※注意   このSSは、ガンダムを知っているのが前提となります。
       もし知らないのであれば原作を見てからの方が笑えると思います。

       それでも構わなければお読み下さい。m(_ _)m






 これは、どこかであるかもしれない、まだ存在しないかもしれない物話である。





サブキャラの野望


作・ユメコ様







「――諸君っ!」

 兎華乃は、中央の机をだん、と叩いた。上に置かれたお茶に波紋が走る。

「…お気持ちはわかりますが、もう少し穏便にお願いします」

 向かい側の紅玉は、そんな兎華乃の言動に少し顔をしかめながら、ずず…と湯飲みに注がれたお茶を啜(すす)っている。

「ほえーっ、なんだかずいぶん興奮なされてますね」

「…落ち着いたほうがいい」

 紅玉の左隣には、虎桃、珠洲。

「兎華乃様、なんで怒ってるの?」

 と、疑問を投げかけたのは、紅玉の右隣の兎音。

「今からそれを説明するんじゃないの?」

 それに先に答えたのは、兎音の隣の兎奈美。他にも幾人かの武将が座っていた。

「…諸君、ここに揃ってもらったのは他でもないわ」

 兎華乃はその疑問に答えるかのように言葉を発した。口調には、冷淡ながらも怒りがこもっていた。

「遠州のことよ」

「遠州が…どうかしたんですか?」

 最初に興味を持ったのは寝太郎だった。

「…いい。覚悟して聞いてよ」

 ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえた。


「………死んだわ」


「なんですと?」

「………」

「え、そ、そ、そんなっ…嘘…ですよね?」

 反応は似通っていた。そしてその顔には、悲しみと困惑とが入り混じっていた。

「…なるほど」

 一人の女性を除いては。

「何か言いたげね、紅玉さん」

「ええ、つまり兎華乃さんの言いたいことはこういうことでしょう?」

 紅玉は少し皮肉めいた口調で、それでも彼女の口調は彼ら達への真理を語っていた。


「次の攻略対象は誰か、ということです」


「…そう。そういうことよ」

 兎華乃はその言葉を待っていたかのように微笑む。

「へ? どういうことですか?」

 誰もが状況を理解出来ていないかのように困惑していた。

 遠州は当然の事ながら男である。つまり、攻略対象うんぬんは、関係ないのである。
紅玉はその事を踏まえた上で説明を続ける。


「…つまりプレイヤーさんがいろんなパターンの攻略に手を出し始めたということです。さしずめ今回は遠州さんのいない上乃さんエンディングと言う所でしょう」


 そう。…彼らはゲームのキャラクターなのである。


「とにかく。全員にここで提案しなくてはいけないことがあるのよ。これからの火魅子伝の行く末を考えるために」

 再び話を進める兎華乃。

「それほど重要なことなんですか?」

「ええ、よく聞いて下さい」

 兎華乃は深呼吸をし、きっと目の前のメンバーを見据え、言った。


「我々は一人のキャラを失った! しかしこれは敗北を意味するのか!? 否! 始まりなのよ!」


 再びだん、と机を叩く。


「…他のゲームに比べ、私達の攻略対象であるキャラは15人。めちゃくちゃ多いわ。にもかかわらず今日まで戦い抜いてこられたのは何故か! 諸君! 私たちサブキャラの存在があったからよ!」


「…………」

 既についてこれないメンバーもいたが、かまわずに続ける。


「サブキャラはメインキャラの話を盛り上げるには必要不可欠! そして私達はヒロインを追われ、サブキャラにされた! そしてひと握りのヒロインが他のキャラのシナリオにまで膨れ上がったシナリオを支配して幾余年。
サブキャラである我々が自由を要求して、何度、ヒロインに踏みにじられたかを思い起こすといいわ! 私達の掲げる、サブキャラ一人一人の自由のための戦いを神が見捨てるわけは無い!」


