ＨＧＥＮＪＩ

私はＨＧＥＮＪＩが大嫌いだ。

彼らはガキのクセに生意気過ぎる。

市立体育館でＨＧＥＮＪＩのコンサートがあった。

私はＨＧＥＮＪＩとＪニーズＪｒ．の連中のために

寝ず番をすることになった。

この寝ず番とは、

例えばＣェッカーズやＪニーズ事務所の人気タレントがホテルに宿泊する際、

１フロアを貸し切りにしてもらうのだが、

そのフロアのエレベーター前でファンが入って来ようとするのを追い返したり、

外で飲んで帰って来たメンバーに

ドリンクやカップラーメンを渡したりする仕事である。

早い話が何でも言うことを聞くパシリである。

その夜。

夜と言っても真夜中である。

午前３時頃。

ＨＧＥＮＪＩのＡ坂クンが、

ある車の雑誌が欲しいと言い始めた。

さすがにマネージャーさんも気がとがめたらしく、

翌日にするよう促したが、

「どうしても今晩読みたい」と言って聞かなかったらしい。

免許もない子供のクセに…と思いながらも、

そこはそれアルバイトのつらいところ。

私はすぐに市内のコンビニを駆け巡ることになった。

その雑誌は結構人気があるのにコンビニにしか置いておらず、

毎月あっという間に売り切れてしまうらしい。

発売当日の夜なのに、

本当に売り切れていてどのコンビニにも置いていないのである。

結局、市内のコンビニを１０件ほど回っても見つからず、

１時間半後、

市外のコンビニでやっとのことでその本を見つけてホテルに戻り、

Ａ坂クンに渡しに行った。

すると、

「あ、それ？やっぱりいいや。

買って来たの？

じゃ君たちが読めば？

やるよ」

これには、さすがに私も

「コイツ、ぶっ殺したろうか」と思った。

まぁ、落ち着け。

相手はアイドルとは言え、所詮は子供。

あんな連中に負けてなるもんか。

ぐっとこらえて朝を迎えた。

その日はＨＧＥＮＪＩのメンバーを空港に送って終わりである。

私は空港に先回りして、

アルバイトの後輩にファンの女の子達の整理をするよう指示した。

そして、ある通路を指し、

「ここから先は絶対に入って来させないように」

と厳重に言っておいた。

にもかかわらず…。

いざ、ＨＧＥＮＪＩのアンポンタン連中が空港に到着すると、

すぐにファンが大騒ぎし始め、

突破されてはならない例の通路を

いとも簡単に突破されてしまったのである。

トランシーバーで、後輩から

「あげはらさん、すんませ〜ん！

突破されてしまいましたぁ！」

と連絡が入った。

「すんませ〜ん」ではすまん。

めちゃめちゃ焦ったのは私である。

ファンが押しかけるまでに、

このドアさえ無事にメンバーが通り抜けてくれれば…と思っていた矢先、

メンバーとファンがバッタリ出食わしてしまったのである。

ピーンチ！

メンバーが、

「お前さぁ、仕切りはどーなってんだよー！」

と偉そうに怒ってくる。

クソガキがー！と思いながらも、ぐっと我慢して、

「申し訳ございません。私の指示不足です」

と謝り続けた。

そして、最後にＭ星のドアホ（あえてこう呼ぶ）が私に言った。

「テメェ、何年この仕事やってんだよ！

この、ばぁ〜か！」

思わず一歩前に出そうになったが、

遅れて走って来た後輩が私を制した。

「まぁまぁあげはらさん。

こういう時もありますって」

お前が言うなーっ！

お前のせいで、俺は…俺は…。

俺はＭ星のファックユーガバメント野郎に

「ばぁ〜か！」て言われてしもたんやぞー！

間もなく飛行機が飛び立ち、

神様にひたすら墜落することを願ったが落ちることはなかった。

が、その１年後、

ポテチン連中の人気が急降下したので、

まぁ、許してやることにする。

ただし！Ｍ星だけは絶対に許さん！