2002
おたる無尽ビル再生計画 Otaru Muzinn
所在地
主要用途
構成
規模
設計
施工
北海道小樽市花園4丁目1番(旧・北洋銀行小樽支店・昭和10年築)
1階:飲食店 2階:会議室 3階:フリースペース
小樽トラスト協議会
建築面積・345.08F 延床面積・915.93F RC地上3階建 
柳田良造・大橋拓
札1期工事:大成建設株式会社・造形ネット 2期工事:羽角建設工業
補助金:北海道・小樽市歴史的建造物
1経緯
 おたる無尽ビルの位置する花園公園通地区は、水天宮と小樽公園を結ぶ軸上にあり、山の手の住宅地や市役所、市民会館などの公共施設群と商店街や飲屋街を結ぶいわば、小樽の中心市街地の背骨に位置する。新撰組で有名な永倉新八宅跡、榎本武揚碑、啄木や伊藤整の下宿先、ロシア料理店や喫茶シベリヤ、サクラビヤホール跡、演劇場では公園館や八千代館跡など、この地区に残る歴史エピソードは数多く、それはいまも商店街を構成する店や主にユニークな生活風物を伝えている。
しかし地区の核であった2001年7月北洋銀行小樽支店が廃止が決まり、歴史的に由緒ある建物の解体が報道された。建物は元は北洋銀行の発祥地本店として小樽経済界が創設した銀行であり、長く地域商店街の中心として商店街のみならず、コミュニティの核となってきた。地元町会や商店街から解体取りやめの要望書が北洋銀行、小樽市、商工会議所に提出された。しかし、なかなか保存策が見つからず、2001年10月時間切れ解体というときに、小樽の3人の商店主による買い取り決断により、寸前で解体が阻止された。地域の空洞化、地盤沈下を必死で阻止する訴えである。

2再生計画案づくり
 2001年10月から、再生の案が3人の商店主やその友人達により練られた。規模は1,2,3階で延床面積が約1000Fの大型の建物である。各階で場所の特性や小樽でのニーズ、市場性、改修にあたっての補助金の可能性などが、多角的に検討された。
まず3階は、建物が元々、集会室的な利用がされており、規模的にもホールとしては200名ほど収容でききる規模であった。また小樽市には、制約なく練習から講演まで行える適切な規模の施設が不足しており、そういう建物の特性と小樽でニーズから多目的ホールの構想が浮かび上がった。また地域の歴史的建造物を再利用して、地域の文化や芸術などの活動のためのスペースづくりに、道庁の地域創造アトリエの補助事業があり、無尽ビルのケースはうまく当てはまりそうであり、早速道庁に問い合わせしたところ、補助枠の可能性があるということで、申請することになった。
2階は中、小の会議室がもともとあったため、貸し会議室等の利用を行っていこうということになった。
1階は銀行の営業室であったため天井も高く、角地の立地性や駐車場の確保もできることから路面店として飲食等の再利用を行う計画が練られた。また1階にATSの導入が期待され、各方面に交渉したがこれは実現しなかった。

3改修工事
 2,3階のホール、集会室の運営は、小樽トラスト協議会(2002年10月NPO法人化)が行うことになり、設立の準備等が2002年1月よりスタートした。運営のスタッフの確保や運営方針、規約等の策定を進め、ようやく体制が整った2002年8月に道庁に正式申請し、承認後、2002年8月末、工事着工。10月初め、3階が多目的ホール「遊人002」として仮オープンした。仮オープンというのは、来年5月にエレベーターの設置工事等を行い、2002年6月に本オープンの予定であるためである。
1階は飲食店のテナント探しも行っていたが、オーナーの田島氏が自ら、新しいタイプの和食ダイニングの店を開きたいとの意欲が生まれ、夏頃からその準備を進め、11月初め工事着工、12月10日完成オープンで現在進んでいる。
工事をまとめると
第1期工事(2002年8月〜10月)
・工事目的 建物防水、外観改修、2,3階のホール化に伴う設備、建築工事
・工事主体 小樽トラスト協議会

第2期工事(2002年11月〜12月)
・工事目的 1階の飲食店化に伴う設備、建築、内装、家具工事
・工事主体 株式会社田志満

第3期工事(2003年5月〜6月)
・工事目的 1階の玄関、エレベーター工事、3階ホール床工事、照明・音響設備
・工事主体 小樽トラスト協議会

4.今後の活用方針
 おたる無尽ビルは単なる観光施設だけではなく、商店街の核、地域コミュニティの核として再生することが期待されている。地域にねざした再生後の活用こそが重要になる。そこで各商店街有志が集まる、小樽花園十字街地区のリバイタライズ(再活性化)会議「小樽まちづくり無尽」が2002年1月に誕生し、北海道経済産業局の補助金を受け、おたる無尽ビルを活用した新時代のライフスタイルに対応する地域づくり構想や、地域資源発掘型の商店街再発見による街の回遊性の復活をめざす試みが模索され始めた。2002年度はその構想案づくりと方向づけを行い、2003年度はおたる無尽ビルを核にした街のインフォーメーションセンターづくりや、老舗店舗を活用した地域資源発掘型カフェなどの試みを行い、小樽花園十字街地区の活性化をめざしたいと考えている。