first step




「あれ? 一人でいるなんて珍しいですね、アスラン。イザークは?」
 談話室のソファに所在なげに座っているアスランに、やって来たニコルが声をかけた。
「…ちょっとね」
 隣に腰を降ろしたニコルに苦笑めいた笑みを向けながらやんわりと話を逸らそうとすると、続いて姿をみせたラスティが話を引き戻す。
「てゆーか、アスラン最近一人でいること多くない? イザークと喧嘩でもした?」
 ニコルの反対隣に座って反応を窺うように顔を覗き込むラスティに舌打ちしたい気持ちを押さえつつ、アスランは短く答えを返す。
「…いや」
「ま、喧嘩したならしたで、すぐわかるんだけどね。イザーク、当たり構わず怒鳴り散らすから」
 最後に現れたディアッカがソファの背もたれに腰を掛ける。
「それにしては元気ないですよね、アスラン。でも、ラスティが言うように、夕食後とか最近一人でいることが多いですよね。どうかしたんですか?」
 ニコルが心配そうに顔を覗き込んでくる。
「……………」
 妙に聡い同期達に問い詰められて返答に困ったアスランは、曖昧な笑みを浮かべながらさり気なく視線を伏せた。答えたくないという暗黙の意思表示だが、それで解放してくれるほど甘い彼らではない。
「で? どうしたのよ?」
 重ねてディアッカに問い詰められ、アスランは溜息を一つ吐くとしぶしぶ口を開いた。
「―――本当になんでもないんだ。…今、イザークがシャワー使ってるから、なんとなく部屋に居難いだけで…」
「へー、そうなのか」
「それはまあ、お気の毒に」
「?」
 アスランの言葉ですぐさま事情を察したディアッカとラスティは、互いに顔を見合わせるとニヤリとした笑みを浮かべた。わからないニコルは首を傾げてそんな二人を眺める。
「イザークのことだから、シャワー浴びた後、アンダー姿かなんかでうろうろしてんだろ? 好きな女の子に目の前でそんな無防備な格好をされちゃ、きっついよなー」
「アスランもよく我慢してると思うよ。同じ男として、ほんと尊敬する」
 さも気の毒そうな顔のディアッカとラスティが交互にアスランの肩を叩いて慰めるが、声に笑いが滲み出ているのは隠しようもない。
「…お前達、楽しんでないか?」
「まさか! 同期の切実な悩みを楽しむだなんて、そんな非人間的なことをするはずがないっしょ?」
「そうそう」
 どう好意的に見ても面白がっているようにしか見えない同期達にアスランは眉を顰めた。
「つーか、アスラン。お前、まだイザークに手ぇ出してなかったのね」
 しみじみとディアッカに呟かれ、アスランは苛立たしげに吐き捨てた。
「出せるわけがないだろうっ!」
 いつも上手く本心を隠すアスランの口から思わず零れた本音に、彼が相当に詰まっていることが窺い知れる。
 優等生然とした上辺と反して結構狡猾な部分のあるアスランのこと、奥手なイザークをうまく騙して男女の仲に持っていくことなど簡単だったろう。それをせずにいるのは、本当にイザークのことを大切に思っているからに違いはない。
 健康な少年が好きな女の子と同室で手も出せずにいることの辛さは同じ男としてよくわかるだけに、アスランの忍耐力の強さには正直感心せざるを得ないが、そう簡単にできあがられても面白くないのも事実で。アスランに同情しつつも、かといって協力してやれるかといえば微妙なところだ。
「…お前も苦労してんだな、アスラン」
 しみじみとラスティに呟かれ、アスランがまた溜息を吐く。
「そう思っているんなら、いい加減からかうのはやめてくれ」
「んー。それとこれとは別問題っしょ? だって、俺達の大切な娯楽なワケだし?」
「そうそう。なんだかんだ言って、イザークを独り占めしてるんだから、これくらいの嫌がらせは受けてもらわなくっちゃ」
「そういうことですね」
 さっきまでの同情的な雰囲気はどこえやら。小姑モード全開の彼らに、流石のアスランもぷちっと切れそうになる。
