K倉さん その1
手術の翌日、361号室のルームメイトであり、
すっかり私のマブダチでもあるK倉さんが、
私のいる回復室のすぐ外に立って中を覗き込んでいた。
(家族以外入ることができないため)
ベッドに横たわる私を見つけたK倉さんが右手を挙げてこう言った。
K倉「おう!元気か!」
私「お蔭様で…」
K「頑張れよ!」
私「はい!ありがとうございます」
短い、本当にこれだけの短い会話だった。
私はラッキーにも良性の腫瘍だったため、手術をすれば後は完治を待つだけ。
K倉さんは、私よりも後に大手術を控えており、
昨日も、
今日も、
明日も、
明後日も、
これからも、
まだまだ先の長い大きな肺の病気と闘っていかなければならないのである。
そんなK倉さんが、わざわざ私ごときを訪ねて来て声を掛けてくれ、
「頑張れ」と励ましてくれたのだ。
その心遣いがめちゃくちゃうれしかった。
ドアの外に立っていたK倉さんの優しい表情は一生忘れないだろう。
本当にいいじいちゃんだ。
ぜひとも長生きして欲しい。