〜約束のために〜



作・葵様


十八話


 呆然とこちらを見る伊万里さん、その視線は俺の持つ刃に注がれている。
(ダメだ!)
 頭の中で必死にそう叫ぶが、俺の腕は止まらない。
 実際は刹那であろうこの一瞬を、俺はひどくゆっくりに感じていた。
 しかし俺がどうしようと刃は振り下ろされ。

ズンッ
  
 その刃はそんな感触を俺に与え、鮮血が飛び、伊万里さんの顔を紅く染めた。
「グゥウウァァァ」
 獣のような声を上げる俺、そのまま視線は短刀に釘付けになる。
 そして・・・
「どッどうしたんですか九峪さん!!」 
 俺と同じ場所を見詰めながら、笑えるほど動揺する『伊万里さん』。
 俺達二人の視線の先では・・・
 右手に持つ短刀が『俺自身の左手の平』を貫いていた。
 脳を突き上げるような痛みを感じながら、内心ホッとする。
 あの時、つまり俺の手が振り下ろされる瞬間。
 俺はとっさに空いていた手を使って伊万里さんに迫る凶刃を防いだ。
 代償として左手は完全に犠牲になったけど、使い物にならなくなったわけじゃないから問題ない。

 あのまま伊万里さんを傷つけていたら一生後悔する事になっていただろうから。
 それを左手だけで防いだんだ、それだけで十分さ。
 だから俺は笑って伊万里さんに声をかけた。
「久しぶり伊万里さん、こんなとこで何してるんだ?」
「えっ?」
 状況からして異常な問いかけにぽかんとする伊万里さん。
 その隙に左手を貫通している刃を一気に抜き放つ。
「ぐっ」
 かなりの激痛が奔る、だけどなんとか表情には出していない筈。
 そしてすぐに手ぬぐいで傷を隠した。
 そこまでの一連の行動を合わせても五秒足らず、伊万里さんには気取られていないようだ。
 そのことに安堵する。
「それで? 伊万里さん達はこんな所でなにしてんの?」
 こんな時は相手に考える暇を与えない事が重要だ。
 そうすればなし崩し的にさっきの事を揉み消せるかもしれない!
「え、えっとですね・・・」
「ああそうだ! さっきの舞台見てくれた!?」
「あ・はい見ました・・・」
「そういえばさ、伊万里さん誰と」
 来てたの? と聞こうとして固まってしまった。
 勢いに任せて喋ってたけど、俺を追いかけていた一人が伊万里さんってことはもう一人も味方って事だよな?
<当然そうなるな。 もっとも私は何度も注意したんだが・・・>
 うっさい
 聞こえなかったんだから仕方ないだろ。
 それより誰が一緒だったのか聞いておかないと。もし『アイツ』だったらかなり厄介な事に・・・
 と、思考はそこで止まった、いや・・・止められた。
「貴様・・・よくもやってくれたな・・・」
 苦しげな声と首筋に以前も感じたひんやりとした感触。
 ・・・どうやら嫌な予感は的中、しかもおまけ付きらしい。
「よお・・・久しぶりだな」
「・・・あんな事をしておいて口を開けばそんなことか?
 貴様・・・私をなめているのか?」
「いやいや、短気は体に良くないって知ってるか?」
 そう言って俺は首筋の刃をつまみ、体から離す。
「貴様にそんな事を言われる筋合いは無い」
 離れた俺を睨みつけながら、短刀を腰に挿す。
 そして可愛げのかけらも無い答えを返してくるのは、伊雅さんにしたがっていた乱波、清瑞だ。
 俺的に言わせて貰うと『氷の女』とか『やさぐれ女』って感じ。
 まぁ、俺の背後を取ったり、副王付きの乱波をしているだけあって間違いなく超一流の技術を持っている。
 その上美人だ、残念ながら本人の態度や雰囲気のせいであまり表に出ないが、笑えばかなり可愛いと思う。
 ・・・本人に聞かれたら殺されるかもしれないな。
