〜約束のために〜

 外伝 日魅子の想い



作・葵様


 暗い・・・ここは何処だろう?
 何も見えない暗闇の中で、私は淡々とそんな事を考えていた。
 気がつけば、何も見えない暗闇に立った一人。
 普通ならパニックを起こしちゃいそうな状況だけど不思議なくらい冷静な自分が居る。
「何でだろ?」
 どうして自分がこんな所に居るのか?何でこんなに落ち着いていられるのか?
 そんな事を考え込んでいる内に、思わず声がこぼれた。
「ここ・・・どこ?」
 そう、声に出してみると疑問がハッキリしてきた、まずここはどこか?
 次にどうして私はこんな所に居るのか?
 今の時点で私が知りたいのはこの二つだ。
「ここが何処か知るのは・・・無理みたいね」
 周囲を見渡しても見えるのは暗闇と私自身の姿だけ、こんなんじゃあどこに居るのかなんて・・
「分からないじゃないの!?」
 思わず怒鳴ってしまう。
 ウー・・もう!頭にくるなぁ、何で私がこんな目に合わなきゃいけないのよ!?
 おかしいわ!理不尽よ!責任者出てこーい!?
 ハァハァ・・・いけない、こんな事しても何にもならないわね、落ち着きなさい日魅子、落ち着くのよ。
「・・・ふぅ・・・よし!落ち着いた」
 ああ!いけない、また声に出しちゃった、私って独り言しちゃう癖なんてあったっけかな?
 まっ、誰も居ないんだし別に気にしなくてもいいわね。
 さて次は『何でこんな所に居るのか』これね。
「えっと・・こういう時って、まずは今まで何をしていたのかを思い出す必要があるのよね?」
 確か今日は・・・そうだ!九峪を迎えに空港まで行ったんだっけ。
 九峪・・・一度だけ、しかも一時間くらいしか話していないのに、何故か私の心の奥に入り込んできた不思議な男の子。
 彼と話をした一時間は私にとってすっごく楽しくて、とても心に残る時間だった。
 あの後でお爺ちゃん達と行った旅行、中学のころ友達と泣いてしまった卒業式、そして高校での日々。
 他にも今までに色々な楽しいことがあったのに、何故かあの時の事が一番ハッキリ思い出せる。
「そういえば、あの後に九峪のからの電話を待ってお爺ちゃんに迷惑かけちゃったんだよね」
 約束もしてないのに、夜中まで起きて待ち続けてる私を見て、お爺ちゃんが困った顔をしてたのを覚えてる。
「絶対かかってくるって言い張ってたっけ」
 まぁ結局あいつからの電話なんて無かったんだけどさ。
 しかもこっちから連絡しようとお爺ちゃんに聞いたら。
「あいつらがどこに居るのかなんて誰にも分からん」
 なんて言われちゃったしね。
 あの時は、お爺ちゃんに八つ当たりで一週間は口きかなかったし、顔合わせる度に騒いだりしたのよね私ってば。
 そういえば機嫌が直った日におじいちゃんに聞かれたんだよね。
「何で雅彦君に拘るんだい?」
 ってさ、別にあの頃は理由なんて考えなったから「わかんない」って答えるしかなかったけど。
 今考えてみると多分、九峪がつらそうに見えたからだと思う。
 ・・・私の思い出にある九峪は笑ってる、でも、どこか泣いているように感じる。
 あの頃はそういうのに鈍感だったから『何となく気になる』程度にしか感じなかったんだと思う。 
 でも間違いなく私の中にある九峪には、悲しみが宿ってるようにしか見えない。
 そう感じるのは、九峪と会った後で私が手に入れた【力】。
 九峪と別れて、お爺ちゃんと喧嘩(といっても私が一方的に怒っていただけ)して家に居づらかった時、
 道を歩いているときに『何となく』立ち止まった瞬間、目の前の壁に車がぶつかってきた。
 もう二・三歩進んでいたら私の命は無かっただろう。
 その時は運が良かった程度にしか考えなかったけど・・・
 その後、よく晴れたある日に天気予報でも晴れだと言っていたのに『何となく』傘を持っていったら、
 帰りの道で夕立に合って私だけ濡れずに済んだり。
 『何となく』嫌な予感がしたら抜き打ちテストがあったり、私の『なんとなく』は驚くほど当たった。
 中学に入った後、占いにはまった時が一番凄かったわね。
 あれはもう百発百中どころじゃなかったもの、むしろあれは予言に近かったと思う。
 まぁ怖くなってすぐに止めたけど・・・。
 占いなんてしなくても、集中すれば天気ぐらいは分かるし、相手の感情もなんとなく分かる(というか感じるといった方が正しいかもしれない)。
 この【力】もあいつに関係あるのかな? 
・・・っといけない、考えがそれちゃったわね。
 それで空港に九峪を迎えに待ち合わせ場所に行って九峪を見つけた。
 もっともアイツを見つけた時あっちは私に気付かなかっただろうけど。
 だって見つけた瞬間思わず私は物陰に隠れちゃったんだから。
 だって九峪ってば、なんか凄くなってたんだもん、別にアイドルみたくカッコいい訳じゃなかったけど、なんて云うか雰囲気が違った。
 昔との違いに私は盗み見るような事をしていたから、あれは傍から見てたらかなり怪しかったわね。
 どうやって声をかければ良いのか分からなくて隠れるなんて我ながら情けない。
