりまくりの現代やなぁ。もう、いや。もう、いいや。とりあえず、名古屋方面で。間違っていたら、間違っていたそのとき、また考えよっと。

まだ、こんなこと考えてるときは大丈夫。しかし、数十分後・・・

タスケテ。モウイヤ。タスケテ。モウ、イヤ。タスケテ・・・・・もう、こうつぶやく元気しか、残っていない。もう、この状態に何も考えていない。人間、最後には何かにすがろうとしてしまうのでしょうか?誰も助けてくれないと、わかっているのに、本当にただ”タスケテ”としか言えないのです。もう、死んでもおかしくない状態です。このときは、もうすべての感覚を通り越して、本当に何も感じないのです。

しかし、この後私は奇跡的にも生還を果たした。通行券はビショヌレで機械通せないからって、ナンバー控えられた。感じ悪い〜。通行券はぬらしてはいけません。また、勉強になった。俺は生きている。俺は、まだ生きれってことなんでしょうか?この世で、俺はあと何をすればいいんだろうか?死線をくぐった後も、人は考えつづける。そう、道があれば走りつづけなければならないのだ。