 もっともそれを言ったら伊万里さんだって美人だし、星華さんや宗像三姉妹、それに一座の皆も美人揃いだ。
 ・・・・・・・・・今気づいたんだが、俺って何気にかなり良いポジションに居るのか? もしかして・・・。
「――― いているのか? おい! 九峪聞いているのか?」
「ん!? ああ・・・悪い、少し考え事してた」
 いかんいかん、目の前でこんな事を考えていたのがバレたらそれこそ殺される。
 しっかり集中しよう。
「全く・・・もう一度だけ説明するから良く聞け! 良いな?」
「ん、分かったよ」
「よし、一気に話すから良く聞いておけ」
 そう前置きをして、清瑞は話し始めた。
 偶然俺が舞台に出ている事を聞いて様子を見に来たということ。(これは以前清瑞にしばらくの間当麻の街に居ると言った事と、俺自身の格好から予測したらしい。)
 そして俺本人であるか確認するために追いかけてきたという事。(遠巻きに見ていたのと観客の熱気に当てられてきちんと確認できなかったらしい)
 それから突然の俺からの奇襲とも言える攻撃、それに対する非難の嵐。
 全部で結構な時間、清瑞の話は続いた。
 結局話の五分の一が清瑞の文句になったのはご愛嬌だろうな。
<・・・聞いていて思ったのだが>
 俺が何か言おうとしたのと同時に焔がそう囁いてきた。
<どうして二人はお前に呼び掛けてこなかったんだ? そうすればこんな事にはならなかっただろうに>
(それもそうだな。 聞いてみるか)
「なぁ一つ聞きたいんだけどな」
「ん? なんだ?」
 声をかけた途端、清瑞ははっとしたように口を閉じる。自分でも話し過ぎたと思っているのか、彼女の頬が少し赤くなっていた。
「なんで声をかけてくれなかったんだ? 一声かけてくれれば俺だってあんな真似しなかったのに」
 そう言うと清瑞は不快気に顔を歪めながら口を開く。
「私が声をかけ様とした時に九峪さんが走り出したんで、声をかける暇が無かったんです」
「・・・そういうことだ」
 が、清瑞が何か言う前に伊万里さんがそう答えてきた。
 自分の台詞がとられたせいで意味も無く開いていた口を清瑞は何気ない言葉で誤魔化した。
 その様子が面白くて思わず頬が緩む、だけど清瑞がそんな様子を見逃すはずも無く。
「何が面白いんだ貴様は?」
 物凄い目つきで睨みながら短刀を首に突きつけてくる。
「ハッハッハッ 何デモナイデスヨ清瑞サン」
「ならなんだ? そのおかしな言葉遣いは?」
 清瑞の目が更に細くなり、殺気がこぼれ始める。
 もっとも殺気を出してる時点で本気じゃないんだろうけど、今の清瑞は迫力がありすぎる。
「何デモナイデスッテバ、ダカラソレヲ退カシテ下サイ」
「・・・・・・」
 じっと視線を外さない清瑞に息が詰まるのを感じ始めた時、救いの女神は舞い降りた。
「あの・・・清瑞さんそれぐらいにしておいた方が良いんじゃないですか?」
「・・・・・・そうですね」
 伊万里さんの言葉に、意外にもあっさり退く清瑞。
 けど視線は変わらない。
 ただひたすらに俺の事を何か見極めようとしているかのようだ。
「さっきから何で九峪さんを見てるんですか? 清瑞さん」 
 不意にそれに気づいた伊万里さんが不思議そうに尋ねた。  
 続けて爆弾が投下される。
「そういえば九峪さんと清瑞さんって仲良いですよね」
「なっ!?」 「はっ?」
 予想外の発言に流石の俺も固まってしまう。
 しかし伊万里さんは止まらない。
「だってさっき会ってからずっと二人だけで話してるし、なんか入りづらかったんですよ?」
 拗ねたように話す伊万里さん・・・・・・可愛いかも。
 ・・・ってそうじゃなくて!
 
