火魅子伝SS〜約束のために〜



作・葵様


壱話 再会


aa
いい
うう
 広い空港の中を一人の青年が歩いていた。
 白いTシャツの上に長袖の青いシャツをはおり同色のジーパンをはいている。
 髪は少し茶色がかっていてクセっ毛なのか全体的に上に跳ねている。
 顔立ちは太目の眉に髪と同じ様に茶色がかっている瞳、全体的には整っているようだが二枚目というほどではない、はっきり言って平凡だ。
 しかし、どこか人の目を引き付ける雰囲気を持っている。
 彼は大き目のナップザックを背負い、手には大きめの木箱を持ちながらゆったりと歩いている。
 「・・・・十年ぶりか、まったく親父の奴・・どこに消えたんだか」
 彼こそ十年ぶりに日本に来た九峪雅彦であった。
 呟いてから少し歩くと大きな時計の下に来た、周囲を見渡す。
 「待ち合わせは大きな時計の下、って言ってたからここだよな・・・」
 しかし、彼の視界にはそれらしい姿はどこにも見当たらない。
 五分ほど待ってみたが、いっこうに来る気配は無い。
 「自分で時間と場所決めといて遅れるなんて・・あいつらしいな」
  待ち人のことを考え、思わず緩む口元を押さえる。
 「さてと・・どうするかな・・・ん?」
  どこで時間を潰すか考えながら周囲を見渡すと先ほどまで無かった人垣が見えた、どうやら揉め事らしく言い合う声が聞こえた。
 「警備員は何してるんだ?」
 思ったことを口にしながら九峪の足はその人垣のほうに向かっていた。
 近づいてみると争っているのは高校生位の少女と同年代ぐらいの少年達だった。
 背中の真ん中までくる長い髪を持つ愛らしい少女と、服をだらしなく着た不良少年達だが、人数で勝っているはずの少年達がどこか情けない顔をしていた。
 どうやら一人の少女を相手に言い負かされているらしい。
 「あのね!あんたが誰だが知らないけど、よそ見していて人にぶつかったら謝るのが常識でしょっ!しかも自分がもてないからってカップル相手に因縁つけんじゃないわよ!馬鹿じゃないの!?」
「う・うるせぇ!手前こそ何なんだよ!?いきなり出てきやがって、関係ない奴は引っ込んでろ」
 少女の剣幕に押されながら一人が言い返した。
 「あのね!こんなところでもてない男のひがみなんて見せるんじゃないわよ!ハッキリ言ってウザイのよアンタ達は!」
 少女の言葉に周りの野次馬から失笑が漏れた、中には「もっと言ってやれー」とか「確かにひがみは見たくないな」等と言っている者までいる。
 「やーやー・・・どうもどうも」
 愛想良く回りに手を振ったりする少女。
 「ふざけんなぁ!!!!」
 少女の態度に我慢できなくなったのか、それまで言われ放題だった少年達がその叫びと共に突如として少女に襲い掛かった。
 そのあまり唐突さに固まってしまう少女、迫ってくる男達に対し目を瞑ることしか出来なかった。
 「くたばれやぁ!!!!」
 少年達の内の誰かの声に更に身を硬くする少女。
 数秒経っていつまでも来ない衝撃、代わりに周りの野次馬が騒いでいる事に気づいた少女が目を開いた、そこには大きな背中しか見えなかった。
 少しして自分が誰かに庇われた事に気付いた。
 「・・・誰?」
 「あんたらなぁ・・・人前で恥をかかされたからってやって良い事と、悪い事があるだろうが」
 少女の質問に答えず、九峪は目の前にいる少年達に言った。
 穏やかな口調だがその腕には、少女に襲い掛かった内の一人がその腕を捻り上げられた痛みに呻き、少し離れた所ではもう一人、口をだらしなく開きながら伸びていた。
「な・何だよ手前ぇ、邪魔すんじゃねぇ」
 突如現れ、仲間を二人あっという間に倒した九峪に内心怯えながら虚勢を張るリーダーと思しき少年、残念なことに九峪には怯えているのがバレバレであったのだが。
