〜約束のために〜



作・葵様


参話 旅立ち


「それで・雅彦君?話とはなんだい?」
 教授の見せたいものが有るという部屋に向かっている。九峪と教授の二人だけだ、日魅子は『私、別に興味ないから良いや』と言ってどこかへ行ってしまった。
「歩きながらじゃ、ちょっと話しづらいんで後で良いです」
 教授もそのつもりだったらしく黙って頷くと、そのまま歩き出した。
 少し歩くと他の物より大きなプレハブが見えた。
「見せたい物が有るのはここだ、入りたまえ」
「でも・・・良いんですか」
 九峪が指差した先には『関係者以外立ち入り禁止』の看板、それを見た教授は、ふむっ、と頷くと
「まぁ・・構わんじゃろ、何しろ儂は総責任者なんじゃからな」
 胸を張ってそう言う姿を見た九峪は
(やっぱ親子だな・・・じゃなかった孫と祖父か)
 と内心考えていたが、教授に気付く様子は無かった。
「男が細かいことを気にするな!さぁ、入った入った」
「細かいって・・まぁ良いですけど」
 中に入ってみるとそこの光景に九峪は息を呑んだ。
「これは・・・良いんですか?こんな所に部外者を入れたりして」
 中を見た九峪の第一声はそれだった、立ち並ぶ大型の棚、建物の中央には大きなテーブルがあり石器などが置かれている、どう見てもここは一般人が入って良い所ではない
「しつこいな君も!考古学者を目指すものをここに入れて何が悪いと言うのだ」
 断言すると九峪の横をすり抜け奥に入っていく。
「こっちだこっち・・早く来たまえ」
 手招きする教授に急かされ、迷いながらも奥に入っていく九峪。
「これだよ・・・君に見せたかったのは」
 教授の手の中には変わった銅鏡があった。
「これは・・・?見たこと無い文様ですね」
「ふむ、その通り!この銅鏡の文様は儂も始めてみるものだ・・・もしかしたらこれは、邪馬台国女王卑弥呼の物かもしれないのだ!」
 少し興奮気味の教授の隣で九峪は考え込んでいた。その九峪の様子に気付く様子も無くまだ何かを話し続ける教授。
(初めて?確かにこんな文様の物、発掘品の中で見たことは無い・・でもどこかで似たものを見た気がする、いつだ?つい最近見た気がするのに)
 記憶を探る九峪、空港での事を思い出した時、ふと閃いた。
「日魅子の鈴!そうだ日魅子の鈴だ!」
「ああ、あれか・・あれがどうかしたかね?」
 唐突に自分の話を遮る九峪に、不思議そうにする教授。
「教授!気付きませんか?日魅子の鈴の文様とこの銅鏡の文様、どこか共通点があるのに」
「・・・そうかね?儂にはよく分からんが・・・」
「よく見比べれば判るはずです!日魅子の奴を呼んできますね」
 教授の答えを聞かず走り出してしまった九峪、
「何かに気付くと確かめずには要られない・・・父親そっくりじゃな」
 九峪の後姿を見る教授の顔には、孫を見つめる者のそれであった。
 
 日魅子を探しに走り出した九峪であったが、日魅子がどこに行ったのか一向に分からなかった。
「ったく・・・どこに行ったんだ?日魅子の奴」
 発掘現場を走る九峪。
「誰かに聞くか・・・」
 近くにいる発掘をしている人に歩み寄った瞬間、馬のいななき、そして剣戟の音が聞こえた。
「なっ・なんだ!?」
 大勢の人間の喚声、そして、断末魔の絶叫。日本で聞くはずの無い音に、思わず立ち止まり、辺りを見渡した。
「な〜に・やってんの九峪?」
「うわぁ!!!!!」
 いきなりの背後からの声に飛び上がる九峪。
「きゃあ!?そ・そんなに驚かないでよ!ビックリするじゃない!」
 振り返ると、そこには日魅子が立っていた
「どうしたの?そんな所につったって、なにかあったの?」
「い・いや何でもない」
 どうやら先ほどの音は日魅子には聞こえなかったらしい。
「空耳か・・・」
「ん?何が?」
 九峪の呟きに反応する日魅子。
「いや・・それより日魅子ちょっと来てくれないか?」
「別に良いけど・・ここ退屈でさぁ、早く帰ろうよ!」
「用事が済んだらな!」
 文句を言う日魅子を連れ、走り出す九峪
(気のせいだよな・・・)
 そう、願いにも似た気持ちでそう考える九峪であった。