 確かにさっき清瑞に背後を取られてからずっと話していたし、清瑞の事は嫌いじゃない。
 けどどう考えたって清瑞は俺の事を嫌ってるだろう? それはもう徹底的にさ。
 どうしたらそんな考えがうかぶんですか伊万里さん!?
<いや私から見てもお前達は仲がいいぞ>
(そうか? 自覚は無いんだが・・・)
<そうなのか? 少なくとも私より仲がよさそうだぞ。 ・・・という訳でもっと私と話せ。>
(いや・・・意味分かんないし)
 などと俺たちが心の中で漫才をしている間に清瑞が再起動して伊万里さんに食って掛かっている。
「な・何を言ってるんですか!? 何故私があんな男と仲良くならねばならないのですか!?」
 慌てて顔を赤くする清瑞・・・・・・良い、なんか凄くいいぞ。
 そんな事を考えているうちにはっとした。
 ・・・俺ってもしかして節操なしなんだろうか?
 一人で自分につっこんで少し凹む。
<いまさら気づいたのか?>
 心底呆れたような声に更に凹む。
 お前にそんな事言われたくないわ!
<そうか・・・それはそうと九峪>
(なんだよ?)
<声に出ていたぞ>
「えっ?」  
 慌てて顔を上げると伊万里さんと清瑞がこっちを見ながら呆気に取られていた。
「ふん・・・悪かったな『そんな事』を言ってしまって」
「す、済みません。私なんかがしゃしゃり出てしまって」
 同じように言いながら、清瑞は怒ったように、伊万里さんはひたすら謝っている。
「い、いや何でもないんだ気にしないでくれ」
<・・・それは無理があるんじゃないか九峪>
(うっさい! 元はといえばお前のせいだろうが!!)
 いちいち嬉しそうに突っ込んでくる焔に一喝しながら、俺はどうにか誤魔化そうと必死になる。
「えっと・・・そういえばさ二人は当麻の町に何をしにきたの?」
「あっそれは「伊万里様! 九峪少し待っていろ」・・・えっ? 清瑞さん何をするんですか?」
 唐突に清瑞が伊万里さんを連れて少し離れた場所に行ってしまった。
「・・・なんなんだ?」
 あまりの唐突さにあっけに取られてしまう。
<何か聞かれたくない事情でもあるのではないか?>
 ああ・・・なるほど、確かに有りうる、っていうかそれだな。
 微かに聞こえる声に「部外者にはまずい」とか「九峪さんなら大丈夫」とか「兎に角今は控えて」みたいな言葉からして断言できる。
 で、しばらくして話がまとまったのか二人が戻ってきた。
 見ると伊万里さんの表情が少し暗い、どうしたんだろ?
「・・・・・・すみません九峪さん。亜衣さんに口止めされていてお話できないんです」
 あ、亜衣さんか、なら仕方ないな。
 どうやら俺に話せないことで自分を責めているらしい。
 なんというか・・・伊万里さんらしいんだけど。
「仕方あるまい、今の貴様は部外者でしかないんだ。我々にも立場がある」
「分かってる、仕方ないって事ぐらいさ」
 答えてから清瑞がフォローしていることに気づいた。
 あまりに自然なんで気が付かなかったけど、さっきのって俺に気を使ったんだよな?
 ・・・・・・意外だ。
 清瑞に対して思いっきり失礼な事を考えていると、伊万里さんが気落ちしているのに気づいた。
 
 「伊万里さんも気にしないで良いよ、今の俺は、っていうか元々俺は部外者だしね」
 そうそう忘れがちだけど、俺って耶麻台国とは何の関係も無いんだよな。
 血筋やら家柄なんかを気にする時代じゃ信頼される方が難しい立場な訳で・・・
 むしろ俺のことをこうやって信頼してくれてる伊万里さんが特別なんだよな。
 一座の皆はなにやら裏がありそうだし。
 伊万里さんみたいに俺の事を無条件で信じてくれてる人って他に居ないんじゃないか?
 そう考えて少し寂しくなった、そこへ不意に頭の中の声が響く。
<私を忘れるんじゃない! 私は誰よりもお前のことを信じてるんだぞ!!>
 力強く、はっきりと響く声。
 それを聞いて落ち込んでいた気分が少し浮き上がる。
(おっとそうだったな、すまないお前を忘れてたよ)
 そう・・・俺にとって今一番信頼できる奴を忘れてたよ。
 そしてそんな奴がいる事をしっかりと自覚できて、自然と笑みが浮かんだ。
「伊万里さんが気にする事じゃないよ、俺が信用されるかされないかは俺の行い次第だし。
でもまっ、俺が俺なりにやって駄目だったらその時は慰めて欲しいな」

