函館市西部地区の歴史的環境の自立的維持・再生の方策をさぐる

公益信託大成建設自然・歴史環境基金
平成8年度助成金活動・研究報告書


函館からトラスト事務局


函館市西部地区には歴史的かつ文化的な古建築が数多く点在し、和風、洋風、さらには往時のハイカラな気風を偲ばせる和洋折衷様式の建築物が多く集積している。これらの町並みと周囲の坂道・街路等が緑(函館山)と水辺(港)につつまれて融合しながら、「元町末広町伝統的建造物群保存地区」を核に独特の歴史的文化的環境をつくりだしている。しかし、地域のコミュニティを見ると「老齢化が進み、若い人がだんだんすくなくなる」とか「観光化が進み住みづらくなり人と人のふれあいがだんだん失われていく」、「地域の活気がなくなる」など、伝統的街並みを支える基盤が不安定なものなりつつある側面も大きい。「元町末広町伝統的建造物群保存地区」では建物の外観の修景のようなハードな施策は函館市行政の支援策があるが、伝統的建造物群を支える地域のコミュニティの諸問題のソフトな面や日常の維持にはほとんど対策が用意されていない。
・この事業では西部地区の伝統的建造物群の中のコミュニティの諸問題を住民とともに考えながら、住民や市民が自らの手で街並みの改善・維持や地域の再生をめざす内発的、自立的街並みづくり事業をすすめるものである。


1993年に歴史的環境を守る市民活動から生まれた公益信託「函館色彩まちづくり基金」(別紙資料)は、基金と地域、市民を結ぶ触媒として、独自の運営の仕組みである「函館からトラスト事務局」をもっている。「函館からトラスト事務局」の具体的活動は基金の運営事務やニュースの発行とともに、伝統的建造物の保存・活用、歴史的環境の課題を住民と考えるワークショップの開催やまちづくりウォッチドッグ(まちの動向の監視役)としての展開など、西部地区の伝統的街並みを守り育てていく地域の情報センターとして機能しつつある。
この事業では、「函館からトラスト事務局」が核となり、函館市西部地区の町並みの基調をなす歴史的な下見板建築のペンキ塗り替え、歴史的環境に住みつづけていくうえでの問題を住民とともに考えるワークショップの開催などを通し、行政の参加をえながらも地域の問題を住民、市民ボランティアらの手で主体的に解決していく方法をさぐる。
具体的に行った活動は、以下の項目である。

1)伝統的建造物の下見板壁ペンキ塗り替え活動支援として
●下見板張り町家ペンキ塗りワークショップ−「3軒効果」の町並みづくり−
(1997年8月30,31日)

2)老齢化したコミュニティの維持、再生への課題をさぐるワークショップ、シンポジウムの開催
●路地の光・函館元町31番地
(1996年10月〜1997年3月)
●MGMスペシャルトークショー
(1997年2月8日)

3)伝統的建造物の保存、活用の相談や空き地や路地などの整備活動支援
●コーポラティブここでやらねばどこでやる
(1997年12月)
●弥生町の新市営住宅づくり−西部地区に暮らすルールの提案−
(1997年12月)

4)活動ニュース「から」の発行と地域の情報センターとしての活動
●ニュースレター「からNO.13」の発行(1996年12月)
●ニュースレター「からNO.14」の発行(1997年6月)
●ニュースレター「からNO.15」の発行(1997年12月)


過去3年間の函館色彩まちづくり基金の助成により6件の歴史的建造物の下見板壁ペンキ塗り替えがおこなわれた。それら自体は街並みのなかで個々の小さな化粧直しにすぎないが、建物所有者や周辺への働きかけはけっして小さいものではなかった。取り壊し寸前のものが再度修復され息を吹き返すなど地域の歴史的景観が目に見えて改善できることが実感としてわかってきている。なによりも老齢化し、元気を失いつつある住民にペンキ塗り替えの若いボランティアが参加した活動は再生への気力を与えている。今回の事業は函館からトラスト事務局の「ストリート・ペンキ・ワークショップ」と連動して規模を拡大し、街並みレベルでのペンキ塗り替えをおこなうことにより、街並みが実際目に見えて変わるような、より効果的な改善事業が期待できる。さらに市民や学生からなる常設のペンキエイド十字軍(下見板壁ペンキ塗り替えボランティア)の結成への期待もふくらんでいる状況に大きなはずみをつける。これらの活動を通し、伝統的街並みの古い地域を維持・再生して住民の力を耕していくことがなにより期待できる。