まず、今回の話はかなりオリジナル色の強い話です。  
原作の雰囲気を壊すような話は嫌いという方、また残酷な描写は 嫌いという方は読まないで下さい。
 それと先に言わせて頂くとこれは私の二次SS「約束のために」 の中での九峪の話です、その為原作とは一切関係のないキャラが出 てきますが、その辺りは二次作品だと割り切って読んでください。
では、それでも構わないという方だけお進み下さい。



〜約束のために〜



作・葵様


十五話


 俺、九峪雅彦は今暗闇の中に居る。
 ついさっきまで志野さんや織部たちに無理やり宴会に付き合わされていた筈なんだけど、
 今の俺の周りには誰一人としていやしない。
 何も見えない闇・・・だけど俺は‘ここ’を知っている。
 あの誰だか判らない『影』に出会った場所ではない、この闇にあるのは俺の意思だけだ、
しかしあそこには何故か安らげる何かが在った。
 ここは俺の見る夢、俺の中に眠る忌まわしい記憶を見る場所。
「・・・始まったな」
 俺のつぶやきと共に周りの闇が消えて‘あの時’の風景を映し出す。
 幾度と無く見続けたその光景はそれでも尚、俺の心を深くえぐる。
 見たくなんて無い!だけど目を逸らす事は出来ない・・・当然だ、ここは俺の夢の中なんだから、
これを見ることはどこかで俺自身が望んでいるのだろう。
‘あの時’何も出来なかった俺の唯一出来る贖罪として。
 考え込んでいる内に既に周囲の風景は一変している。
俺の周りは立派な広葉樹に囲まれ地面は露出されたままだ。
 そして目の届く範囲には星の光以外の明かりは存在しない。
この事がこの場所が文明からかけ離れた所にある事の証明になるだろうな。
 ザッザッザッ
 何かが走る音がする、最も確認する必要なんてないが。
「ハァハァハァ・・・・・・」
 一人の女性を抱え俺の目の前を駆け抜ける男・・・それは俺だ。
 自然と俺の視点は、この走っている『俺』のすぐ後ろに付く。
「ハァ・・・ハァ・・・クソっ! 何でこんな事に!?」
 悪態をついても何も変わりはしないのに、我ながら情けないがこの時の俺にはそうする事しか出来なかった。
 その間もその腕に抱える女性は冷たくなっていく。
「姫!姫!もうすぐで橋に着きます!それを越えれば医者が、治療が出来ます!それまで頑張ってください!」
「・・ヒ・・コ・」
「何ですか!?」
「・・・・」
 聞き返してもその声はほとんどかすれていて聞き取れない、『俺』は舌打ちをして走るスピードを上げる。
 全身が悲鳴を上げてたがそんな事は無視した。
「・・・・見えた!」
 前方を見ると森が絶えてるのが分かる、森が終わりその先にはつり橋がありそれを渡ればすぐに街に着く。 
 そして瞬く間に森を抜け、そして眼前の風景に絶句した。
「・・・橋・・・が・・・な・い・・・?」
 そう、あの時につり橋は既に切り落とされていたんだ。
「これじゃあ・・・帰れない・・・」
「・・・ヒ・・・コ・・・」
「っ! 何ですか!?」
 呆然としていた『俺』に彼女が声をかけてくる、そのかすれた声を何とか聞こうと『俺』はかがんで耳を近づけた。
「・・・に・・・・・・・・て」
「えっ!? 何ですか?」
「に・・・・・げ・・・・」
「に・げ・て・・・逃げて・・・・・?何から逃げろって言うんですか!?」 
「・・・・・・・」
 彼女はそれだけ言うとまた意識を失ってしまった。
 彼女が言いたかった事が何なのか気になったが、この時の俺はそれよりも彼女の容態が気になった。
 そして次に気になったのが――――
「そうだ!あいつは!?」
 この時森に来たのは、彼女と、『俺』と、彼女の婚約者、そして彼女の妹、計4人だった。
 しかも彼女の婚約者は医療の心得があると彼女が言っていた。
 この時の『俺』は医療なんて全く知識として持っていなかったから、彼に頼るのは当然だった。
 それが最悪の選択だとも知らないで・・・。
 ガサッ
「誰だ!?」
 背後で起きた物音に過敏といえ反応をする、何度見ても思わず笑ってしまう、それほどその顔は脅えきっている。