「そうだ、そうだ〜♪」

 合いの手を入れたのはだれだったのだろう? 兎華乃は再び話を続ける。


「我らの仲間! 諸君らが愛してくれた遠州は死んだ!! 何故なの!?」


「………坊やだからです」


 溜息をつく紅玉。


 いや、ホントは経験値とアイテムGETのためなんだけど………

 どうやら画面の向こう側の誰かが、このセリフを言わせたかったらしい。


「今こそ、私達は立ち上がり、サブキャラとしてではなく、一人のヒロインとして話に参加するべきなのよ!」

(…少し、論点がずれかけてますね。言いたいことはわからないでもないですが)

 魅土は思った。ある環境に立つものが、その環境を抜け出すための権利を主張すると、時折エゴにも聞こえかねない。兎華乃は自らがヒロインになりたいだけではないか、と。

(しかし、それは私とて同じですか)

 彼女もシナリオという強制力の前で、攻略出来なくなった一人である。


「戦いはやや落ち着いたわ。だけど、これを諸君らは対岸の火として見過ごしているんじゃないのかしら?」


 兎華乃は語りつづける。一人のキャラクターとして、一人のサブキャラとして。

「忌瀬さん、お茶、もう一杯頂けますか?」

 永楽は冷静にそれを見ていた。

「それは、私が注いで上げますよ。いいですか?」

 同様にサブキャラである忌瀬は、特に動じた様子もなく、こぽこぽと急須でお茶を注ぐ。

「忌瀬さんもサブキャラ肯定派ですか」

 永楽は少し微笑んだ。

「…わかりますか」

 忌瀬も軽く微笑む。

「匂いです。貴方も私と同じ物を感じますから」

「ふふ、流石ですね…」

 二人は意味深な言葉を語る。

 同じ境遇にいる者の心理。言葉が無くてもわかる。彼女たちは同志なのだ。


「遠州は! 諸君らの甘い考えを目覚めさせるために死んだのよ! 戦いはこれから!」


 兎華乃はなおも演説を続けていた。

「九峪様だけじゃなく!」

「………俺達だって!!」

「いい思いはしたいんだぁーーーーーーーー!!!」

 サブキャラの男衆が魂の叫びをあげる。


「諸君の、父も、兄も、シナリオという無思慮な抵抗の前に死んでいったのよ! この悲しみも、怒りも、忘れてはならない! それを…遠州は…死をもって我々に示してくれた!
我々は今、この怒りを結集し、プレイヤーに叩き付けて、初めて真の勝利を得ることができるわ! この勝利こそ、戦死者すべてへの最大の慰めとなるの!
キャラクターよ立て!悲しみを怒りに代えて、立てよ、サブキャラ! 火魅子伝は、諸君らの力を欲しているのよ! …ジーク・火魅子伝!」


『ジーク・火魅子伝!』


 その瞬間、部屋にいたサブキャラ一同が立ち上がり、ぐっと右腕を空に掲げた。


「…こ、これが…敵…ヒロインという影に隠れていた、伏兵…」


 清瑞は屋根裏で震えていた。サブキャラの革命。メインヒロイン達にとっては恐るべき事態だった。





「何を言うの! サブキャラによる独裁を目論む女が、何を言うのか!」

 清瑞の報告に伊万里達メインヒロインは憤りに叫んでいた。

「独裁…」

 羽江ですら、真剣な顔もちで報告を聞いていた。





『ジーク・火魅子伝!』

『ジーク・火魅子伝!』

『ジーク・火魅子伝!…』





 耶牟原城にはサブキャラ達の叫びが響きつづけていた。


 果たしてサブキャラが日の目を見る日は…来るのだろうか…





 続きます?




 ユメコさんから初の頂き物です^^
 笑いながら読ませていただきました(笑)視点がおもしろいですね〜。確かに火魅子伝、メインキャラだけでストーリーがかなりあるから、サブキャラなんてセリフちょこっと、出番ちょこっと、が多いですもんね。だからこそサブなんですが(爆)
 兎華乃って、なんかこういう役似合いますよねえ。お得なキャラです(ぇ
 続きは「逆襲のメインキャラ」となります。感想アンケートはあちらに設置してありますので、あちらでまとめてお願いしますね。

ユメコさん、どうもありがとうございました^^