 そんな私の目に映ったのが何やら因縁つけて騒いでる柄の悪い連中。
 私の勘ではあいつらに関われば自然と九峪に話しかけられるように感じた、そう思った途端に私は飛び出した。
「何やってんのよあんたら!?」
 ってね、まぁその後は売り言葉に買い言葉で大騒ぎ、
 気がつけば庇ってあげたのに因縁つけられてた奴らは逃げちゃうし、野次馬に囲まれて私の逃げ道はないし。
 余裕を見せたりしてたけど正直かなり焦ってたな。
 だって口なら負けないけどあっちは複数いたし、間違いなく殴りかかってくる様子だったんだもん。
 そう思った瞬間連中の一人が怒鳴りながら飛び掛ってきた。
 その事に私は立ち尽くしてしまった、だって私の【力】は危険を感じていなかったから。
 私には目を瞑ることしか出来なかった。
 そして、次に目を開いた時には目の前に大きな背中があった。
 ああ、こうなる事が分かっていたから私の【力】は何も感じなかったんだ。
「・・・・誰?」
 なんて思わす言っちゃったけど私には誰だかすぐに分かっていた、九峪は私の言葉は無視して連中をあっさりと追い払ってしまう。
「ねぇ・・・あなた誰なの?」
 私の勘は目の前の青年を九峪だと言っていたけど、あの時とギャップがありすぎてどうしても彼の口から聞きたかった。
「俺は九峪雅彦だ」って。
 でも九峪はなかなか私の質問に答えない、あまつさえ彼は私に気付いていないのが気に入らなかった。
「なんでそんなに知りたがるんだよ?俺の名前なんか知ってどうすんだ?」
 しつこく名前を聞く私に彼は不審気にそう聞いてきた。
 「だって、頼んだわけじゃないけど助けられちゃったし・・お礼を言うにも名前が知りたいじゃない・・・」
 私は本心とは全然違う答えをした、だって「あなたは私の思い出の少年ですか?」なんて聞けるわけ無いじゃないの!  
 九峪は何やら呟いた後私に名前を聞いてきた。
「それもそうね、私の名前は姫島日魅子・・」
 そう言ったときのあいつの顔ったら、笑うのを耐えるのが大変だったんだから。
 そのあと九峪が私だと気付いて色々言ってきたけど私はなかなか気付かないフリをした、だって私はすぐ気付いたのに不平等じゃない!
「もしかして・・・九峪?」
 そう言ってようやく私たちは正式に再会したんだ。
 しかも私が約束のことを聞くと「ああ・・・当たり前だろ、覚えてるよ!」当然だろ?って感じで言ってくれたのが凄く・・・嬉しかった。
 だけど、その後の「教授は?・・」の言葉に嬉しさも吹き飛んだ。
 あれは本気で忘れちゃってたな・・お爺ちゃん!ごめん!
 その後九峪とお爺ちゃんのとこに行く事になったんだけど、駄目だった。
 だって傍に居るだけで顔が緩んじゃうんだもん、恥ずかしくて一緒に居られないじゃない!
 まぁ運良く(絡まれてた人には悪いんだけど)またも柄の悪い奴らが居たからそいつらに文句を言いにいくのを理由に九峪から離れた。
 もっとも最後は殴りかかってきたのを九峪が蹴散らして終わったんだけどね。
 そんな九峪の姿を見て私は内心驚いていた、だって自分より大きな奴を簡単に倒しちゃうんだもん。
 正直な話カッコいいと思っちゃった。
 実はカッコいい九峪の姿が見たくてその後も何回かワザと柄の悪い連中に絡んじゃった、テヘ。
 でも九峪と話してみて、私は気付いてしまった。
 九峪の中の悲しみが大きくなっているのに。
 ううん・・それだけじゃない。私には九峪の中に深い、とても深い『闇』が見えた、ような気がした。
 それは一瞬だけ、刹那の間垣間見た、全てを飲み込みそうな『闇』。 
 でも・・多分私の気のせい、だってそれを感じたのなんてホント一瞬だけ、他のときは全く感じなかったんだから。
 車に乗ってお爺ちゃんの発掘現場に向かう途中もそれは感じられなかった、というか私にそんな事を気にする余裕は無かった。
 だって!カッコいいなって感じたばかりの九峪のすぐ横に座るんだよ!?
 緊張しちゃってそれどころじゃないっつーの!?
 それを誤魔化そうと九峪のお土産のお菓子を食べまくっちゃった。
 でも、そんな中九峪がこっちを向いて何か考えてるのを感じた。
 そこで私は【力】を使った、その名も『読心術』!もっとも私が読めるのは、表面的で私に向けられているもの、という条件が付くけど。
 少し反則だと思ったけど気になったんだから仕方ないじゃない!
 お菓子を食べながら意識を九峪に向ける、そして私を見て九峪が何を考えているのかを確かめた。
 九峪が私に思ったことそれは(お世辞抜きで可愛いな)。
 ・・・顔から火が出るかと思った、本気で、だって卑怯よ、不意打ちじゃないの!
 かっこいいなって私が思ってる相手が、私を見てか・可愛いとか・・卑怯!絶対不意打ちよ、レッドカードものよ!
 私は顔が赤くなるのを隠すためお菓子を食べるペースを上げた。
 こうなったら食べつくして見せるわ、それぐらいしないと気が済まない、そう本気で考えたんだから。
 そんな私を放って九峪とお爺ちゃんは何やら真剣に話し込んでいた。
 何だか私には入り込めないような空気だったので私は更に食べることに専念した。