 まぁそれも仕方が無い、この『俺』は俺とは違い自分の身体について何も知らないのだから。
 せいぜい‘他の人とは少し違う’程度にしか思っていなかったのだと思う。
 そして物音の正体が出てくる、それは小さくて白い――
「う・ウサギ?」
 アハハハ・・・笑いが抑えられない、『俺』は20センチにも満たない小動物にあんなにも怯えていたのだ。 
 ただ呆然とウサギを目で追いかけていた『俺』は背後に近づいてきた人物に気付かない。
「こんな所に居たのかい?全く・・・探す身にもなってくれよ」
 バッと勢いよく振り返った先にいた人物は『俺』の探していた人。
 それは彼女の婚約者。
「あ・あんたは!?今までどこに居たんだ!いや、やっぱりそんな事は良い、彼女の様子がおかしいんだ、早く診てくれ!」
「ふぅ・・・なんだい?その態度は、それが人にものを頼む態度なのかい?」
 『俺』の態度に反して、ゆったりと余裕を持った様子に『俺』は激しい苛立ちを覚えた。
「そんな事はどうでも良いだろう!この人はこの辺りの領主の娘なんだぞ!彼女に何かあったらどうなるか、アンタだってわかるだろう!?」
「・・・そうだね、確かに彼女に何かあったら大変だろうね。
何でもさる大国がこの辺りの土地を欲しがっているそうだから、そうなればこの辺りはどうなるだろうね?」
「っこの!分かっているなら速く彼女を診ろ!」
「ん〜・・・でも僕としては彼女に回復されると困るんだよね」
「・・・何だって?」
 その時になって、ようやく『俺』はこの男の手に握られていた黒い塊に気付いた。
「だから、その人にはここで死んでもらいたい、そう言ってるんだよ」
 そう言いながらその手に持った黒光りする銃をこちらに向ける。
「お前!なんのつもりだ!!」
「しつこいな、君も。言っただろ、ある大国がこの辺りの土地を欲しがってるって。
でも現領主とそこの跡継ぎさんはどうしてもこの土地は譲らないって言っててね。
だけどそうなると僕が困るんだよ」
 ふぅ、とため息をつきながらそう言う。
「もう前金は貰っちゃってるんでね。断れないんだ、だから悪いんだけど君と彼女には死んでもらうよ」
「お前は!彼女の婚約者だろ!!」
「ああ、彼女には婚約者である僕の幸せの為に死んで貰うんだよ」
 それが当然のことであるかのように言いきる、その態度に『俺』の中で何かが蠢き始める。
「それにね、彼女の妹も既に納得済みさ」
「なっ!?」
「住民達もね、少し金をちらつかせるか、ちょっと痛い思いをさせただけで簡単に素直になってくれたよ。
まぁ中には進んで手伝ってくれた人も居たしね」
 『俺』には信じられない事を淡々と話す、ふと背後にも人の気配を感じた。
「ほら・・・自分の目で確認してみな?」
「あら、まだ終わってないの?さっさと殺しちゃいなさいよ」
 そこには『俺』と彼女をまるで汚物を見るかのような目で見る彼女の妹と、見覚えのある男達が立っていた。
「見れば分かるだろうけど、彼らがさっき言った協力者達さ」
 新たに現れた人物達は全員が猟銃を持ち、明らかに殺気を放っていた。
「さっさと終わらせちゃいましょうよ」
 彼女がいつも可愛がっていた妹は、彼女を殺すことになんら躊躇いを持っていなかった。
 そして『俺』が反応する前に無造作にその手に持つ銃の引き金を引いた。
 パァン
「!」
 彼女の身体はその衝撃で一瞬だけ跳ね・・・動かなくなった。
「・・・・」
『俺』はその事にただ見ている事しか出来なかった。
「あらら、意外とあっけないな・・・それじゃあ君も死んでくれ」
 銃声が響く。
「っが!」
 背後からの衝撃に『俺』はうめきその場に倒れこむ、男は『俺』に歩みより。
「少し心配だから、一応ね」
 二度三度、そして「おまけだ」という言葉と共に計5発の銃弾が『俺』の身体に叩き込まれる。
「さてと・・・次は領主様だ」
「お父様はどうやってやるの?」
 男に走りより当然の様にその腕を抱き寄せながら尋ねるその顔には罪の意識など微塵も感じられなかった。
「う〜ん・・・やっぱり毒でも飲んでもらおうか」