 言ってから更に笑みを深くする。
 そんな俺を見て伊万里さんの表情が緩んだ。
「・・・やっぱり・・・・・・九峪さんは変わってませんね」
 でも、その顔は笑みを浮かべながらどこか辛そうで、悲しそうで、なにより自虐的に見えた。
「なにか・・・あったの?」
「・・・ええ」
 笑いながら頷く、けどやっぱりその笑みは陰があった。
 聞いた方が良いのか迷っていると、不意に伊万里さんが清瑞に耳打ちで何か言った。
 それを聞いて清瑞が顔をしかめて何故か俺の事を睨む。
「・・・わかりました」
「すみません無理言ってしまって・・・」
「いえ・・・」
 話しながら清瑞はずっと俺のことを睨み続ける。
 今度は単純に気に食わないって感じだ。
「伊万里様に何かしたらその首掻っ切るからな」
 と意味不明なことを言って次の瞬間姿が消えた。
 う〜ん 相変わらず良い腕してるね。
 でもなんで伊万里さんを置いて行ったんだ?   
「どうかしたの?」
 疑問に思った俺は伊万里さんに聞いた。
「いえ、少し九峪さんとお話がしたかったのでちょっとお願いしたんです」
「話?」
「はい。 ・・・歩きながらで良いですか?」
 俺が頷くと伊万里さんは俺の前を歩き始めた。
 しばらくの間、星空の下で静かにただ歩き続ける。
 俺と伊万里さんの間を少し冷たい風が通り過ぎる。
「・・・分からなくなったんです」
 何の前触れも無く、伊万里さんが口を開いた。
「何が?」
 俺は問う。
「私自身が、です」
「・・・どういうこと?」
 空を眺めながら、伊万里さんは言葉を選ぶように話す。
「九峪さんと別れてしばらくして、私たちはある方と合流したんですけど、その時に私の生まれ、というか私に流れる血筋が分かったんです」
 その言葉で俺は伊万里さんの悩みに気づいた、それは・・・
「それで分からなくなってしまったんです。
 私は・・・何者なのか? どうやってこれから生きていけば良いのか?
 上乃や仁清とどうやって話せば良いのかも分からなくなってしまって・・・ここ最近二人とは顔も合わせていません。
 今まで一緒に居て顔を合わせない日なんで無かったのに・・・二人がどこか遠くに言ってしまったような気がするんです」

 自分の出生―――火魅子の資質―――。

 それを知ってしまったんだ。
「・・・それで? 俺にどうして欲しいの?」
「えっ?」
 俺の問いかけに伊万里さんが硬直する。
「慰めれば良いの? 否定すれば良いの? 同情して欲しいの?」
「そ・それは・・・」
 明らかに動揺している伊万里さん。
 焔に過去を知られた時の俺もこんな感じだったんだろうか?
 ふとそんな疑問が浮かんだ。
「・・・結局さ自分しかいないんだよ。 そうだろう?
 俺が今ここで何を言ったってそれは単なる『言葉』でしかない。
 伊万里さんが求めているのはそんな物じゃないんじゃないのかな?
 『自分が一体何者なのか?』
 その答えを出せるのは自分だけなんだと思う、その悩みは自分で乗り越えるしかないよ」
「・・・・・・」
 俺の言葉を伊万里さんは黙って聞いている。
 そして俺は自分で笑いたくなった。
 俺自身が悩んでいるくせに何えらそうな事を言っているんだろうか?
 でも、俺自身が出せていない答えだからこそ伊万里さんに答えて欲しかった。
 我ながら本当に勝手なことを言っている。
「さっき言ったよね?
 自分の生まれが分かったってさ。
 それでさ・・・何が変わったの?」
「・・・変わった・・・もの?」
 呆然と俺の言葉を反復する。
「少なくとも俺から見て伊万里さんは何も変わってないよ。
 だから変わったのは伊万里さんじゃなくて、伊万里さんを見る周囲の目。それが原因で伊万里さん自身の意識も変わってしまった。
 上乃さんや仁清君が離れたんじゃなくて伊万里さんが離れたんじゃないかな」
「変わったのは・・・私の意識? 離れたのは私?」
「そう。自分は王族なんだ、だから王族らしくしなくてはならない、そうでないと皆の期待に応えられない。
 そう考えてる半面で、それを否定する伊万里さんも居る。
 違う! 私は単なる山人の伊万里だ、周りの意見なんかしらない、てさ」

