〜約束のために〜

 幕間 月下の語らい



作・葵様


  


 伊万里さんと清瑞の二人と会った後、俺は木陰で休んでいた。

 あの後、つまり二人に会ってから一座に戻った俺を待っていたのは、座長である志野さんの
 
 「遅いです! どこに行ってたんですか!?」
 
 というお説教と織部主催による『今日も今日とてお酒が美味い! 興行成功祝賀会!!』の連続パンチだった。

 そういう訳でお疲れの俺はこんな場所で一人ゆっくりまったりくつろいでるのさ。

<九峪調子はどうだ?>

 そんな俺に唐突な焔の問いかけ。

 訂正、独りじゃなく二人で、が正確かな?

「ん〜?」

<呆けた返事をするな。
 先ほどの怪我の具合を聞いてるんだ!>

 一瞬なんのことだか分からなかったけど、焔に言われてすぐに思い出した。

「ああ。あれね。
 大丈夫、問題ないよ」 

<そうか・・・良かった>

 焔の呟きにとても強い安心感を感じた、自分をそこまで心配してくれると思うと俺でも嬉しくなる。 
  
「俺の体は丈夫だからな、あれぐらいならすぐさ」

 そう言ってかざす手には傷痕でしかない傷がある。

 結構深かったはずの怪我も俺の体だとこんなもの。

 全く持って異常な体だな。

 ・・・いやちょっと待て、『傷痕が在る』?

 おかしいぞ、いつもならあれぐらいの傷塞がっている筈なのに、まだ傷が残っている?

 どういうことだ?

 ・・・・・・・・・いやいま考える事じゃないか、それにどうせすぐに治るのは一緒なんだ、気にすることじゃない。 

 そんな事より気になる事があるな。 

「っていうかさ、俺が言わなくてもお前なら分かるんじゃないのか?
 ある意味俺より俺の事分かってるだろお前って」

<う・うむその通り、私は誰よりもお前の事が分かる!!>

 俺の言葉にあせったように答える焔。

 口で喋る訳じゃないのにどもるって結構器用だよな、とか関係ないことを考えてみる。

<しかし・・・それでもな・・・・・・>

「なんだよ?」
 
 なにやら言いずらそうにしているので助け舟を出してみた。

<九峪の状況が分かるというのと九峪を理解すると言うのはやはり違うのだ。
 だから・・・九峪の口から言ってもらわないと凄く・・・凄く不安になってしまう>

「・・・そっか」

 呟いてから思わず頬が緩む。

<むっ! 何を笑っている!?
 仕方ないだろう、不安になってしまうんだから!!>

 俺の笑いを見咎めたらしい焔が憮然とした様子で文句を言ってくる。

 それを聞いて更に笑みが深くなってしまった。

「ククク・・・そっか・・・アハハハ・・・」

<な・何がおかしい!? 九峪は私を馬鹿にしているのか!?>

「ハハ・・・違う違う。
 馬鹿にしているわけじゃないさ」

 体があれば顔を真っ赤にして怒っているだろう焔の様子に、なんとか笑いを抑えて俺はそう言った。

<では何だ!? 私がホントに心配したのに、その私の本音を聞いて大笑いするとは何なんだ!?>

 頭の中の叫びを聞きながら俺は空を見上げる、ああ今日もきれいな空だ。

<聞いているのか九峪!? 私は・・・>

「嬉しかったんだよ」

 焔の言葉を遮って俺はそう言った。

「あんな風に心配されたのは・・・初めてだから。
 本当に、心の奥から・・・嬉しかったんだ。
 そんであんなこと言われて幸せだなって感じて、そんな事感じる自分が呆れるほど荒んでいる様に思えた」

<・・・九峪> 

 心配そうな焔が俺はただありがたかった。
 
 ・・・そしてこんな自分がどこか滑稽だった。

 もっともこれは焔には伝えないけど。

「だからさ・・・焔」

<・・・なんだ?>

「ありがとう。
 改めて俺はお前が居たことに感謝するよ、本当に・・・ありがとな」

 自分への劣等感を捻じ伏せ、万感の想いを籠めて俺は言った。

<・・・・・・それは私の台詞だ>

「ん?」

<私はお前のお陰でここに『在る』ことが出来るのだし、何より私はお前の傍にいられることが嬉しい
 だから私もお前に言おう>

 そこで焔は一度切り、言った。

<ありがとう、私はあなたに感謝する。
 私は誓おう、あなたに尽くす事を>

 その言葉に籠められた想いの真摯さに、俺は恥ずかしくなって頬を掻いた。

「・・・そっか。
 まぁとにかく、これからもよろしくな焔」

<こちらこそ我が主よ>

 全く普段と態度がここまで違うとやりにくいったらありゃしないっての。

 でもこういうのも悪くない。

 空を見上げればきれいな星空が広がっている。

「・・・きれいな星だよな」

<そう・・・だな・・・>

 応えながらどこか不満げな焔。

「なんだ? 気に入らないことがでもあったのか」

<いやそう言うわけでは・・・>

「あるんだろう?」

<・・・・・・>

 言いづらいのか黙り込む焔に軽くため息が出る。

「黙ってちゃ分かんないんだよ。
 言えって、笑ったりしないから」

<う・うむ・・・・・・その・・・だな>

「なんだよ?」

 おずおずと話し出す焔。

<・・・今私が見ているのは、あくまでお前が見聞きしたものでしかない。
 だから何時の日か・・・>

「何時の日か?」

<お前の隣でお前と共にこの星空を見たい、そう思ったのだ>

「焔・・・」

 でもそれは・・・

<分かっているさ、そんなことは絶対に叶わないと。
 それでも私はそう思わずにいられなかった>

 確かにその通りなのかもしれない、でもそんな風に言うのは悲しいじゃないか。

 だから俺は口を開いた。

「そんな事はない、約束しよう、『いつか一緒にこの星空を眺める』と」

<・・・九峪そんな慰めはいらん。
 さっきのはただの戯言だ気にしなくて良い>

 焔がそんな事を言うが関係ない。

「だって俺がお前と見たいんだ。だから約束したからな」

<随分な・・・言い草だと思うのは気のせいか?>

「別に良いだろ? 俺はお前の主なんだから」

 呆れたような口調の焔に俺はそういい切った。

<酷い主もいたものだな>

「いやか? こんな主じゃ」

<まさか! そんな訳ないだろう!!>

 おどけて言うとすぐさま否定された。

<私にとって>

 不意に周囲がしん、と静まった気がした。

 まるでこの後の焔の言葉を聞き逃すまいとするかのように・

 そして焔はいった。




















<主とはお前以外にありえないに決まっているだろう?>
 



後書き

 短い

 落ちがない

 と酷い話のような気がしますが、許してください。

 最近全くと言っていいほど時間がないんです。

 夏休みにでもなれば少しは取れると思うんですけど、それまでお待ち頂けると嬉しいです。

 それでは次の話で・・・


毎度ながらアップ遅くてすいません!6月末に送ってもらったのに既に夏休みです(死)
焔の可愛さを語る回ですね(笑)九峪の中ですっかり恋する乙女な人格が・・・まじで姿を見たいというか、九峪の外にでてきてほしいところですが・・・中だから面白いって所もあるかな。外には伊万里達もいますしね〜。
葵さん、お忙しいようですが夏休みですし、続き期待しております^^



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