「――お前ら…」
 こめかみを引き攣らせながら低く呟いたアスランが反撃しようと口を開きかけた時、突然名を呼ばれた。
「アスランっ!」
 驚いて顔を向けると、不機嫌さ丸出しのイザークが入口に立っていた。
「貴様、また部屋を抜け出して! そんなに俺と一緒にいるのが嫌なのかっ!?」
 肩を怒らせながらずかずかと中に入ってくるイザークに、アスランを筆頭にラスティもディアッカもニコルも唖然と彼女を見つめた。
 アスランがいなかったため、恐らくバスルームから出てすぐにここに来たのだろう。あろうことかイザークは、支給されたアンダー姿――Tシャツに単パンという軽装すぎる格好をしていた。
 白皙の頬は湯上りでほんのりと薄紅色に染まり、水分を含んで少し色濃くなった銀色の髪が小顔を強調するようにフェイスラインにしっとりと張り付いていて、なんとも艶かしい。単パンから覗くすんなりと伸びた細い足は思わず触れたくなるほどの脚線美で、視線を剥すのも一苦労だ。それよりも問題なのは、Tシャツ越しに微かに隆起が窺える胸元で、いつも胸元を隠すために着用しているコルセットタイプのベストを身に着けていないことは明らかだった。
 こんな危ない格好でここまでやって来たのかと思うと、その無自覚な行動にアスラン以下全員が頭を抱えた。
「――アスラン。頼むからあいつに自覚させてやってくれ」
「ほんと、マジ危ないから」
「ええ、ここまで無防備だと危険すぎますね」
「…ああ」
 ぼそぼそと四人で小声で話しているのを聞き咎めたイザークが眉をつり上げる。
「貴様ら、何をこそこそ話している!」
「…わかったから、イザーク。部屋にもどろう」
 ソファから立ち上がったアスランが、手早く上着を脱ぐとイザークの肩に掛けた。
「なんだこれは、いらん」
 嫌がって脱ごうとするのを、アスランがいつになく強い調子で止める。
「ダメだよ。湯冷めしたら大変だ」
「…っ」
 ムキになって睨みつける蒼氷の瞳を真っ直ぐに見つめると、気圧されたかのように目が逸らされた。言い負かされて悔しいのか薄紅く染まった目尻が色香を漂わせていて、アスランは眩暈がしそうだった。
「行こう」
 これ以上危ういイザークの姿を自分以外の目に晒させたくなくてそっと肩を抱いて促すと、イザークも素直に従って歩き出す。ちらりと横目でディアッカ達を見やると、上手くやれよというかのように手をひらひら振って送り出していて、アスランは彼らの激励に苦笑して返すと彼女をエスコートするようにその場を後にした。



 部屋へ戻ると、それまで大人しくしていたイザークが早速噛み付いてきた。
「さっきは何なんだ、一体!」
「イザーク。頼むから、そんな格好で部屋の外をうろつかないでくれ。何かあったらと思うと心配でたまらない」
「何があるっていうんだ!? そもそも、貴様がいつも部屋を抜け出すのが悪いんじゃないか!」
 イザークの主張にアスランは溜息を吐きながら答える。
「俺だって、好きで部屋を抜け出すんじゃないよ。それもこれもみんなイザークのせいなんだからね」
「私のせい? 人に責任を擦り付ける気かっ!?」
「…あのね」
 頭痛でもするかのようにこめかみを指で押さえたアスランは、ちらりと横目でイザークを見据えた。
「口で言ってもわからなければ、態度で示すしかないかな」
「?」
 突然イザークの腕を引いたアスランは、そのまま彼女の身体をベッドの上へ転がした。
「っ!?」
 イザークが起き上がるより早く彼女の身体の上に伸し掛かったアスランは、巧みに腕と足を押さえて抵抗を封じる。
「何をするっ!」
 突然の暴挙に怒りの滲んだ蒼氷の瞳で睨みつけると、表情を消した翡翠色の双眸がイザークを見下ろした。
「イザークは、俺が男だってわかってる?」
 押し殺したような声音で見下ろすアスランの瞳の奥に獰猛な何かを感じ、イザークはぞくりと肌が粟立った。