 俺の言う事を伊万里さんは体を震わせながら聞いている。
 それを見てこんなことを俺が偉そうに言って良いのか迷ってしまった。
 けどここまで来ておいて今更やめる訳にはいかないよな。
「だからさ・・・耳も目も全部塞いで考えたらどうかな?
 伊万里さんは今までどうやって生きてきた?
 伊万里さんの過去は、思い出は伊万里さんになんて言っている?
 伊万里さんは今なにをしたいと思っているの?」
「私自身の願い・・・?」
 頷く。
「周りが言ってる事なんて無視しちゃいな。
 伊万里さんがどうやって生きるかって事には誰も口を出せないはずだよ。
 だから考えてみて、伊万里さんの思い出をさ。
 そうすればきっと分かるよ・・・伊万里さんが出す、伊万里さんにとっての答えがね」
「私の答えは・・・私の中にある?」
 俺の言葉をゆっくりと租借したお陰で、伊万里さんの顔にゆっくりと理解の色が広がる。
「俺はそう思うよ」
 徐々に明るくなっていく伊万里さんの顔を見てほっとする。
 でも俺に出来るのはここまで。
 俺が教えられるのは答えまでの道のりだけ、答えは伊万里さん自身が出さないと。
 でも伊万里さんならきっとすぐに答えが出せると思う。
 どこまでも真っ直ぐな人。
 だから・・・
「答えが出たら教えてね」
「はい!!」
 返ってきた彼女らしい生気に満ちた返事を聞いて、俺は自身の考えが間違っていないことを確信できた。
 でもすぐに軽い自己嫌悪に陥る。
 希望をつかんだような表情をする伊万里さんが少し・・・羨ましかったんだ。
 そんな薄汚い想いを押しつぶして、嬉しそうにはしゃぐ伊万里さんの背中を見詰めながら、俺は背後にあった気配に声をかけた。
「・・・・・・そろそろ出てこいよ」
「・・・気づいていたのか」
 驚いたような声を出しながら姿を表したのは清瑞。
 初めに姿を消したフリをしてずっと俺の背後に隠れていた。
 おそらく亜衣さんにでも護衛を頼まれていたのだろう。
 間違いなく俺のことを監視していたのだから。
「・・・明日お前のところに行く」
「ん、分かった。昼頃に一座に来てくれ」
 会話はそれだけ。
 何の前触れも無ければ、別れの挨拶も無い。
 それだけで清瑞は姿を消した。
 でもその声に先ほどまでは無かった温かみを感じたのは俺の傲慢だろうか?
 それから十分ほど伊万里さんと雑談をしてから彼女と別れた。

 その中で分かったことがある。
 彼女たちは数日中に当麻の町を攻める。
 これはほとんど俺の勘に近いけど、そうであれば二人がここに居たことに説明が付く。
 ・・・そろそろ覚悟を決める必要があるようだ。
 彼女達が闘うのならば力を貸そう。
 俺も出来ることなどたかが知れている、けど彼女達の為に俺に何か出来ることをしたい。
 そう考えるのは偽善だろうか?
 それでも別に構いはしない。

 あの伊万里さんの笑顔。

 清瑞の無愛想な顔。

 星華さんの自信に満ちた顔。

 そして日魅子の満面の笑み。

 それらが守れるのならそれで良い。
 その決意を抱きながら見上げた星空は何よりも美しく見えた。


  ―――戦いは間近まで来ている。




後書き
 えっと今回は伊万里の話です。
 少し焔も出てますけどあくまで伊万里がメインなんです。
 小説のあの伊万里と九峪の語らいのシーンは、私にとってかなり印象に残っているお気に入りの場面です。
 その割りに話の中ではあまり無いんですけどね。
 で、このさきのなんですけど、予定が完全に狂いました。

 二十話じゃ収まりそうもありません。
 もう少し長びきそうです、お付き合いをお願いします。
 それではこのような駄文を乗せてくださって居るけいさんに感謝申し上げます。
 では次のお話しで・・・


 よかった伊万里が無事で〜。九峪危機一髪ですね。
 手のひらってのは貫通するような傷でも、神経さえ傷つけてなければ比較的早く後遺症も残らずに治る、と聞いたことあるような気もしますが(気がするだけ)・・・そんな傷をとっさに隠して伊万里とずっと話していられる九峪の忍耐力ってのは相当なもんですね^^;まあ普通の人じゃないみたいですが。
 九峪が伊万里を励ますシーンは私も好きです。名場面ですよね♪さりげに伊万里フラグ以外に清瑞と焔のフラグもまた立ってますが(笑)

 長くなっても一向に構いませんので、書きたいシーンは書いちゃってくださいね、葵さん。
 相変わらずアップが遅くて申し訳ありませんが・・・次もがんばってください!


質問 〜約束のために〜第18話の感想をお願いします

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