男の腕を抱き幸せそうに笑いながら話すその中身は、実の父を殺す方法。
「それじゃあ私の出番ね、私がお茶でも淹れれば何の疑いも無く飲むに決まってるんだから!」
 あっさりと父親を殺す事を決めた彼女は、ふと思い出したかのようにこちらを見る。
「ところでこの二人の事はどうするの?」
 倒れこみ血を流し続ける『俺』と彼女、男はそれを見て少し考え込む。
「そうだな、渡っている途中でいきなりつり橋が切れ、二人とも谷に落ちてしまった・・・っていうのが良いんじゃないかな」
「そうね・・・おバカなお姉さまにはピッタリね!」
 口元を抑えながら残酷な笑みを浮かべそう言い放つ、その言葉に『俺』がほんの少しだけ反応した。
「・・・・・・う・・・・・・・あ・・・・?」
 それに気付いた男が眉を持ち上げ驚いたように呟く。
「凄いな、あんなに撃ってあげたのにまだ生きてるよ」
「あら?ホントね」
 彼女の妹はそう言いながら『俺』に歩み寄ってくると、そのまま『俺』を踏みつける。
「ヒコ?私の誘いを無視して、婚約者のいたお姉様に横恋慕し続けた貴方には相応しい最後ね。
それとも命の恩人と一緒に死ねるんだから貴方としては本望かしら?」 
「へぇ・・・そうだったのかい?」
 その言葉に、男が意外だった、といった感じの声を上げた。
「なんだ・・・君は彼女の事が好きだったのかい? それならそう言えば彼女くらいあげたのに」
 男が嘲笑と共に放った言葉に『俺』の中で蠢くものが反応した。
―――カノジョクライ?
「ホントに貴方もバカよね、古臭い伝統とやらに人生を捧げるような愚かな女に尽くそうとするんだから」
―――カノジョガオロカ?
「君たちが死ねば僕達は幸せになれるんだ、君達は死ぬべきなんだよ」
―――オレタチハシヌベキ?
「ええ、その通りさっさと死んでくれないかしら?」
―――フ・・・・・ザ・・・ナ
「それじゃあ、そろそろ僕らは行かせて貰うよ? まだやることがあるんでね」
「そうね!今度はお父様、次もこんな風に簡単だと良いんだけど」
 そういって二人は手を取り合って去ってゆき、その後ろに取り巻き達がぞろぞろと付いていく。
―――フザケルナ!カノジョガオロカ? カノジョガシヌベキ?
―――チガウ!!!
―――ホントウニ オロカナノハ
―――ホントウニ シヌベキナノハ
 そして『俺』の体に変化、いや『異変』が起こる。
―――キサマタチダ!!!!
 次の瞬間取り巻きの一人の頭が吹き飛んだ!
「な」
 何か言いかけた男の胴体が吹き飛び内臓が飛び散る。
 振り返ろうとした男の両腕が引き千切られる。
―――ツブレロ! クダケロ! コワレロ! キエテシマエ!  
―――シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ 
シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ シネ 
 一分後
 『俺』の周囲には内臓や肉片等の『元人間』が転がっていた。
 『俺』以外に生きているのは・・・あの二人だけだ。
「「ヒっ」」
 『俺』が見つめる、それだけで二人とも死んでしまいそうな顔をする。
 それが・・・・・・たまらなく『快感』だった。
ザッ・・・・・ザッ・・・・・・ザッ・・・・・
 わざとゆっくり歩み寄る、『俺』が一歩踏み出すたびに二人の表情に絶望が表れるのを『俺』は最高の気分で見つめていた。
 顔が自然と笑みをつくる、それはとても嬉しそうな子供のような、笑顔で虫の羽を引き千切る無邪気な残酷さを宿した表情だった。
『俺』の笑顔を見た途端に緊張の糸が切れたのか男がいきなり女を突き飛ばした。
「ひぃいいい、ゆ・許してくれ、俺は悪くない!全部この女が考えたんだ!」
 女を指差し叫ぶ。
―――この『男』は何を言ってるんだ?
『俺』は迷わず恐怖に固まる女の首をはねた。
―――悪いとか悪くないとか‘そんな’ものは関係ないのに。
 女の首から血が噴き出すが『俺』は構わず進む。 
「そ-その女が言ってきたんだ!『金が欲しくないか?』ってだから俺は悪くない!悪くないって言ってるだろ!?」
