港湾都市の再生に関する研究

NIRA応募 1988


 「研究の目的」
 本研究は、函館市西部地区において、水辺のデザインガイドラインを創出し、それをもとにしたコンピュータ・エイディド・プランニング・システム(CAPS)の構築によって、港湾都市のウォーターフロントの再生の計画を環境デザインの面から支援する手法の開発を目的としている。
 現在函館市は、青函トンネルの開通と連絡船の廃止や造船業の縮小に象徴されるように、1858年の幕末の開港以来最大の転換期にある。
 私達は、過去10数年の調査・研究から、港湾都市・函館を独自の風格をもった町として形づくってきたものは、開港場の伝統を今に伝えるハイカラな洋風の町並みと、函館山と巴型の入り江に代表されるきわめて特徴的な自然環境の一体となった環境によるものであることを知った。
その都市形成の歴史においては、地区の環境の変貌は、水辺の変貌と密接な関係性を持つ事が明らかになった。 
現在広大なウォーターフロントの再開発を今後どう進めていくか、港湾都市函館の再生を左右する最大の問題となっている。
本研究の方法は、景観型=環境構造を規定するパターンによる環境分析と、親水型=水辺空間の中で、営まれる様々な生活行動に於て快適だと感じられるパターンをコード化して、水辺環境開発のデザインガイドラインの創出をめざしている。次にコンピューター・グラフィックスを援用したCAPSにより、「環境計画においては、パターンとコードによって表現できるアナログ情報は空間的客観性をもつ」という仮設を設定し、複数のことが同時平行に進む現象や過程を分析、シミュレーションしながら、計画づくりを支援することをめざす。

本研究は具体的に3つの目標がある。
 1。地域固有の水辺、町並みの環境分析から、デザイン要素のパターン化とコード化により、3次元の水辺環境データベースの作成。
 2。水辺環境データベースをもとに、新しい機能、情報を盛り込んだシミュレーションスタディをもとにした
 3。計画づくりへの市民参加の方法論的開発。コンピュータ・グラフィックスを援用した誰にでも分かりやすいプレゼンテーション・テクニックとワークショップ形式により計画への市民参加の手法を探る。
新たな水辺開発の可能性をもとめる中で、水辺と市民生活のかかわりの回復をめざす長期的視点にたった環境形成計画が必要であり、ポート・ルネッサンンスなどのハードな計画がその中核になるが、ためには水辺の開発に対するデザイン・ガイドライン(指針・基準)作り等が必要である。

「研究計画」

 本研究の内容は大きく3つある。
 1。地域固有の水辺、町並みの環境分析から、デザイン要素のパターン化とコード化により、3次元の水辺環境データベースの作成
 ・景観型の抽出(例えば水辺造形型、見晴らし型、坂道型など7つの型) 
 ・西部地区の3次元景観データベースの作成
 ・パターンで解析した環境構造のCG化の完成
 ・デザインコードのCG化
 ・3次元景観指標の開発

 2。水辺環境データベースをもとに、新しい機能、情報を盛り込んだシミュレーションスタディをもとにした水辺環境開発のデザインガイドラインの創出
 <時間変化の中でのシミュレーション=都市デザインとは時間の中で変化するプロセス自体が対象である> 
 ・モデル案(再開発型、保全型、誘導型)での景観シミュレーション
 ・計画立案課程でのフィードバック機構を含んだプロセス・プランニング
 ・課題解決への景観シミュレーション

 3。計画づくりへの市民参加の方法論的開発
コンピュータ・グラフィックスを援用した誰にでも分かりやすいプレゼンテーション・テクニックとワークショップ形式により計画への市民参加の手法を探る。
 <誰にも分かりやすいプレゼンテーション>
 ・計画主体の構造化 
 ・使い手参加の計画手法
 ・景観意識の高揚、環境教育手段への応用
ウォーターフロント地区では、青函トンネルの開通と連絡船の廃止や造船業の縮小に象徴される、ドラスティックな地域変化が生じている。が、商業からの歴史的建造物の再利用の試みの成功に刺激される観光の動きや、その中で町並み保存をルール化する景観条例の制定が進んでいる。

2) アナログ情報を伝えるものとして、現在操作性、再現性において高いレベルに達しつつあるCG(コンピューター・グラフィックス)の  有効性が注目できる。CGによる環境の再現とは、環境をパターンとコードによって分析し、数値化されたデータから再構成し、「絵」を描くことである。

CGを全面的に展開した研究である。
 ・水辺のデザインガイドラインは景観分析から抽出したデザイン基準とCGでのシミュレーションの組合せから分析できる。
 その理由として、都市の環境問題とは具体像(案)が不明なまま、対立、摩擦が生じ、高次のレベルでの空間的解決に進むことが出来ない。
つまり「環境計画においては、パターンとコードによって表現できるアナログ情報は空間的客観性をもつ」という仮設を設定することができる。
2) 本研究は水辺、住宅、景観などの環境デザイン研究において、可能なかぎりアナログ情報に着目した。同時平行的に進む現象を人間が理解する場合、ディジタル情報は  いわば、正確な断面値を捉えることに対し、アナログ情報は全体像(構造、関係)を掴むことが容易で、総体を捉える方法論である。空間、環境に対し、誰もが容易に理解できる手段「絵=パターン化されたアナログ情報」が重要となる。

