嫁の実力?

うちの嫁は天然ボケで有名である。

 

 

私と結婚する前は広島の百貨店で婦人服を販売していた。

 

 

嫁がテナント社員として勤務していたブランドの服は

 

広島では結構人気があったらしく、

 

その勤務していたフロアの中でもよく売れていたらしい。

 

 

 

 

冬のコートフェアが始まった。

 

 

コートフェアの開催期間中、

 

コートを購入してくれたお客さんにノベルティとして、

 

そのブランドのロゴが入ったかわいいカサを配ることになった。

 

 

 

購入を迷うお客さんにとっては、

 

迷いを吹っ切るキッカケとなるし、

 

販売する側にして見れば、

 

ノルマがきついこの期間中ならではの切り札でもあった。

 

 

 

 

ひと通りの商品説明をして手応えを感じたら、

 

最後の最後にこう切り出すのである。

 

 

 

「お客様。今はコートフェアの期間中でございますので、

 

コートをお買い上げくださいますと、

 

漏れなくこちらのかわいいノベルティを差し上げております」

 

 

 

お客さんは面白いようにこのひと言でコロッと落ちていったそうだ。

 

 

 

 

 

嫁はすっかり調子に乗り、

 

ガンガン売上を伸ばしていった。

 

 

 

 

 

 

そして、その冬のコートフェアも終わりに近づいた頃である。

 

 

 

接客も佳境に差し掛かった時、

 

いつもの切り札を出す時が来た。

 

 

 

嫁「お客様。ただ今、こちらのコートをお買い上げくださいますと、

 

ペナルティを差し上げております」

 

 

 

客「え?ペナルティがあるんですか?」

 

 

 

嫁「はい!お買い上げのお客様全員に漏れなく…

 

 

 

 

 

なぜか手応えを感じたらしい。

 

 

 

 

 

客「(笑いながら)それはどんなペナルティなんです?」

 

 

嫁「??????」

 

 

 

 

店長であるB場さんの、

 

「池ちゃんのおバカ!

 

お客様に罰ゲームしてどうすんのよ!

 

ペナルティじゃなくてノベルティでしょ!」

 

の言葉で我に返った。

 

 

 

 

お客さんはあんまりのバカバカしさに大爆笑し、

 

「さぁ、やってもらおうじゃないの」

 

と言いながら財布からカードを出した。

 

 

 

自分のとんでもない勘違いに、

 

嫁は顔を真っ赤にしながらも何とかその場を取り繕い

 

まんまと10万円のコートを1着売ってしまったのである。

 

 

 

 

 

その夜、嫁が私に電話をかけてきてひと言。

 

 

「もしかしたら私って、結構、実力があるんかもねぇ?」

 

 

 

 

 

 

まだ勘違いは終わっていなかった。

 

 

 

果てしない天然ボケである。