まちづくりとしての運河問題は何だったのか                                        小樽町並みゼミ95


 土田旭

< 直接的な問題 >
1.小樽運河の空間デザインの問題
  小樽に来るのは四度目で、道路ができる前の小樽運河にも来たことがあるが、来る度に観光商業の活性化による変貌ぶりを強く感じる。小樽運河の保存に関しては、かつての運河の風景をそのまま残せば良かったのか、なにを保存しどう再開発すればよかったのか、今も答が出ていない。結果妥協の産物で運河が半分残り、道路ができたが、土木デザインとしてはあれでよかったのか疑問に思う。特に運河の水辺と遊歩道、町並み、道路との位置、関係には別なデザイン(道路を海側の倉庫前に通すような案)がありえたのではないかと思う。
2.歴史的都市の景観
  歴史的都市の永遠の課題は現代的価値とどう関係をきり結ぶかである。現代と歴史の対立的調和のあり方は金沢やパリのような重層的構造をもつ都市で成立しているが、その場合現代的価値を評価する上で市民の美意識に高い水準が要求される。もう一方栄光の時代の歴史様式に凍結するのも方法論としてはありうる。その場合は栄光の時代の街並みデザイン分析を基に、分かりやすいデザイン・ガイドラインをつくり市民に示す必要がある。小樽の現状では歴史様式にデザイン誘導するときの規準が不明確なように思う。

< 背景にある問題 >
1.同時代性
  「地域」からの問題提起、取組みは普遍性を持つ。あるいは普遍的課題への「地域」での取り組みは先駆性をもち、時代精神を醸成する大きな力である。
2.時間と空間
  まちづくりには時間が必要で、穏やかなテンポを持つ地方都市だからこそできることが多いのではないか。同時に、短期に成就したいプロジェクトに対しどう臨むか。
3.景観形成と都市の文化水準
  まちづくり、景観づくりは都市の文化水準(市民意識の水準)の反映ともいえる。まちづくりプロジェクトは地方文化への貢献という評価軸をより重視すべきである。
4.「運動」→「市民財団」による恒常的活動へ
5.都市経営の基本戦略
  小樽市は今後何で食べていくのか
  「観光産業」はどのように位置づけられるのか
  都市における各空間の適正配置と空間構造化

日本の景観問題をめぐる動きと小樽運河問題・年表