火魅子伝SS〜約束のために〜

零話  思い出


作・葵様


 日が落ち、空が夕焼けに染まる中、小学校低学年位の少年が歩いていた。
 彼の名前は九峪雅彦、日本生まれでありながら父親の趣味で物心ついたときから海外のあちこちを転々としており、日本に来たのは五年ぶりであった。
 海外での生活が多少変わっていたため、同年代の子供と比べると遥かに大人びていたし、無茶をする性格でもない、なにより彼の父親はそういったことに無頓着であった、むしろ彼が一人で行動することを喜んでいるようであった。
 そういったこともあり彼はこんな時間に一人歩きをしているのだ。
 物珍しさもあり九峪は相当な距離を歩いていた、一息つこうと周りを見渡すと人気の無い公園が見えた。
 なんとなく覗いてみると、そこには一人の少女が草むらに向かってゴソゴソと探し物している姿があった。
 なんとなく近づいてみるが、少女は探すことに集中しているのかこちらに気付く様子は無い。
 その様子を見つめていると九峪の気配に気づいたのか少女が振り返った。
「何みてんの!?私忙しいんだからあっち行ってよ!」
 少女が怒鳴る、しかし九峪は怒鳴られたことよりも一瞬だけ見えた涙が気になっていた。
「どうしたの?泣いてるみたいだけど・・・」
「うっさいわね!泣いてちゃ悪い?」
 少女は九峪の落ち着いた口調が気に入らないのか、さっきよりも強く怒鳴る。
「・・・・・」
 少女の態度にあっけにとられる九峪、その様子を見て満足したのか少女は草むらに向き直る。
途方にくれ、周りを見渡した九峪の目に何か光るものが入った。
「・・・・ん?何だろう・・・」
 近づいてみるとそれは変わった形の鈴であった。
 拾い上げてみると数珠のようなものが付いていて、鈴自体には羽のような飾りがついているのが分かった。
「ねえ、君が探してるのってこれ?」
 なんとなくその鈴を少女に見せながら尋ねる。
「っっっ!どこにあった?」
「えっ?そこに落ちてたんだけど・・・」
 叫びながら寄ってくるという少女の予想外の反応に、少し驚きながら答える。
「えっ!そうなの?・・・あいつらぁ騙したなぁ・・・後でどうしてやろうかしら・・・」
 拳を握り締めながらうめく少女。
「ねぇ・・・何が何なのか教えて欲しいんだけど・・・」
 何かを呟き続ける少女に控えめに聞く九峪。
「えっ・・・っていうか聞いてくれる?私も話したかったんだっ!」
 にっこり笑いながら言う少女の顔は、怒鳴っていた時とは別人のように輝いていた。その笑顔に少しだけドキリとする九峪、しかし少女は九峪の様子に気付くことも無くマシンガンのごとく喋った。


 名前は姫島日魅子だということ、両親はおらず考古学者の老人に育てられていること、そして九峪が見つけた鈴が宝物だということ等、その鈴を隠した奴らがどんなに酷い事をしてきたか、など事を九峪に話した。
「私ね、自分の名前好き・・・だけど日魅子っていう名前のことで馬鹿にされるのは大嫌い、鈴を隠した奴らもその事でいつも馬鹿にしてくる奴らなんだもん、きっと明日もあいつら私のこといじめるに決まってる」
 話しているうちに興奮したのか日魅子の目には涙が浮かんでいた、それを見た九峪は言いようも無い気持ちに襲われた。
「・・・ってあげる」
「えっ?」
(この子の涙は見たくない)
 ただその思いが九峪を動かしていた。
「僕が守ってあげる、日魅子のことそいつらから守ってあげる」
 その言葉にポカンと口を広げる日魅子
「ホントに?ホントに守ってくれるの?」
 信じられない、といった様子で尋ねる日魅子に力強く頷く九峪。
「うん・・・約束する、でも・・・・」
 そう言って自分の事を話し始める九峪、世界各地を父親と旅していること、いつまで日本にいられるか分からないこと、そういったことを全て話した後九峪は日魅子に頭を下げた。
「ごめん!さっきはああ言ったけど、日魅子のこと守れないかもしれない」
 日魅子がまた怒るんじゃないかとドキドキしながら日魅子の顔を見る。
「なによそれ!それじゃ意味無いじゃないの!」
 そう怒鳴りながらも日魅子は笑っていた。怒られると思っていた九峪はあわてて言った。
「だ・だから何か日魅子の言うこと一回だけ聞くよ、何でもいいから言ってみて」
「何でも?なんでも聞いてくれるの?」
その言葉に手を唇に当て考え込む日魅子、少したって日魅子は何かを思いついたように両手をたたいた。
「それじゃあ・・・今は駄目ならおっきくなった時に強くなって私のこと守るぼでぃがーどになってよ!」
 人差し指をピンと立てにっこり笑う日魅子
「・・・うん!分かった!約束する・・強くなって日魅子のこと嫌な事から守ってあげる!」
「じゃ・・・指切りしよう!」
 勢い込んで頷く九峪に小指を出す日魅子、九峪も慌てて手を出す。
「ゆ〜びきりげんまん・・・」
 近くに日魅子の顔があることに気付き俯く九峪。
「・・・飲〜ます、指切った・・・それじゃ約束したからね!」
そう言ってにっこり笑う日魅子につられて九峪も笑う。
そうして少しの間だけ笑いあう二人・・・