「な、何を今更。当然だろう」
 知らず震えそうになる声を必死で押し隠したイザークが、自らを奮い立たせるように声を張り上げる。
「いや、わかってないね。わかっていればこんな無防備な格好で俺の前をうろついたりしないよ」
 そう言って、剥き出しの白い太腿を撫で上げれば、彼女の身体がビクンと震えた。
「やっ…!」
「あんまり挑発がすぎると、俺も我慢できなくなるよ?」
「ちょ、挑発なんか…、してな…っ!」
 耳朶に唇を落とされ、イザークは身を竦ませる。
「イザークにそのつもりがなくても、端から見ればそうは見えないんだよ。男の中に女の子が一人でいるってことちゃんと自覚してもわらないと、心配ばかりしてこっちの神経が擦り切れそうだ」
「――――だから、嫌になったのか?」
 顔を背けたイザークがぽつりと呟いた。
「?」
「こんな私と同じ部屋にいるのも嫌だから、少しでも顔を合わせないように部屋を抜け出すのか?」
 とんでもないことを言い出したイザークにアスランは眉を顰めた。
「あのね、イザーク」
 苛立たしげに背けた彼女の顔を上げさせようとして、蒼氷の瞳に涙が浮かんでいるのに気付き、愕然とする。
「だったら、こんな回りくどいことをせずに、直接私にそう言えばいいんだ。……何も言われなければ、嫌われたことにも気付かないじゃないかっ!」
 言葉を紡ぐうちに感情が昂ぶってきたのか、瞳からは涙が溢れ出し、語尾も震えている。
 静かに涙を零すイザークを茫然と見下ろしていたアスランは、はっと我に返ると焦ったように言い募った。
「ご、誤解だよっ! 俺がイザークを嫌いになっただなんて、そんなこと絶対にないから!」
「だったら、なんで毎日、私がシャワーを浴びている時を狙って部屋を抜け出すんだ!?」
 濡れた瞳で睨み上げれば、バツが悪そうな顔をしたアスランが言いにくそうに口を開いた。
「―――イザークがシャワーの後、そんな格好で俺の前をうろつくから…」
「?」
「…我慢できずにイザークのこと襲ってしまいそうになるから、だから逃げていたんだ!」
 自棄になったように一気に捲し立てたアスランを信じられない思いで見つめたイザークは、恥ずかしいのだろう顔を赤らめて視線を逸らすその仕種に、そっと安堵の笑みを浮かべた。
「……よかった」
 蒼氷の瞳を潤ませながら安心したように微笑むイザークに、アスランはよかれと思ってとっていた自分の行動が彼女を不安にさせていたことに気付き、胸が痛んだ。
「ごめん、イザーク」
 目尻に溜まった滴を指で拭い愛おしげにキスを落とせば、甘えるように伸ばされたイザークの腕が首に巻きつき、アスランも華奢な背中に腕を回して細腰を引き寄せた。円やかな柔らかさには欠けるものの、ほどよく鍛えられた身体はしなやかで、アスランの腕の中にすっぽりと収まる。首筋に顔を埋めれば、ほんのりとシャンプーの良い香りが鼻腔を擽って、彼の鼓動を跳ね上げた。
 ずっと逃げていたからこんなふうに身体を触れ合わせたのは久しぶりのことで、恋人の温もりを感じて幸せな気分に浸りながらも、それだけに密着しすぎた若い身体が少々やばい状況に陥り始め、思わず腰が引け気味になる。
「あ、あの…イザーク。…ちょっと腕を離してくれないかな?」
「何故だ?」
「いや、あの、えっとね…」
 言いよどむアスランにイザークが誤解したのは明白で、綺麗な顔が悲しげに曇るのを見て焦った彼は、己が至らなさを曝け出すようでバツが悪かったが、ここで正直に言わなければ拗れるだけだと腹を括った。
「―――えっと、つまり。……こういうことだから」
 再度身体を密着させれば、腰のあたりにアスランの熱を感じたイザークが微かに身を強ばらせる。耳まで真っ赤にさせた顔で見上げると、弱ったような顔をしたアスランがゆっくり上体を起こそうとしていて、反射的にイザークは腕を伸ばした。