「ふーむ・・・確かに、似てると言えば似てるかもしれんが・・・」
 どこか否定的な呟き。
「そうですかね?似てると思ったんですけど・・・」
「ねぇもういいなら返して欲しいんだけど・・・」
 残念そうに俯いている九峪に遠慮しているのか控えめな日魅子。
「ああ、日魅子、はい・・まぁ雅彦君も落ち込まないことだよ、」
 鈴を渡しながら声をかける教授、九峪が少し落ち込んでいるだけなのだが何故か、その場の空気が重くなっている。
「あ・はい・・・そうですね、気にしないようにします」
 その場の空気に気付いたのか九峪が顔を上げる。
「そういえば、何か聞きたいことがあるといってたと思うんじゃが?」
「あっ・・それは・・・これの事なんですけど」
 そう言って九峪は荷物の中からひとつの木箱を取り出す。
「親父が置いてったんですけど・・・」
 木箱を空けて中身を取り出す
「剣・・・かね?」
 木箱から出てきた物は、鞘に入った一振りの刀であった、それに見て言う教授に九峪は自信無さげに、
「ええ・・・多分そうだと思います」
「多分とはどう言うことだね?」
 不思議そうにする教授
「鞘から抜けないんで中身は見たことが無いんです・・・俺が気になるのはこれ自体じゃなくて、ここの文字みたいな所なんです」
そう言って鞘の一部分を指差す
「こんな文字見たことが無いんです、教授ならと思ったんですけど・・・どうですか?」
 そう言って教授に手渡す九峪、それを見た教授は目を見開いた。
「これは・・・雅彦君!これをどこで見つけたんだね?」
「知ってるんですか!?」
「知ってるも何も、この文字はあの銅鏡が入っていた木箱に書かれていた文字と同じものだ!しかもあの木箱以外に発見されていなかったものなんだ!」
 どこでこれを!?と問い詰める教授。
「さっきも言ったように親父が置いてったんです、どこで見つけたか、なんて分りませんよ!」
「そ・そうか・・・雅孝の奴がこれを・・・」
「ねぇ〜〜!おじいちゃん!これ見ても良いの〜?」
 場の雰囲気が読めないのか、のんびりとした口調の日魅子。
「ん・ああ構わんぞ」
 ロクに日魅子を方を見もせず答える
「親父は銅鏡のことを知っていたんですか?」
「いや・・・知るはずが無い、何せ銅鏡が見つかったのは一昨日なんだからな、マスコミにだって知らんはずじゃ」
「それじゃあ・・親父はこれを一体何処で・・・」
 二人が黙り込んだその時。
 かっ!と閃光が奔った。
「な・なんだ!?」
 振り返ると日魅子が不思議な緑色の光に包まれていた。
「お・おい日魅子!何したんだお前!?」
 こちらを向いた日魅子の顔には虚無的な笑顔が浮かんでいた。
「どうなってんだ・・・?何がどうなったらこんな事起きんだよ!?」
 横を見ると、教授は状況に付いて往けないのか口を拓いたまま固まっている。
 顔を戻して日魅子を見ると、光の中から細かい粒子が流れ銅鏡に流れ込んでいる、しかもそれにつれ日魅子の身体が徐々に薄くなっていく。
『鈴を』
「!?」
 突如として頭の中に響く声。
『彼女を助けたければ鈴を奪いなさい』
 反射的に日魅子を見るとネックレス代わりに着けていた鈴が浮かんでいた。
「あれか!」
 さして遠くも無い距離を走り寄ると、そのまま鈴を掴み引きちぎる。
 が。
 日魅子を包む光は消えない。
「奪ったけど何も変わらないじゃないか!?」
 幻でしかないかもしれない声に向かって叫ぶ。
 その間も日魅子は光になり消えていく
『剣を取りなさい』
 数秒の間を空けてから答えるかのように頭に響く声。
「何なんだよ、お前は!?」
 見えない助言者に向かって問い詰める。
『彼女を助けたくば、剣を取りなさい』
 日魅子の身体はほとんど薄くなっている。
「ああ!!!分ったよ・・・・・ほらこれで良いんだろ」
 剣を手に取る、次の瞬間。
「なっ!?」
 九峪の身体までが光に包まれた
「どうなってんだよこれ!?」
 しかも、日魅子より圧倒的に速い速度で身体が薄くなっていく。
「ひ・日・・魅・・・子・・・」
 手を差し出そうとしたが既に両腕は消えていた
 そこで九峪の意識と身体はその場から消えた。
 少しの間を取ってから日魅子の姿も消え、彼女を飲み込んだ銅鏡も消えた。
「な・何が起きたんじゃ・・・・?」
 後には状況に着いていけず、腰を抜かした教授だけが残った。 

