―――――今度は、わたしが彼を守る……そう誓った。



 新型モビルスーツの集中攻撃を受けていたティエリアは、何者かの砲撃で窮地を救われたことに気付いた。モニターに映る機影を見て、愕然とする。
「GNアーマー? …っ! ロックオン・ストラトス!」
 宙域の敵を粒子ビームで破壊したロックオンから通信が入る。
「このまま対艦攻撃に移行する」
「ロックオン! そんな身体で」
 ドアをロックしたくらいで、彼を閉じ込めておけないことはわかっていた。それでも、頼むから大人しくしていて欲しかった。
 守ると誓った彼に逆に助けられるなんて…っ!
「気遣い感謝するよ。だがな、今は戦う!」
 鋭いまなざしに、固い決意を秘めた声音に、ティエリアはもう誰も彼を止められないことを悟った。
「―――ロックオン……」
「そんな顔しなさんなって。大丈夫。一気に本丸を落としてくるさ」
「……無事で還ってくると、約束してください。必ず生き残る、と……」
「―――いつか聞いた台詞だな…」
 ロックオンの口元に苦笑が滲んだ。
 タクラマカン砂漠での三国家群との戦闘の時、死に急ぎそうなティエリアにロックオンは「死ぬな」と告げた。それに対してティエリアは生き残ると約束したのだ。
 けれど、あの時のティエリアはまだ生き残るという概念がまだ薄かったように思う。計画完遂のためには自らの犠牲も問わない、そんなところがあった。すべてはヴェーダの計画のままに、己が命すら簡単に奉げていただろう。
 だが、今は。ティエリアはヴェーダの呪縛から逃れ、自分の足で立つことを覚えた。誰の束縛も干渉も受けずに自らの意思で行動することを知ったティエリアは、生き残ることの意味も意義にも気付いたはず。だからこそ、自分にも「生き残れ」と言ったのだろう。
「……心配すんな。生きて還るさ。だからティエリア、トレミーのみんなを守ってくれ。頼むぜ」
 ロックオンの言葉に、ティエリアは力強く頷いた。
「わかりました」
 その応えにロックオンが満足げに笑う。そのひどく満ち足りた透明な笑みに、何故かティエリアの心臓がドクン、と嫌な鼓動を打った。
 ―――ロックオン…?
「じゃあな。後はまかせたぜ」
 敵艦隊が駐留する方向へ向かって行くデュナメスの機影を見送っていたティエリアは、ふいに襲ってきた胸騒ぎに眉を顰めた。このままロックオンを行かせてはいけないと、頭の片隅で警鐘が鳴る。けれど、プトレマイオスを頼むとロックオンに言われた以上、彼の後を追いかけるわけにはいかなかった。
 どうか無事に還ってきてくれ、ロックオン…!
 祈るような思いで宙を見つめていたティエリアの耳に、敵機が近付いてきたことを告げるアラーム音が届く。
「ち…っ」
 素早くモニターで敵機の位置を確認したティエリアは、操縦桿を握り直し敵を迎え撃つ準備を整えた。
 必ず、守る…!
 強く心に念じて、ティエリアは襲いくる白いモビルスーツに向かって行った。