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★ 拍手する場面がおとずれて、とってもビックリしました!

キーワード: ゴンゴン

10月某日の月曜日。今日から本格的に学期が始まるというので、いつもより早めに大学に行ってみる。2週間前は閑散としていたキャンパスも、先週から急に学生だらけになったのであった。前もって入手していた授業の予定表によると、(我らが)K教授の授業は月曜日にもあり、それに出席してみようと気合を入れて大学に来たのであった。しかし、いざ大学に来てみると授業があるような雰囲気はまるでなく、よくよく聞いてみると今日はオリエンテーションの日であって、授業はないとのこと。確かに(日本でいう)学部生相手に初日から授業だと思ってしまったのは、かなりのフライングだったようだ。それでも中国人の講師Zさんと色々話しているうちに 「全員の教授の顔が見れるいいチャンスだから行ってみたら」 と勧められ、3回生(こちらでは半年ごとの学期で数えるので5ゼメスター生という)のオリエンテーションに潜り込んでみることにしたのだった。大教室の前方に教授の方々が陣取り、多くの学生達(ほとんどドイツ人)、その中にポツンと私、そんな状況の中でオリエンテーションは始まった。どうやら全ての教授が一人一人登場して自分の授業やゼミの紹介をするという形式のようである。一人目の教授が出てきて、冗談をとばしながら学生達に色々語りかけている。学生達も真剣に聞きながら、時々ザーッと笑いが起こったりする。当然、私はその笑いにはついていけない(残念!)。『それでも、教室の雰囲気を知るには出席してみてよかったな』 と思ったりしているうちに、はやくも一人目の教授の話が終わったようである。しかし、その瞬間、大変な事が起こってしまった。ある学生が拳で机を叩き始めたのである!ゴンゴンゴン!私は 『何事だ!』 と思った。落ち着きのない小学生か、はたまた不良の高校生の行動か、教授が挨拶を終えたその瞬間に、事もあろうか机をゴンゴンたたき始めてしまった。しかし、本当に驚愕したのはこの後のことであった。このゴンゴンと机を叩いた彼に従うかの様に、学生全員が拳で机を叩き出したのである。ゴンゴンゴンゴンゴン・・・。さっきまで、冗談などに笑っていた学生達が、教授に反旗をひるがえしたのか、何か教授が言ってはいけない事を言ってしまってブーイングを受けてしまったのか、一瞬暴動が起こったのかと思うほどの音が教室中に響き渡った。それでも、私はすぐに落ち着きを取り戻す事ができた。なぜなら、話を終えた教授は学生全員が机を叩く姿を見て、笑顔で席に戻っていったからである。『一体これは何なんだ?』 もしかしたら冗談が面白かった事への賞賛の表現なのか。結局、びっくりしている私をよそに(私と話をした教授以外の)会場の全員が机をゴンゴン叩いたわけである。この机をゴンゴンと叩く行動は2人目の教授、3人目の教授に対しても同様に行われた。あまり冗談も言わなかったし、『そんなにウケてなかったのに』 と思ったが、どうやらこれは冗談が面白い事に対する対する賞賛ではなく、通常の拍手の代わりの行動であるようだ。しかし、あまりの衝撃で、とても他の学生に混じって机をゴンゴン拳で叩く気にはなれなかった。が、その何人か後、(私の研究室の!)K教授が挨拶を終えた時には、私は一生懸命に机をゴンゴンゴンと叩くのであった。これが私の人生における机「初」ゴンゴンの瞬間であった。
後から聞いてみると、やはり拳で机を叩くという動作は拍手の代わりという事であった。特に、大学等のアカデミックな場所では普通に行われるそうである。確かに、Regensburg大学でも通常の授業やセミナー等の終了時には必ずゴンゴンゴン・・・という音が聞かれる。授業の度に、知識を伝達してくれる教授に対して敬意を払い、そして感謝の拍手(ゴンゴン)を贈る。私の瞳には、ドイツならではの非常に素晴らしい光景として映ったのであった。

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