 参話  完


四話 始まり



「う・・・ここは?」
 周りを見渡すが辺り一面が闇に覆われており何も見えない。
「何が起きたんだ?」
 先ほどまでのことを思い出す
「そう、教授と話してたら日魅子が光に包まれて、助けようとしたら声が聞こえて、言われたまま剣を取ったら俺まで光に包まれて、気がついたら」 
 ここに居た。
 そこまで考えて、日魅子がここに居るのではないか、と考えた九峪。
「お〜い・・・日魅子ぉ〜・・居ないのか〜?」
 叫びながら周りを見渡すが暗闇だけで何も見えない
「なんだよ!真っ暗で何も見えないじゃないか!」
 悪態をつきながらも歩き出す、すると遠くに光が見えた
 思わず駆け寄る九峪、そこには光を背後に一つの影が立っていた。
「・・・あんた・・・誰だ?」
 背後から強烈な光が射していて性別すら分らない
『こんにちは九峪』
 影が答える、声から女性だということが分った
「その声!あんただな?俺に色々言ってきたのは!?結局日魅子のこと助けられなかったじゃないか!」
 少し興奮気味になる九峪、しかし影は動じた様子も無く、
『彼女はあるべき世界に帰っただけです、それを止める訳にはいきません』
「・・・あるべき世界?どういう事だ?」
 影の落ち着いた口調に冷静さを取り戻す九峪。
『彼女は本来、あなたの世界の住人ではありません。異世界と言えば分るでしょうか?彼女はあなたにとって異世界の住人なのです』
「異世界・・・?J・P・ホーガンが言ってた並行宇宙みたいなものか?」
影が頷いたように見える。
『並行宇宙と言われても分りませんが、おそらくその通りです、分ってもらえたみたいですね?思ったより冷静なので助かります』
「喚いたって状況は変わんないからな・・・それより、あんたは確か、助けたければ、って言ってたよな・・・?どういうことだ」
 怪訝そうにたずねる九峪。
『その事についてなのですが・・・あなたの覚悟が聞きたいのです』
「覚悟?何の覚悟だ?」
『先ほども言ったように彼女はあなたにとって異世界の住人、そこでは今でも戦乱が起きています、彼女を助けるとはその中に入ることになります』
「その覚悟はあるか?っていうのが聞きたいのか?」
『は・はい、その通りです』
 最後まで言う前に返され驚く影、その様子に満足そうにする九峪。
「そこまで聞けば誰でも分かるっつーの、構わないぜ・・あいつを守るって約束だからな」
 笑いながら宣言する九峪
『・・・本当に分っているのですか?人を斬らねばならなくなるのですよ?あなたは命を奪うことを二度としないと誓ったのでしょう?』 
「・・・・・なんで知ってるんだ?」
 そう、教授にすら言っていない秘密、考古学者であった父親と彼のもう一つの顔、日魅子と分かれた後の十年間に、どれだけ自分が変わってしまったのかそのことを証明するかのような思い出。
「仕方ないさ・・・俺がどれだけ汚れたとしても、日魅子は必ず守る・・・あいつと約束したし、なにより親友に誓ったからな、大事な人を守るって・・・」 