―――ギャアギャア五月蝿いな
 恥も外聞もなく泣き喚く男に『俺』は不快そうに眉をしかめる。
「か・金なら幾らでもやる!だから来るな!!来ないでくれ!?」
―――黙れ
「嫌だぁ・・・死にたくないぃ、死にたくないよぉ、命だけは!命だけブ」
―――黙れって言ってるだろうが
 男の顔を鷲掴みにしてそのまま持ち上げる、男が何か喚いているがそんなものは無視する。
―――『これ』が終わったら次は橋の向こうだ
 ミチミチミチ
 男の頭蓋が嫌な音を立て始める。
「ああああああああああああああああああああああ」
 絶叫が響く、それでも『俺』はその手を離さない。
 そのまま更に力を込める、そして悲鳴は唐突に終わった。
 グシャ
 指の隙間から脳漿と血が飛び散る。
 倒れこむ男の身体、『俺』はもはや見向きもしない。
 そして『俺』は彼女に歩み寄る。
「ごめんなさい」
 すでに『俺』の顔は元に戻っていた。
「ごめんなさい、貴女を守れなくて」
 彼女を抱き上げる、血が付くが今更気にした所でしょうがない。
 もはや全身血まみれなのだから。
「ごめんなさい、命を救われた恩を返せないで」
「ごめんなさい、貴女の大切な人達を殺してしまって」
 そのまま谷の近くまで歩いていく。
「貴女は優しいから・・・彼らの事を恨んだりしてないと思う」
「でも俺は許せなかった、貴女を傷つけたあいつ等を。貴女を裏切ったあいつ等を・・・・・・許せなかったんだ」
 下を見れば激流が流れている、いずれ彼女が見てみたいといっていた海へと辿り着くだろう。
「だから・・・・・・俺は貴女に誓う。」
「俺は守ると決めた人をもう二度と殺させやしない!全てをかけて守ってみせる」
「俺は、俺の手の届く限りの人を救うどんな手を使ってでも」
「そして俺は、幸福を捨てる・・・そしてその分誰かを幸せにしてみせる」
 彼女を抱えた腕を前に差し出す。
「見届けて下さい・・・そして出来ることなら貴女を守れなかった情けない俺に
貴女の持っていた勇気と行動力、そして優しさを分けて下さい」
 ふっと力を抜く、それだけで彼女の身体は宙に舞う。
 一瞬の停滞が終わり、彼女の身体は重力に従い谷底へと落ちていく。
「大切な姫を守れなかった不甲斐ない従者ですけど・・・・必ず俺は全てを守れる騎士になってみせます」
 地面を思い切り蹴る、それだけで『俺』の身体は十数メートル飛翔し対岸へと着地する。
「・・・・・・・そうなれたら迎えに来てくださいね?」
 さびしげに笑い街へと歩いていく。
 ・・・・・・・・さぁ、これで夢は終わりだ。
 この誓いを叶えるためにも今日も頑張るとするか。
 まぁ、叶った時には日魅子との約束は守れなくなっちまうんだけどな。
 我慢してもらおう、俺はこの約束の為に生きているんだから。
 何を犠牲にしても俺はこの誓いを必ず叶えてみせる。
 そう・・・・・・必ずだ!!!

十五話  終わり
 あとがき
 今回も長いです、しかも完全にオリジナルの話になってしまいました。
 炎戦記も始まったのにこんな駄文を書いて良いんですかね?
 まぁいったとしても二十話なんでそれまでお付き合いください。

それでは次のお話で・・・・・・・
PS
5月31日 23時10分
 ギリギリセーフ!! 前回書いた期日に間に合ってますよね!? 
ね!?
 
 



 また遅れてすいません・・・なんか最近謝罪で始まることがおおいような(爆)
 風邪と気管支喘息ダブルパンチでずっと体調崩してました。今もまだ咳が完全には抜けてない状態・・・ほんとつらいです(つД`)

 九峪の持つ「闇」の片鱗と過去の一部が明かされましたねえ。ど外道な人物たちはこうなって当然とも思いますが、なんつーかも〜、もし耶麻台国側で誰かが死んだら、こんなの抑えられるのか?な感じですが・・・過去にとらわれた彼を癒す人物は誰でしょうね。
 次も楽しみにしてます、葵さん^^

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