「ちょ…っ、イザーク。まずいって!」
 焦って身を引こうとするのを許さずにイザークが縋る。
「――-から…」
「イザーク?」
「――構わない、から…」
 その言葉にアスランは目を瞠った。
「自分が何を言ってるか、わかってる?」
 少し意地悪く訊ねると、伏せた目蓋を震わせながら頷いたイザークは、そのまま肩口に顔を埋めた。降って湧いたような展開に、アスランは一瞬頭の中が真っ白になる。
「――本当にいいの…? 途中で怖くなっても、止めてあげられないかもしれないよ?」
 それでもアスランが重ねて訊ねると、イザークは黙って頷いた。
「…イザーク」
 顔を見せるように促せば、のろのろと向けられた白皙の頬は薔薇色に染まっていた。
「本当にいいんだね?」
「……しつこいぞ。…この、腰抜けっ!」
 照れ隠しのその言い方があまりにもらしくて、アスランは小さく笑った。つられてイザークの頬にも笑みが浮かぶ。その笑顔が真剣な眼差しに変わって、自分を見つめる真摯な光に絡めとられたかのようにイザークは身動きできなくなる。
「イザーク…」
 スローモーションのようにゆっくりとアスランの顔が近づいてきて、堪えきれずにイザークが瞳を閉じる。あと数ミリで唇が重なるその瞬間、無粋なブザー音が鳴り響いた。
「…!」
 はっと瞳を開ければ、殆ど重なるほど近くに恋人の顔があって、二人は顔を真っ赤にしながらぱっと身を離した。
「ったく。誰だ、一体!」
 尚も鳴り続けるブザーに、折角のチャンスを潰されたアスランが苛立ちも露にドアへ向かった。
「はい」
 パネルを操作してドアを開けば、そこに現れたのは今一番会いたくない悪友達の姿だった。
「ひょっとしてお邪魔だったかな?」
 声を潜めて耳打ちされ、機嫌の悪さを隠さずに睨みつけるアスランを宥めるようにディアッカが言った。
「そんな怖い顔しなくたっていーだろ。折角忘れ物届けにきてやったんだから」
「忘れ物?」
 身に覚えのないアスランは首を傾げた。
「そ。こんな大切なヤツ忘れちゃダメだろ?」
 にっこり笑ったラスティが紙袋をアスランに押し付ける。つい受け取ってしまったアスランがそれを戻そうとするより早く、ニコルが笑顔で暇を告げる。
「それじゃ、お邪魔しました〜。また明日v」
 手を小さく振りながら扉の向こうに消える彼らを半ば茫然と見送ったアスランは、手渡された紙袋を胡散臭げに見下ろした。
 大きさからして雑誌の類が入っているようだが嫌な予感がしたアスランは、こっそり中を盗み見て、自分の勘の正しさを思い知る羽目になる。まったくとんでもないものをよこしてくれたものだと憤ってみても、もう遅い。とにかく絶対にイザークには見せられないと、さり気なく机の中にしまおうとして当の本人に見咎められた。
「何だそれ?」
「忘れ物って言ってたけど、身に覚えがない」
「大切なものとか言ってなかったか? そもそも、身に覚えがないものを受け取るのか? お前は」
 返される正論にアスランは困ったような笑みを浮かべた。
「…うん。だから、明日返そうと思って」
「見せてみろ」
「え?」
 ふいに告げられた言葉にアスランは凍りついた。
「あいつらが持ってきて、アスランに身に覚えがないなら、私のものかもしれないだろう?」
 イザークに他意がないのはよくわかるが、かといって彼女にとても見せられるものではない。
「いや、イザークのじゃないから」 「何故そんなことがわかる?」
「えっと…」
 返答に詰まったアスランにイザークの瞳が顰められる。
「私に見せられないようなものなのか?」
「いや、そんなことは」
「じゃあ、見せてみろ」
 何時の間にか真正面に立っていたイザークが腕を伸ばすのを反射的に躱してしまったアスランは、まずいと顔を顰めた。これでは何かありますと自分で白状しているようなもので、案の定イザークは疑わしそうな視線をアスランに向けた。
「見せろ」
「嫌だ」
