ブラウニーの行方

どの時点でオチがわかりますかクィィィィズ!

 旅に出て一週間後、部屋に帰ってみると、部屋の中が妙に片付いていた。


 俺はあまり整理整頓が得意でないタイプの男で、 年末年始を除けば部屋はいつでも散らかっているはずなのだが―― 散らかっていた品物の数々が、みな、 収まるべき場所に収まっているではないか。


 これはいったいどうしたことか?  不気味だが、悪意を感じないのがなんとも奇妙だ。 もやもやした思いを胸に抱えていたとき、俺は、 ふとあることを思い出した。


 ブラウニーの話だ。


 西洋の伝説に登場する妖精、ブラウニー。 部屋を片づけてくれたり幸運を呼んでくれたりするという、 良い妖精だ。この状況は、まさしく、ブラウニーがやってきて 片づけてくれたかのようだ。


 まさか、と思いはしたが、俺は迷信を信じるタチだ。 そう、亡き祖母から教えこまれたためである。ブラウニーがいたって おかしくないさ、そう思って、俺はミルクを注いだカップを机の上に 放置して、寝た。伝承どおりなら、 ミルクはブラウニーに対する報酬となるはずだ――


 翌朝、起きてみると、果たしてカップのなかのミルクは一滴も残っていなかった。


 やはり、ここにはブラウニーがいるのだ。俺は、なんだかうきうきした。 特殊な存在と付き合いを持てていることが、ある種の 優越感を生み出していたのだ。


 それからしばらく、俺はブラウニーの助力をしばしば願った。 なにしろ片づけるということができない俺、出した物は出しっぱなしだ。 そして、ブラウニーは俺が寝ている間にそれらを片づけてくれる――若干、 片づける場所に関して俺の意志との相違はあったが、たいした問題じゃない。 そして俺は、報酬としてミルクを毎晩用意しておく。


 この奇妙な生活が始まってから三ヶ月ほど経ったある夜、 俺はついにブラウニーの姿を目撃することになる。


 ふと気配を感じて目を覚ました俺は、月光という薄明かりのなか、せっせと 漫画を片している小さな少年の姿に気づいたのだ。少年もすぐ俺に 気づき――俺が微笑みかけると、はにかんだように笑った。


 ブラウニーはいい奴だ。俺は心からそう思った。


 ある日のこと。俺は、自分の部屋に彼女を呼んだ。


 しばらくいろいろな話をしてから、 ジュースが尽きたので外に買いに行くことにする。ふと空を見上げると、 すでに月が出ていた。


 あとはどんな話題のストックがあっただろうかと記憶の糸を手繰りながら コンビニで炭酸を買い、部屋に戻ってきた俺だが――奇妙なことに、 彼女の姿が無い。


 用事でもできて帰ってしまったのだろうか? だとしたら、書き置きを残すなり、 携帯にメールを打つなりしてくれればよいものを。彼女に対する軽い失望を 覚えながら、俺は机に座り、ジュースを置いた。


 それから、ふとゲームでもやろうかと思いたって、 一番下の引き出しを開ける。この引き出しは他の引き出しより広いスペースを保有しており、 いろいろなものを適当に放り込んでおくにはうってつけなのだ。


 がら、と、その引き出しを開いた瞬間……


 俺は、硬直した。なぜなら――


 そこに、彼女が、いたからだ。


 どう見ても人は収まりきるとは思えない場所に、彼女が、いたからだ。


 ――身体を、基本的人権を無視した方法で折り畳まれている。首が、 ありえない角度に曲がっていた……彼女は、死んでいた。 屍が、コンパクトに折り畳まれていた――いや、 折り畳まれている最中に屍と化したのか。虚ろな半開きの 瞳が、恨めしそうに俺を見ていた。


 俺は、息を呑んで後ずさった。その拍子に椅子がガタガタ揺れると、そこから何かが飛び出した。


 人形ほどの大きさの少年が、得意げにこちらを見ていた。


 ……ブラウニー。


「おまえが……やった、のか?」


「ソウダ」


 俺の問いに、彼は誇らしそうに答えた。


「片ヅケタ。邪魔ナモノ」


 悪い事をしたなどとは、微塵も思っていないらしい。 その態度に、俺は、激昂した。


「――馬鹿野郎!」


 ブラウニーの身体が、ビクリと震える。


「なにが邪魔なものだ!? 彼女を――殺しやがって!  付き合いきれねえ……ぶッ殺してやろうか!」


 怒りに任せて叫ぶ。実際に、拳を振り上げてみせる。


 ……俺は、軽率だった。


 怒鳴られたブラウニーの瞳に鬱積していく暗い輝きに、気づかなかったのだから。


 ブラウニーの喉が唸りを発した時点で、初めて俺は我に返り、そして知覚した。


 ――周囲を取り囲む、無数のブラウニーたちを。


 どんな悲鳴をあげたのか、覚えてすらいない。ただとにかく、俺は情けない姿勢で 転倒した。恐怖の色を顔に浮かべて、迫り来るブラウニーたちを見詰めていた―― 人ひとりをコンパクトに折り畳むくらい造作も無い彼らの姿を、見詰めていた。


 彼らの顔は、歪んでいた。怒りと憎しみと悲しみが、彼らの顔を歪ませていた。


 その歪みが、俺の視界いっぱいに広がった――





九鬼:……よくもまあ、これだけ ブラウニーのことを悪し様に書けるもんだな。

Falchion:うん、わたしもそう思う。書き終えた後で思わず謝っちゃったよ。前方に。

緑川:いやパソコンのなかにはいないだろブラウニー。


ハイ!という事で<風浪>のFalchionさんからイカス文章をいただきました。

こえー!ブラウニー怖ぇー!なんかもうこのまま都市伝説としてチェーンメール化できそうな勢いですよ!とか

パソコンの中にコンパクトに折り畳まれたブラウニーが入ってたらさらに怖ぇ!とか

子供にはきちんと善悪を教えないと大変な事になるという警鐘を含んだ高度なテキストだ!とか思いましたが

(いい奴状態のブラウニーが)かわいいのでオールOK!

2003年2月18日追記:『このテキストはサブタイトル通りジョークの一つです。という事を断っておかないとアレな人だと思われちゃうよ!』と作者からの要望メールが来たのでサブタイトルを付加しました。ちなみに『ここでわかったよ!』というお便りは作者のFalchionさんまで。今なら先着1名様に素敵な称号(例:友好的なはらわた)が貰えるとかもらえないとか!


チェーンメールは駄目。