『季刊大林NO.46 1999 函館』から


■函館を特集した『季刊大林No.16特集 函館』が発行された。函館のシンボルである五稜郭を中心にしたものであるが、開港史や五稜郭の歴史など函館の歴史入門書としても楽しく読むことができる。

 かつて五稜郭の中心的建造物であった箱舘奉行所の誌上復元や城郭の土木構造の考察を通して、建築・土木の両面から往時五稜郭の姿を検証しているところに大手建設会社大林組の専門性が発揮されている。

 奉行所の発掘調査の様子や古絵図や写真、文献に基づいた図面復元作業などが取り上げられているほか、CGを用いての景観復元なども行われており、函館のまちから見える五稜郭が今とはちがったものであったことがわかる。


■見て楽しい読み物に、平井聖氏の『函館素描』(P2〜7)がある。1988年〜1990年に描かれた函館湾に面する海岸沿いの通りのうち、金森倉庫群(末広町)から旧市街地の大町電停付近までのスケッチが、6ページに渡って紹介されている。

 歴史的建築物、商店、住宅、倉庫、函館山ののぞく坂道。スケッチを通して伝わってくるのは、全てが調和しているわけではない、バラバラのようでいてしかし確かに一つの雰囲気をつくっているという、初めて訪れた人をもひきつけてしまう函館の町並みの魅力である。


■『函館・町家の色彩移り変わり』(P49〜55)では、公益信託函館色彩まちづくり基金のきっかけとなった、元町倶楽部・函館の色彩文化を考える会の活動が紹介されている。西部地区の85軒にものぼる「時層色環」のこすり出しによって得られた町並み色彩の移り変わりの特徴を第1期から第5期に分類し、住宅や店舗など20軒についてわかりやすくCGシミュレーションを使って表している。

 ある一定の周期で建物の色を変えるのは、人が変化や活力を色に託しているからであり、シミュレーションからは、時代による民衆心理や世相の移り変わりが感じられる。色を見る、さらに発展して色を塗るという元町倶楽部の活動は、誰でも気軽に、簡単に参加できるという点で、広がりの可能性はつきない。

 今回のように、どんな活動をしているのか、わかりやすく、たくさんの人に知ってもらうことで、まちづくりへの関心のとっかかりを増やしていきたい。