「貴様…」
 イザークが柳眉をつり上げるが、アスランも今更後に引けない。しかし、ここは何が何でも死守しなければと身構えた途端、ふいにイザークが顔を背けた。
「……そんなに見せたくないんなら、もういい」
 拗ねたように呟いたかと思うと、顔ばかりか身体まで背けられてアスランは慌てた。さっきまでの甘い雰囲気が欠片もなくなったばかりか、逆に不機嫌さ丸出しになったイザークを何とかなだめようとしたアスランは、諸悪の根源の紙袋を邪魔だとばかりに無造作に机の上に放り投げた。
 ばさっと案外に大きな音がしたが、既に意識はイザークの上にあるアスランは気にも止めない。背を向けてしまったイザークの両肩に手を置いて自分の方に振り向かせると、早速機嫌を損ねた恋人を宥めに取り掛かる。
「イザーク、あれはディアッカ達が勘違いして押し付けていっただけで、君が気にするようなものではないんだ」
「―――なるほど。私に見せたくないはずだな。これはまた随分と大切なものだ」
「イザーク?」
 彼女の瞳が自分を見ていないことに気付いたアスランは、その視線の先を追うように振り返った瞬間、硬直した。
「…!!!」
 床の上には挑発的なポーズを取った水着姿の女性達の写真が載った所謂グラビア雑誌が散乱していた。机の上に投げておいたはずが、どうやら角に当たったかなにかで床に落ちてしまったらしい。
 冷ややかな視線を向けるイザークに焦りまくったアスランは、しどろもどろに言い訳を始める。
「イ、イザーク。あれはディアッカ達の悪ふざけで、見れば君が不快な思いをすると思って……」
「―――ディアッカ達の、ね…」
 低く呟かれた声に、アスランは何度も頷いた。
「そう。まったく、悪ふざけにも程がある。明日、早速叩き返すから」
「ならば、何故今すぐ返しに行かない? 一晩、手元に置いておきたい理由でも何かあるのか?」
 にっこりと、それはそれは美しい完璧な笑顔を向けられたアスランの背中を冷や汗が伝う。優美な微笑みを浮かべながらも、その蒼氷の瞳は笑っていなかったから。
「―――今すぐ返しに行ってきます!」
 素早く床に散らばった雑誌を掻き集めるとアスランは入口に向かった。
「アスラン」
「何?」
 扉を開けて部屋を出ようとしたところで呼び止められ、振り返ったアスランに歩み寄ってきたイザークは、優雅な仕種で彼の肩に手を掛ける。ひょっとして機嫌が直ったのかと淡い期待を胸に抱いて顔を綻ばせたアスランは、次の瞬間、形の良い唇から吐き出された言葉に奈落の底に突き落とされた。
「しばらく帰ってこなくていいから」
 氷の微笑を浮かべたイザークに肩を押され、部屋の外へ押し出されたアスランの目の前で、無情にも扉が閉ざされる。
「イ、イザークっ!?」
 ようやく我に返ったアスランが扉を壊れんばかりに叩いても何の応答もなく、栄えあるアカデミーの首席は、グラビア雑誌を抱えながら茫然とその場に立ち尽くした。
「―――うそだろ…」
 急転直下の展開に、途方に暮れた呟きは廊下に虚しく響くだけで。
 騒ぎを聞きつけた元凶の三人組が、顔を見合わせて勝利の笑顔を浮かべあっていたことは言うまでもない。





          END





どうやら、とことんアスランをイジメぬきたいようで(笑)
だって、楽しいし!!
やっぱりイザを泣かせた代償は、それなりに払って頂かなくては、ねえ?(黒笑)

アンケートにご協力頂いた皆様、本当にありがとうございました。
長らくお待たせしてしまって、本当に申し訳ございませんm(__;)m
漸くお届けできてほっとしております。
とはいえ、こんなんで御礼になるのか、甚だ不安な瀬川です(汗)
色っぽい展開をご期待された方はごめんなさい〜;
ほら、障害があればあるほど恋は燃えるものだし!(かなりチガウ;)
少しでもお楽しみいただけたら嬉しいんですが……;
ダ、ダメですか?(滝汗)