小樽運河保存運動に関する記録の作成           
                     

トヨタ財団助成   1991年 


・計画概要    
:小樽市において、1973年末から1984年の11年間にわたり、「かけがえのない遺産・小樽運河」の保存をとおして小樽の新しいまちづくりのあり方をめぐる議論を巻き起こしたいわゆる小樽運河保存運動。その後1984年以降現在にいたる7年の経過の中で、運河を中心とする水辺環境や歴史的環境を生かした、観光をベースとする新しい動きが次々に起こり、いま小樽では環境、経済、市民の意識などさまざまの面で大きな変化の最中にある。
 このプロジェクトは、小樽運河保存運動を主体的に担ったわれわれ市民が、自らの手で運動の展開過程とその成果をまとめることを目的にしている。最終的には、一般読者向けの本として出版し、いわば小樽運河保存運動の記録の決定版として世に問うことをめざしている。
 すでにわれわれは、1982年4月から1984年10月までの2年半におたる、トヨタ財団第2回研究コンクール”身近な環境を見つめよう”の研究成果として、研究報告書「まちづくりにおける環境の教育力と環境イベント型市民運動の展開に関する研究−小樽運河問題を通して」(小樽のまちづくりを考える会、1984年10月14日提出)をまとめており、記録の作成は、これをベースとして内容を再構成することを考えている。これに加えて、1984年以降のまちの変化についての調査、データ収集をおこない、小樽運河保存運動が提起した市民主体のまちづくりの考え方、方法に照らしあわせて分析、評価をおこなうものである。
 小樽運河保存運動をわれわれ自身が冷静に、客観的に見つめ直し、さらに保存運動終了後のまちの大きな変化の状況をいかにとらえ、評価するかという問題に取り組むには、今が絶好の時期ではないかと考えている。
 小樽市において、1973年末から1984年の11年間にわたり、「かけがえのない遺産・小樽運河」の保存をとおして小樽の新しいまちづくりのあり方をめぐる議論を巻き起こした小樽運河保存運動。これは、この小樽運河保存運動を担った我々が、自らの手で運動の展開過程とその成果をまとめることを目的にしている。また1984年以降現在にいたる6年の経過の中で、運河を中心とする水辺環境や歴史的環境を生かした、観光をベースとする新しい動きが次々に起こってきている。小樽運河保存運動から始まった近年のこのような活性状況を検証し、運動が提起した市民主体のまちづくりの考え方、方法に照らしあわせて評価をおこなう、そして現在の活性化が一過性に終わることなく、持続的なまちづくりへと展開するような考え方や方法を提案し、出版、公表することによって、市民全体で小樽の今後のまちづくりのあり方を再検討する基本資料となることも期待している。
 なお、すでに我々は、1982年4月から1984年10月までの2年半にわたる、トヨタ財団第2回研究コンクール”身近な環境を見つめよう”の研究成果として、研究報告書「まちづくりにおける環境の教育力と環境イベント型市民運動の展開に関する研究−小樽運河問題を通して」(小樽のまちづくりを考える回、1984年10月14日提出)をまとめており、それをベースに、その後現在にいたる6年間の経過の分析を加え、出版するものである。

目  次 内容等

序 はじめに
全体の概要について配術する。

1 小樽市の都市衰退過程
 小樽運河問題の背景にある小樽の都市衰退現象の分析をおこない、都市再生への課題を整理する。
1−1 小樽市の歴史と概要  
1−2 都市衰退にともなう諸課題    
1−3 都市衰退の要因
1−4 まとめと今後の課題

2 小樽の歴史的環境の構造
 運動の舞台となった運河を中心とする小樽の歴史的環境の構造を、産業経済、地区の物理的環境、歴史的建築物、建物所有者の意向、市民の環境観、道路問題の関係、の側面からその現状と変容過程を分析することによって把握し、歴史的環境再生へ向けて課題を整理する。
2−1 歴史的環境地区の概要
2−2 産業経済の変容実態
2−3 歴史的環境の変容実態
2−4 歴史的建築物の取り壊しの経緯ー要因と建物所有者の意向ー
2−5 運河、色内、緑山手地区の変動
2−6 歴史的環境をどう読むか−環境の問題点と課題ー
2−7 小樽の環境構造と市民の環境観
2−8 道路問題と歴史的環境

3 小樽運河問題          
 1973年末から1984年の11年間にわたる小樽運河保存運動の展開過程を整理する。そして、その中から生まれた環境学習型イベントの内容と成果、さらにはまちづくりにおける「環境の教育力」の概念について分析、考察する。また、1984年以降近年における運河周辺地域の活性状況を検証、評価し、今後の まちづくりの課題を整理する。
3−1 小樽運河保存運動の展開過程 
3−2 環境学習型イベントの成果  
3−3 環境の教育力の位置づけとまちづくり実践の展開構造   
3−4 保存運動をとおしてみた社会的衰退現象          
3−5 近年の活性状況とまちづくりの展開
    

4 再生計画の考え方と今後の課題
 以上をとおして、今後の小樽のまちづくりのあり方について、その考え方と方法を提案する。
  
−まとめにかえて−

(4)団体の設立目的とこれまでの経緯
 小樽のまちづくりを考える会は、1981年12月、それまで小樽運河保存運動を担ってきた小樽運河を守る会や小樽夢のまちづくり実行委員会、また運動の中で展開した各種の環境学習型イベント−運河での祭り(ポートフェスティバル)、小樽運河研究講座、運河紙芝居、ミニコミ誌・ふいえすた小樽、タウン・オリエンテーリング−を担った人々、さらに地元の高校・大学の教師、市役所職員、都市計画の専門家など、多様な団体や人々を横断的につなぎ、運河保存運動をより発展的に展開することをめざして設立された。これはその後、全国規模でのシンポジウム、運河周辺の石造倉庫の買取り基金を目標とするロフト・キャンペーン、運河クリーンキャンペーン、タウンフォーラム、小樽運河百人委員会の設立と10万人署名などへと実を結んだ。

(5)現在の活動内容
 小樽運河問題に一つの決着をみた1984年以降は、各自の所属する団体での活動が主となり、小樽のまちづくりを考える会として大きな社会的活動はおこなっていないが、近年の活性状況に関する情報交換、議論など、ゆるやかなネットワークを維持している。今回の応募を機会に、再び密度の高い活動を展開しようと図っている。