発寒ひかり保育園は札幌農学校でW・S・クラークの聖書に基づく人格教育を受けた内村鑑三、新渡戸稲造、宮部金吾らによって創立された札幌独立教会を母体に、1969年に手稲山を望む発寒の地に誕生した保育園で、敷地は3,486F、南側には乳児たちの遊ぶ芝生園庭、北側には年長組が遊ぶグランドと子どもたちが育てる畑があり、周辺に残る墓地や屋敷林の緑とともに豊かな環境にある。
オランダの建築家アルド・ヴァン・アイクの名作に「子どもの家」がある。その有名なコンセプトは「大きな家、小さな都市」というものであるが、ひかり保育園の保育理念「ひかりファミリーの大きなお家」という考え方にふれた時、浮かんだことはアイクの言葉であった。家と都市、共同体のなかで人間は始めて社会的存在となる。大きな家の居間は小さな都市の広場であり、廊下は街路である。この建築の組立も、上下階に生活空間が分離することをさけるために平屋をベースにし、基本単位としての保育室と、それらをつなぐパスとたまりの空間、内と外を媒介する回廊、全体をつつむ大きな屋根から組立られている。大きな屋根の下、部屋には様々な天井の高さが与えられている。さらに保育室には、置き家具などによって子どもたちのひとりひとりが自分のお気に入りの場所を見つけだすことができるように、「小さな空間」づくりの仕掛けがなされている。2階は保育士たちの休憩や研修、会議のスペースだが、子どもたちも特別な時にはこの場所にやってきて、お話を聞いたり、入浴やテラスでの行水を楽しみ、非日常の楽しみを味わう。新築後、従来の年齢別の保育から、年齢の異なる子供達が一緒に過ごす異年齢保育が主体になり、より家庭に近い暮らしの場としての保育園になりつつあると聞く。コミュニティの衰退により、孤立しがちな親にとって保育園は地域の子育て支援のセンターとしても重要である。将来的には高齢者のデイケアーも含めこの保育園が地域に開かれた場として、根づいていってほしいと思うものである。
<設計概要>
内村鑑三らによる札幌独立教会を母体に1969年に誕生した保育園で、豊かな敷地環境に建つ。「ひかりファミリーの大きなお家」という保育理念にはアルド・ヴァン・アイクの名作「子どもの家」のコンセプト「大きな家、小さな都市」に通じるものを感じた。家と都市、共同体のなかで人間は始めて社会的存在となる。大きな家の居間は小さな都市の広場であり、廊下は街路である。この建築の組立も平屋をベースにし、基本単位としての保育室と、それらをつなぐパスとたまりの空間、内と外を媒介する回廊、全体をつつむ大きな屋根から組立られている。大きな屋根の下、様々な天井の高さが与えられ、家具などによる「小さな空間」も生み出されている。異年齢保育が主体になり、より家庭に近い暮らしの場になりつつある保育園は地域の子育て支援のセンターとしても重要である。将来的に高齢者福祉も含め開かれた場として地域に根づいていってほしいものである。 |
|
|