「そうかい?そろそろ警備員がここに来る頃だぜ?さっさと逃げることを勧めるがね、俺は・・」
 余裕の笑みを浮かべながら腕を極めていた少年を放す、放された少年と合流した少年達は顔を見合わせる、そして二、三言葉を交わすと気絶した仲間を背負い走り出した。
「お大事にー・・・」
 走り去る少年達の背中に向かってのんびりとした声をかける。 
「ねぇ・・・あなた誰なの?」
「んっ?誰でもいいだろ、そんな事よりさっさと逃げなきゃ?お巡りさんに捕まっちゃうよ?」
 少女の質問に軽口で答える九峪、少女が不満の声を上げるが聞き流して荷物を取りに行く。
 しかし、目の前に先回りした少女が立ちはだかって進むことが出来ない。
「荷物取りたいんだけど・・・退いてくんない?」
「い・や」
 控えめな九峪の言葉を満面の笑顔で断る少女。
 片手を腰に当て、もう片方の手で九峪を指差し宣言する。
「通りたければ名前を言いなさいよ、名前を!」
「なんでそんなに知りたがるんだよ?俺の名前なんか知ってどうすんだ?」
 至極当然のことを尋ねる九峪に少女は何故か俯いてしまう。
「だって、頼んだわけじゃないけど助けられちゃったし・・お礼を言うにも名前が知りたいじゃない・・・」
 先ほどまでの勢いはどこに行ったのか、小声でぼそぼそと呟く少女、その言葉に九峪はようやく合点が行ったとばかりに頷く。
「そーいえばそうだな、確かに結果的には助けたことになるな・・・」
 そこで言葉を切る九峪、腰に片手を置き、少女を指差して言う。
「人の名前を聞くときは自分のほうから名乗るのが礼儀だと思うけど」
 おどけて言う九峪、その言葉に少女も頷いた。
「それもそうね、私の名前は姫島日魅子、日光の日に、魅了するの魅、最後に子供の子で日魅子ね」
「えっ!?」
 少女の言葉に固まる九峪、その様子を見て不思議がる少女。
「どうしたの?」
 九峪は答えず思い出の中の日魅子の姿と目の前の少女に比べてみる。
「やだ、どこ見てんのよ!・・・って聞いてる?お〜い聞こえますか?」
 何のつもりか九峪の目の前で正気を確かめるように手を振ったりしている。
 と少女の服の袖がずり落ち、あの鈴が見えた、九峪は驚きながらも昔とあまり変わらない日魅子に笑みを隠せなかった。
「姫島日魅子なんて同姓同名が居るとは思わなかったけど、相変わらずよく喋るなぁ日魅子?」
「えっ?」
 九峪の突然の態度の変わりように驚く日魅子、それを全く気にせず続ける九峪。
「しっかし、待ち合わせの時間になっても来ないと思ってたら、なんであんな事してんだ?」
「もしかして・・・」
 九峪の言葉にようやく気付く日魅子。
「もしかして・・・九峪?」
「そっ!久しぶりだな日魅子」
 ニッと笑う九峪、そんな九峪をみて日魅子は目を見開く。
「嘘!?あの貧弱そうな上に父親にからかわれて膨れてた・・・あの九峪なの?」
「つーか・・・一度しか会ってないのによく覚えてんな」
「当たり前じゃない!あんたこそあの約束忘れてないでしょうね!?」
「ああ・・・当たり前だろ、覚えてるよ!ところで教授は?来てないのか?」
 九峪の言葉に日魅子は、しまった、という顔をして振り返る。
「忘れてた!そういえばマックに待ってるように言ってあったんだった!呼びに行って来るね!」
「忘れるなよ・・そういう事・・・あっ!待てよ・俺も行くから」
 走り出す日魅子を追いかける九峪。
 十分後、教授はマクドナルドで所在無さ気にしていた所を、九峪によって発見された。
 そのころ日魅子は途中で別の不良たちに喧嘩を売っていた。
「順番守りなさいよ!順番!あんたたち何考えてんの!?・・・・・・」