 少したってお菓子の残りが少なくなってくるのと同時に話も終わった。
 お菓子も無くなってきて、話を聞く余裕が出来た私の耳にお爺ちゃんの「良いもの」がどうのこうのというのが聞こえた。
 思わず顔を上げて何のことか聞こうと思った私をみて九峪が驚いた。
 その顔が嬉しくて自慢げになった私に九峪は「・・太るぞ?絶対」
 ・・・「太るぞ」ですって!?誰のせいよ!?誰が私にお菓子食べるぐらいしか出来ないような状況を作ったのよ!?そう思ったんだけど。
 やっぱり駄目、九峪を見ると怒ろうとする意思が消えちゃう、卑怯よぉ、絶対卑怯ぉ、何で私ってば九峪のこと怒れないのぉ?
 そう思いながら私の口は全然違うことを言ってくれた、少し助かったかな?
 それから少し経って遺跡に着いた途端二人は私を置いてどっかに行っちゃたんだよね。
 全く女の子を一人で置いていくなんて何考えてるんだろう、って思ったんだけどさ、私が行ったってしょうがない所みたいだったから散歩でもして待つことにしたんだ。
 でも・・・五分で飽きた。
 どこを見ても発掘風景しか目に入らない状況じゃあさ、飽きてもしょうがないじゃないの!
 でもやることが無い、散歩する、散歩は飽きた、でもやることが無い、散歩する・・・。
 ああもう!お爺ちゃんも九峪も早く用事を済ませて帰ろうよぉ、家に帰ったら九峪を連れて遊びに行くんだから。
 どこに行くかもとっくに決めてあるし、着てく服だってクリーニングに出して綺麗にしてあるんだから!
 そんな事を考えてたら九峪がぼうっと立ってるのが見えた、あの時はビックリしちゃった。
 「何してんの?」って声を掛けただけなのに九峪の驚き方がすごいんだもん。
 だけど私が心配してあげてるってゆうのに九峪ってば全然話し聞かないでさ!なんか訳分からない事言ったかと思ってたら、いきなり「一緒に来てくれ」だって、全く失礼しちゃうと思わない?
 でもさその時に手を握られたんだよね、九峪の手ってば私のより全然大きいからさ包まれるって感じでドキドキしちゃった。
 それから少し走ってから大きなプレハブに入ったんだ、そういえば『関係者以外立ち入り禁止』って書いてあったような・・・まぁ気にすることじゃないわね。
 だけどさ、失礼だと思わない?入るなり『鈴を貸してくれ』だよ?何の用かと思ってたら、私じゃなくて私の鈴に用があっただなんて。
 まっ・・すぐ返してくれるって言うから貸してあげたけど、二人そろってしげしげと鈴を見つめて話し合い、私は完全に蚊帳の外。
 別にこの状況はお爺ちゃん一人の時でも良くあったから良いんだけど、どうもあの鈴が無いと落ち着かないんだよね。
「ねぇもいいなら返して欲しいんだけど・・・」
 私がそう言うとお爺ちゃんがあっさりと返してくれた。
 首に掛けるのは面倒だから手首に掛ける、別に身に着けてさえいればどこでも良いんだよね。
 ふと目の隅に何かが見えた、不思議と気になって近くまで歩み寄った。 
 ・・・そうだ、鏡だ・・銅鏡っていうんだと思うんだけどそれが置いてあったんだ。
「ねぇ〜〜!おじいちゃん!これ見ても良いの〜?」
 返事を聞く前から私はそれを手に取り眺めていた。何故か・・・ひどく懐かしかった。
りぃ〜〜ん・・・・りぃ〜〜ん・・・・りぃ〜〜ん・・・
 そういえば、私が鏡を手に取った後、今まで一度もならなかった鈴が鳴り始めたんだ。
 もっとよく鏡を見ようとした時、突然・・・。
 かっ!と閃光が奔った。

