敷地は昭和40年代に建設されたもみじ台団地の南西部、地区内幹線から1ブロックはいった、角地にある。全体のシルエットは塗り仕上げの外壁からなる長方形のボックスだが、南面の半地下の車庫の上に屋根のかかったテラスを設け、通りに対する彫りの深さを演出している。南西側の道路が緑道を兼ねた坂道であり、通りからの視線がそれほど気にならないため、庭に面し2階分の高さのある大開口と玄関ポーチ、跳ね出しのテラスを設けている。
家族は夫婦二人+犬で、住宅内の具体的な動きに対応し、それぞれの場をもちたいというのが、設計での要望であった。1階に夫婦それぞれの個室とリビング的な場がある。2階はすこしプライベートな場で、寝室とラウンジ、洗面・風呂からなる。地階はオーディオルームと書籍や道具類のストックの場だが、地面の熱容量の大きさから夏はひんやりとした気持ちのいい空間になるので、夏の居間とも名付けられている。この3層の空間が、南側中2階のサンルーム、大開口に面し設けられたブリッジ、階段を通して、回遊できるようになっていて、また視覚的にも複数の吹き抜けを通して連続しているため、家全体が様々な場面をもつ大きなワンルーム空間の構成となっている。
玄関から1階の大半と中2階は、テラコッタタイル敷きの土間空間であり、庭レベルとは段差10cmで、大開口の引き戸を開くと、土間が庭と連続するオープンエアの場が出現する。冬にそなえて北海道の住宅は、防御的になりがちだが、オープンな構えをとりながらも、適切な雪対策の装置(この住宅では窓下融雪の装置)をすれば、1年をつうじて快適な暮らしの場面づくりが住宅で可能になると思う。
大開口には断熱戸的な機能ももたせるためウッドブラインドをとりつけた。ブラインドを通して柔らかい光が大きな空間全体に充満し、ブリッジを通る時不思議な浮遊感を感じさせる。 |
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