 寂しげに笑う、しかしその瞳は真っ直ぐ前を見つめている。
「それよりどう言うことだ?日魅子を助けることが戦争に巻き込まれるっていうのは」
『それは、長くなるのですが・・・よろしいですか?』
「長いのは勘弁して欲しいな」
 苦笑いを浮かべる九峪、影は頷くと言った。
『それですか・・少し辛いと思いますが簡単に教えましょう』
 影がそういった瞬間九峪の頭に突然、濁流の様に情報が流れ込んできた
「がっ!?がぁーーーーーーーーーー!」
 あまりの情報量に絶叫を上げる九峪、少しなんてものじゃない、頭が割れるようだった。
 耶麻台国、姫神子、女王火魅子、狗根国、九洲、征西都督府、紫香楽、
天界の扉、五天、王家の神器、反狗根国勢力、女王の資質、飛空挺・・・・・
 様々な単語が頭の中に浮かんでいく。
『あなたの覚悟、確かに聞き届けました』
 次に見たことも無い風景が浮かんでくる。
 どこかの山を歩く二人の狩人の女性と一人の少年。
『あなたが向かう世界は三世紀の九洲』
 夜空を見上げる巫女服を着た女性と、その後ろに控える三人の少女。
 月夜の中を舞う踊り子とそれを見つめる少女。
『あなたはそこで様々な人と出会うでしょう』
 どこかの山奥で酒を飲む女性、隣では気の弱そうな少年が何かしら文句を言っている。
『それと同じ数の試練にも遭うでしょう』
 魏服を纏った妖艶な美女が荷物をまとめている、その横では少女がにこにこと笑っている。
『けれど、あなたなら大丈夫』
 眼鏡をかけセーラー服を着た少女と、二メートルを超える大男との二人がどこかの部屋で神妙な顔をして話をしている。
『あなたはあの人の子供なのだから』
 次々と頭の中に溢れる知識と光景に耐え切れず九峪の意識は徐々に暗くなっていく。
『だから今は眠りなさい・・・これからの苦難を乗り越える為に』
 その言葉が聞こえる前に九峪の意識は闇に閉ざされた。


四話  完

こんにちは、最後まで読んでくださった方がいらしたら感激です。
毎度のことですが自分の文章力なさには涙さえ溢れてきます。
作品の話をしますと影ですが、勘のいい人なら解ってしまったかもしれません。
ちなみに彼女は名前なら見たことある人が多いと思います。
次は伊万里を出します、ある程度書いてみたんですがどうも上手くいきません
それと次のは一つにまとめるつもりです、頑張りますんでこれからもよろしくお願いします
管理人のけいさんもこれからもよろしくお願いします
それでは皆さんまた今度


 影・・・キョウじゃないのは確かみたいですが・・・やっぱあの人ですかね?(どの人だ)
 この話では日魅子も一緒にとんだんですね。なんだかんだと九峪をひきこむのに成功した影さん、大成功ってとこでしょうか。九峪には暗い過去もあるようですし、次も楽しみです^^伊万里と早くも出会うようですし。
 葵さん、どうもありがとうございました!♪

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