「雅彦じゃないか!何してるんだ?こんなところで・・・」
 その声に二人が振り向くと逞しい中年男性と白髪の目立つ老人が立っていた。
「父さんっ!」 「おじいちゃんっ!?」
 九峪と日魅子が同時に叫ぶ、驚く二人に歩み寄ってくると九峪の父親が口を開いた。
「またお前はこんなところまで歩いてきたのか?」
 九峪の頭を撫でながら呆れるように言う。
「ほぅ・・・この子があの時わしに見せたお主の息子か?似とらんのぉ、雅孝?」
「教授こそ、この子が例の自慢のお孫さんですか?」
 日魅子を見つめる九峪の父雅孝、そんな父に九峪が尋ねる。
「父さんは日魅子のおじいちゃんと知り合いなの?」
「ああ、昔の話だが色々助けられたんだ・・・その時からの付き合いさ、もっとも今日までなんの連絡も取ってなかったがな」
「まぁ、腐れ縁とも言うがな・・・まさかあの坊主がこんなに逞しくなるとは思いもせんかったわ」
 九峪の質問に答える二人。
 「それでお前は教授のお孫さんと二人でなにしてたんだ?」
 「えっ!べ・別に何もしてないよ」
 露骨にうろたえる九峪にさらに追い討ちがかかる。
「その割りに仲が良さそうだったけど?」
 ニヤニヤしながら聞く雅孝、背後では「自分の子供に何をしとるんだか」と老人が呆れている、しかし言われている本人はまったく気にしていない。
 「九峪は私の鈴を見つけてくれたの!」
 助け舟はそれまで黙っていた日魅子が出した。
 「何!?またやられたのか日魅子?」
 その言葉に反応する老人、老人に頷いてから日魅子は続けた。
 「うん、またあいつらにやられたんだけど・・・九峪が見つけてくれたの」
  日魅子のハッキリとした言い方に少しだけ赤くなる九峪。
 「それでね・・・おっきくなったら私のこと守るぼでぃがーどになるって約束したんだよ」
 その約束が嬉しいのかニコニコと笑っている日魅子、それを見た雅孝が九峪に向かってさらに笑みを深くする。
「へぇ〜・・・雅彦ぉ〜お前もなかなかやるなぁ〜」
「うるさいっ!そんなんじゃないよ!」
 父親の言葉に顔を真っ赤にして答える九峪
 そんな九峪を見て、老人、雅孝、日魅子までが笑う。
「もぉ〜・・・なんだよ!皆して」
 膨れっ面になる九峪、それを見てさらに笑い声が大きくなる。
 (しかし、いつも大人ぶって落ち着いてるこいつが、こんなうろたえるなんてな・・・)
 それから少しの間立ち話が続いていたが、星が見えてきたこともあり挨拶もそこそこに別れる事となった。
「それじゃあ教授生きてたらまた来ます」
「死ぬんじゃないぞ・・・雅彦君の事もあるんだからな」
 その言葉に苦笑いを浮かべながら遠ざかる九峪親子、
「約束忘れないでよっ!?絶対だかんね!」
 遠くに見える九峪の背中に叫ぶ日魅子、その声に手を振って応える九峪。
 二人の約束がこのあとでどうなるかも知らずに。

 零話 完

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 こんにちは元未熟者こと、葵です(見習いを「青い」というのからきてます)

 こんな駄文を送ってしまい申し訳ありません。

 掲示板にあれだけお世話に成りながらこんな文章で申し訳ありません。

 私、謝ってばかりですね(^^)送らせて頂きますが当分PCに触れられないので、もしちゃんとした文章として扱っていただけたとしても、お礼を言わせてもらうのは遅くなると思います。

ゆえに、つまらなかったら即ゴミ箱送りにして頂いて結構です。

それでは・・・・


葵さんからSSをいただきました〜!!

子供の頃の出会いからとは、新しい形ですね。九峪の父親登場とかも。九峪君、なかなかかわいい性格みたいで♪今後どう展開していくのか、楽しみですね^^
遅くなっても構いませんので、続きをお待ちしています。

葵さん、どうもありがとうございました(^o^)