「自立にむけて」 

  


 点滴と流動食のみ、体を動かすこともわずかで筋肉もやせ細り、骨と皮だけと言って

もいいほどでした。食事を口から摂ることは、口の動き、舌の動き、味覚など色々な筋

肉の動きや刺激等が脳を刺激し、体力もつけてくれるということで早く始めたい治療で

した。

 

 事故後9ヶ月ぶりに普通の食事が摂れるようになって喜んでみたものの、自分で食事

が出来るわけでもなく、食べさせてもらわなければなりません。介助する方としては、

つい速く食べさせたいという気持ちが働くし、介助してもらう方としては、自分のペー

スで、好きなものを好きな順に好きなだけ食べたいのに、と思っているだろうと考える

と、とにかく、少しでも自分で食べることが出来るようになるにはどうしたら良いか、

試行錯誤を始めました。


食べ物を口へ

 右上肢に著しい障害が残り、物を持つ(握る)事もできないので左手に頼るしかありま

せん。左上肢にも障害があって、物を持つ(握る)事はできても緊張があり思うようにな

かなか動きません。

 しかし、食欲というものはすごいもので、棒つきの飴、チョコレートを握らせると一

生懸命口に持っていくいきます。早速スプーンとフォークを握らせました。

 

<フォークとスプーンのくふう>

 

フォーク  持つ位置が固定していなくても刺せるので、柄が少し太い普通のフォーク

      を使いました。

 

スプーン  スポンジで柄を太くして、スプーンの先を少し内側に曲げたものを用意

      しました。

 

 手首の動きが悪いのと、緊張がまだ残っているのとで、自分ではフォークにおかずを

刺したり、スプーンでご飯をすくうことはできませんでした。それでも、フォークでお

かずを刺してやったり、スプーンでご飯や刺して食べれないおかずをすくってやれば、

なんとか口に運んで食べることができるようになりました。

 

食べ物をすくう

 自分でフォークを使っておかずを刺すことは少しづつできるようになりましたが、ス

プーンをうまく使ってご飯やおかずをすくうことはなかなかできません。

 

<食器と食器の滑り止めのくふう>

 

  食器の裏にすべり止め加工がして

 あります。手前が浅くなっているの

 ですくい易いです。

 

  

 

 

 

 

 

 

 慣れれば普通の食器で充分です。スープ皿や小鉢が便利です。

(この時は滑り止めマットが

                   必要です。)

 

 

 

 

滑り止めマット

 

        

   食器の裏につけて使います。        マットの上に食器を載せれば

  食器の数だけ必要ですが、外出       滑りません。厚手でかさばるの

  する時にはかさばらなくて便利       自宅用です。

  です。

 

             

               かわいい滑り止めマットが、100円ショップで売って

       いたそうです。外出用に使っています。

                

<作業療法による訓練>

  皿に入れたビーズを、手前から皿のすみをうまく使って掬う訓練を始めました。  

 

 おかずが飛んでいったり、ご飯がこぼれたりで時間がかかり食事を摂るのが大変で

すが、訓練と食器、滑り止めの工夫で、自分のペースで食べたいものから順に食べれる

ことで、本人も介護する方も精神的に楽になりました。

 

 

使いやすい食事道具でこぼさないように

    

<スプーンのくふう>

    

スポンジの部分がなくても握れるように

りましたが、握る位置が微妙に違うと食

べにくい時がありました。 

親指の位置を固定して何時でも

同じ位置で握れるように工夫し

てもらいました。  

                      

 緊張が少しずつとれてきたことと、毎日食事をとることがリハビリにつながり、手首

の動きがよくなりました。そのお陰でご飯をこぼす量が減り、フォークで刺し難いおか

ずをうまくすくうことができるようになりました。

 

   

 スプーンを握ってすくって食べると前かがみになって、

食べる姿勢が悪いので、握る部分を付けてもらいました。

食べやすく姿勢もよくなったようなきがします。    

     

 

日本人らしく箸を使って

   食べ易いフォークとスプーンを使い、食べ物も食べ易い大きさ、形にしたり、食器

を選ぶことで一人で食事をすることができるようになり、これまでになればいいと思っ

ていました。

 ところが、「日本人である以上、普通に箸を使って食べるのが、ごく自然だから箸を

使って食べるのに挑戦しましょう。」と指導員の先生の一言です。

 「ご飯はやっぱりお箸で食べなくっちゃね。柔らかめに炊いて小さい団子にしてき

てね。」と特訓が始まりました。

 

<箸のくふう>

    

 ”らくらく箸”に握るところを付けてもらいました。

 すこし使ってみましたが、はさんだ時に力が入りすぎたりして箸の先が

 合わなくてうまくおかすがはさめませんでした。

 

     

 ”はさめーる”を作業療法の先生に紹介してもらいました。

 箸の先がぴったり合うので、ご飯もおかずも上手に食べることができるよ

 うになり食事の時間も短くなりました。

 

    

 箸のイメージにちかい”箸蔵くん”に挑戦してみました。

 握るところがないので使いづらそうでしたが、慣れてくると食べやすいよ

うです。

    


 

 

  一生食べさせていかなければならないと思っていたのですが今では

 一人で食べてくれます。

  本人も自分のペースで楽しんで食事をしています。

  これまでになるのに10年かかりました。

  始めは大変ですが、いつの間にか、そこそこできるようになってい

 ました。

 

    ・日常生活が訓練の場であること。

    ・ちょっとした工夫で意外と上達すること。

    ・これが限界だと思はないで次の段階に挑戦してみること。

 

  以上、訓練の先生、授産所の指導員の先生の指導、協力のお陰でこ

 れまでになったことを感謝しています。

   

 

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