壱話 完

 弐話 談笑

「しかし・・・九峪君も変わったな、昔の雅孝に似てきたんじゃないか?」
 あのあと、合流した九峪と姫島教授の二人がかりで日魅子を宥め、今は姫島教授の発掘している遺跡に向かっている所だった。
「そりゃあ・・・十年もあれば人間、変わるのに十分ですよ」
 教授の言葉に何か含むように答える。
「そうかね?うちの日魅子はあまり変わったように思えんが・・・」
 九峪の言い方に何も感じないのか、気にせず続ける教授。
「どうだね?君の目から見て日魅子は変わった所はあるかい?」
「そうですね・・・」
 横を見ると九峪のお土産のお菓子をガツガツと食べる日魅子が見えた。
「中身はあんまり変わって無いみたいですね」
 十代の少女にあるまじき姿に苦笑いをしながら答える。
「では外見は変わったのかね?」
 九峪の答えに笑みを浮かべながら質問を続ける教授。
 その質問に隣に座る日魅子を見つめる。
 話を聞いていないのかその手は止まらないものの、長く艶やかな黒髪、大きめの瞳、次々に変わる表情、全身からエネルギーが溢れているようだ。
 口元にチョコをつけたままなのは頂けないが、それを差し引いても
(お世辞抜きで可愛いな)そう思う。
 しかし何故そんな事を聞くのかが分からなかった。
「そんな事より・・・親父はこっちに来てないんですか?」
「そんな事って言い方は無いじゃろう・・・そうそう電話でも言っとたが何か在ったのかい?」
 一瞬苦笑いを浮かべるが、直に真顔になって聞き返す。
 どう言えば良いか分からず口ごもる九峪。
「・・・あいつが行方不明にでもなったのかね」    
「っ!!どうして分かったんですか!?」
 驚く九峪に淡々と続ける。
「雷の酷い夜、突然居なくなった。それも元からそこには居なかった様に」
「・・・その通りです、でもどうして・・・?」
「どうして分かるのかって?簡単じゃよ・・・あやつは昔、同じ様に居なくなってしまった事があるんじゃよ・・・そうだな、今のお前さんより若かった頃だと思うが」
「・・・それで?」
「居なくなって二年ほど経ってな・・・家族も亡くなっておったから誰もが忘れかけていた、そんな時にひょっこり帰ってきた、みんな驚いたさ、それだけじゃない・・帰って来た時にはその腕の中にお主が居たんじゃからな・・・何度母親の事を聞いても『母親は遠い所に居る』としか答えんかったがな」
「・・・・」
 自分の知らない父親の過去に驚きを隠せない九峪。
「それからじゃ、あ奴が考古学に興味を持ち始めたのは・・・」
「・・・なにか関係があったんですかね・・居なくなった事と考古学に・・・」
 九峪の呟きに首を振る教授
「それは分からん。ただ言えるのは一度帰ってきたんだ、いつかまた帰って来るだろう・・・気長に待つしかないさ」
「・・・・そうですね」
 たっぷりと時間をかけてから、ゆっくりと頷く
「どうせ居場所は分からないんですから、気長に待つことにします・・・ところでもう一つ、教授に話があるんですけど」
「まぁ、待ちたまえもうすぐ遺跡に着く、話はそこで良いだろう?ほら・・・見えてきた、あれが最近発掘され、儂が総責任者をしとる遺跡だ」
 顔を上げ外の方を見ると、遠くの方に白いテントが並んでいるのが見えた。
「着いたら二人に良いものを見せてやろう、雅彦君には喜んでもらえると思うぞ」
「ねぇーえ・・・私は?」
 それまでお土産をあさり続けていた日魅子が不満の声を出す。
「日魅子にはお土産をやっただう・・・・って・ゲゲっ!」
 見ると九峪の持ってきたお土産の大半がすでに食い尽くされていた。
「あ・ありえない・・・ゆうに二十人分は有ったのに・・・それを一人で食い尽くすなんて・・・」
「へへーん・・驚いた?九峪!まだまだ入るわよ私!」
「凄いとは思うが・・・太るぞ?絶対に・・・」
「自慢じゃないけど私ね、体重のことで悩んだことないのよね!」
 鼻高々とそう言う日魅子、それを見て同時にため息を漏らす九峪と教授。
 車はどんどん近づいていく・・・
 運命が動き出すその場所に

 弐話 完

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 こんにちは、今回の話は長々となってしまいました。
 序盤は要らないと言えば要らない部分なんですけど、ついつい書いてしまいました。
 壱話と弐話を一つにしたんですが、これは私の文章力の無さで場面分けがうまく出来なかった結果です。
 それと、このままでは物凄い数の話数になってしまいそうだったので違和感が無い程度に一つにしました。
 最後まだ読んでくださった方がいらしたら感激です、そして、私なんぞの作品を載せてくださった管理人のけい様には感謝御礼申し上げます。
 それではまた今度の作品で、お暇でしたらご覧下さい。
 


 続編、早くもいただきました。
 父親が行方不明ですか。それもかなり気になる消え方で・・・色々とかかわってきそうで楽しみです。
 この九峪くんは結構喧嘩に強いみたいで、カッコイイですね^^ ゲーム版九峪が元になっているのかな?
 次話あたりで大きく動きそうですし、期待しています!
 葵さん、どうもありがとうございました〜(⌒∇⌒)