 それから先はよく覚えていない、九峪とお爺ちゃんの二人が酷く慌てていたことしか分からない。
 そして気がつくとここに居た。
 ・・・って。
「結局何も分からないじゃないの!!!!」
 ハァ・・・今までのは何だったんだろう?
 どうしよう?そうは思ったけど特に何も思いつかなかった。
「どうしよう?」
 今度は声に出してみた・・・・・・・・駄目ね、何も思いつかない。
         <日魅子>
 ん?
       <起きて!日魅子!>  
 え、何?それじゃあこれは夢?
      <早く起きてよ!日魅子>
 んーうるさいなぁ、今起きるわよ!起きればいいんでしょ!?
  <あ〜もう!この娘ホントに日魅子?何か情けないなぁ>
 ピキッ
「何ですってーーー!!!!!!!!!!」
「うわぁ!?」
 
 気がつくと

 そこは見知らぬ森の中

 でもそこは

 ひどく懐かしい気がして
 
 自然と涙が出た

「ようやく起きたね?日魅子」
「えっ?」
 ・・・なに“これ”?
「良かったよ!いつまで経っても起きないから心配したんだよ!?」
 “それ”が言っていることはほとんど耳に入っていなかったけど、私の【力】は告げていた。

『ここが・・・私の故郷だと』

外伝 日魅子の想い  終わり


後書き
 こんにちは葵です。
 以前の後書きで言った日魅子の外伝です。
 どうでしたか?面白かったと言っていただけたら嬉しいです!
 実は話の続きが上手く掛けないのでそれまでの“繋ぎ”として書きました。
 なんというか、宝石の原石は見つかってもそれをどうやって磨いたりカットしていけばいいのか分からない、といった状況です。
 しかも、その原石が宝石か石ころか分からないですよね。
 すみません情けない事言ってますね。
 勉強も難しくなってきて更新は間違いなく遅れると思いますが、本編のほうも頑張って完結させるんでお付き合い下さい。
 では本編の続きでお会いしましょう・・・
 五月三日 次は五月中に何とかします。



 え〜と・・・ごめんなさい、今5月下旬_| ̄|○
 アップが遅れてすいませんでした。次はきっちり早めにアップしますね^^;

 九峪と出会った前後の日魅子の回想ですね。大食だったのにはこういう訳がありましたか。
 喧嘩に巻き込まれ続けた九峪、なむ(笑)
 そして最後になんか気になるのが日魅子のそばに・・・九峪側ではでてこなかったあれですかね?
 いいコンビになりそうですね(笑)

 本編の方も、がんばってください♪投稿ありがとうございました。

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