2 研究計画の特徴
 「関連研究の状況」
3)古い住宅そのものを保存するのではなく、例えば京都の町家のようにその型がもっている環境構造の仕組みのパターンを継承しながら伝統的な住宅の更新をはかっていく研究と実践は、関西に於ていくつかの試みがみられる。

 「問題が未解決の理由と研究の緊要性」
3) ウォーターフロント地区に隣接する歴史的町並み地区においては、地区の人口減少、老齢化が一層進み、更新が進まない住環境としては悪化が健在化しつつある。

「研究の特色、独創的な点」
 これまでのまちづくりの方法論を越えるものとして、本研究は主要な研究手法としてコンピュータ・グラフィックスを利用することにより、次のような特色を有する。
1) 函館西部地区の景観条例の指定範囲は百数十ha、人口も2万と、日本でも最大規模である。この広い範囲とさらにウォーターフロント  まで含め、コンピュータ・グラフィックス(CG)を利用し、一体に3次元の景観データーベースをつくり、環境形成をシミュレーション  していくシステムは行政の所管が異なる水辺と歴史地区を連続的に再生していくうえで、画期的な仕組みとなる。

2) さらにCGでは、一度データが入力されると、あらゆる視点、角度からの空間分析、再現が容易となる。その結果、都市の変貌プロセス  =都市景観を時間を圧縮してトレースしながらリアルに分析することができる。それゆえ大きな再開発計画では、過程の景観の重要性を認  識しながら計画することや、マスタープランのようにあるべき未来図を固定的に描くのではなく、動的なプロセスを内包しうる計画理論の  構築も可能とする。

3) 本研究で利用するCGのハードはPC9801レベルのパソコンで、大量データの景観分析が可能なソフトを開発しており、普及したハ  ードの使用によって、将来的にパソコン通信による市民レベルでの景観情報ネットワークの構築も可能となる。それにより市民に向けて分  かりやすいプレゼンテーション技術を開発し、景観形成や計画作りへの市民参加の新しい方法を切り開くことが期待できる。

「研究計画」
函館では、今まで明らかにされてきたまちづくりの方向をより現実化していくため、本研究は大きく4つの領域に分けられる。
1) 水辺の適切な利用計画
水辺の適切な利用計画は水辺のデザインガイドラインのあり方を明らかにすることが目標である。
まず フィールド調査、文献調査、ヒヤリング調査により、
・景観型の抽出(例えば水辺造形型、見晴らし型、坂道型など7つの型) 
 地域固有の水辺、町並みの環境分析から、デザイン要素のパターン化とコード化を行う。
・3次元の水辺環境データベースの作成。
コンピューター・グラフィックス解析により、現状の水辺環境データベースの作成。
・水辺環境開発のデザインガイドラインの創出
水辺環境データベースをもとに、新しい機能、情報を盛り込んだシミュレーションスタディをもとにした水辺環境開発のデザインガイドラインの創出。
更に実際のモデル案(再開発型、保全型、誘導型)において課題解決への景観シミュレーションを試み、
・計画立案過程でのフィードバック機構を含んだプロセス・プランニングへの方法論を試行する。

2)風土に根ざした地域居住計画
風土に根ざした地域居住計画は地域経営型居住システムづくりを分析する。
・西部地区の現状の整理
ヒヤリング調査により、新しい住宅を供給する主体がどのレベルにあるかを把握する。
・居住ネットワーク
住宅・住環境づくりに関わる住み手、住宅供給者、自治体、様々な主体が、望ましい住宅・住環境づくりに向けて、実践的な交流体制を創る。多様な暮しの機会を保証し合う都市生活の協同体の構築の可能性を分析する。

3)創造保全型の景観計画
・環境デザイン委員会
創造保全型の景観計画は昭和63年3月に制定した景観条例と64年度の制定が予定されている伝統的建造物郡保存地区の運営を柔軟で創造的なものにして行くため、環境デザイン委員会の果たすべき役割と成立の可能性を検討する。
・3次元景観データーベース
時間変化の中でのシミュレーション=都市デザインとは時間の中で変化するプロセス自体が対象である。コンピューター・グラフィックス解析により、西部地区の3次元景観データベースの作成
・3次元景観指標
次にパターンで解析した環境構造とデザインコードのCG化から3次元景観指標の開発をめざす。

4)計画づくりへの市民参加の方法論的開発
・景観意識の高揚、環境教育手段への応用
コンピュータ・グラフィックスを援用した誰にでも分かりやすいプレゼンテーション・テクニックにより景観意識の高揚、環境教育手段への応用に役立つ手法を探る。
・使い手参加の計画手法
上記の手法とワークショップ形式により計画への市民参加の手法を探る。