火魅子伝サスペンス劇場

<決して愛される事の無かった私達>


作・BARD様



第二話:第一の手掛かり




九月二日、転校二日目の昼休み。

御弁当を持って来ては居なかったので、私は購買を探そうと席を立つ。
そこへ、忌瀬さんが明るい口調で話し掛けて来た。

「やっほ。 慧ちゃんは、お昼はどうするの?」

「うん。 購買へ行こうかと思ってるんだけど………。」

「あ〜、それはオススメ出来ないよ? 競争率が高いし。」

忌瀬さんが首を横に振る。

「それに、慧ちゃんは購買の場所とか分からないんじゃない?」

そう言われて、私は素直に頷いた。

「それじゃ、尚更、止めた方が良いよ。見つけた頃には、全種類が売り切れなんて事になってたら、お昼抜きだよ。」

「そ、そうだね。 どうしようかな………。」

私が途方に暮れていると、忌瀬さんは苦笑混じりに財布を見せる。

「私は友達と学食に行こうかと思ってるんだけど、ね。 良かったら、一緒にどう?」

「良いの?」

「勿論♪」

思わず、私は笑顔になってしまった。

(助かるぅ〜っ!!! 忌瀬さんって、優しいんだ♪)

私に、忌瀬さんのお誘いを断わる理由なんかはある筈が無い。

それから、何人かのクラスメイト達で集まった後、私と忌瀬さんは一緒に学食へと出掛けた。

「学食じゃあ、カツ丼が美味しいよ。」

「耶麻台(やまと)学園って、スポーツは強いんだよね。
特に、女子新体操部が有名で、最近は女子剣道部も好成績を出してるみたい。」

「生徒会長は、頭が良い上に、胸も大きい。」

私を交えて、クラスメイト達は好き勝手に談笑している。
でも、耶麻台(やまと)学園の事を知らない私は、次第に会話に入れなくなっちゃう。

(まあ、転校したてだから、仕方が無いんだけど。)

そんな事を考えながら、私はクラスメイト達の会話に耳を傾けていた。

「担任の九峪先生はカッコイイから、密かに狙ってる子は多いみたい。」

どうやら、話題のネタは、担任へと移ったみたいだった。

(さて、と。 ここに居ても退屈だし、学校の中を歩いてみようかな。)

私がそんな事を考えて席を立とうとした、その時だった。

「そうそう。 九峪先生って、あの子と仲が良かったみたいよ。」

「えっ? あの子って?」

「ほら、自殺した例の………。」

耳に飛び込んで来たその言葉に、私は思わず息を呑む。

「っ!?」

同時に、私の心臓は驚くくらいに跳ね上がった。

「九峪先生って、生活指導も受け持ってたりするじゃない?
それで、自殺した子なんかにも、色々と相談に乗って上げてたみたいなのよ。」

「そうなの? それで、付き合ってたりしたのかしら。」

「え〜っ!!! それは無いんじゃない?」

「でも、さ。 九峪先生って、人気があるじゃない?」

「二人が付き合って無くても、そんな噂が流れたら、余計にいじめが酷くなるわね。」

「案外、いじめの原因はそれだったりして!?」

私は固唾を呑んで聞き耳を立てていた。

(清瑞が自殺した事。 結構、知れ渡ってるんだ。)

(やっぱり、皆、いじめが自殺の原因だと思ってるみたいね。まあ、当たり前かも知れないけど。)

(でも、九峪先生が清瑞の相談に乗っていたって言うのは、初耳。)

口元に手を当てて、私は少し考え込む。

「うん? 慧ちゃん?」

不意に、私は隣の席に座っていた忌瀬さんから声を掛けられた。

「えっ?」

「どしたの? 難しい顔をして。」

「あ、ううん。 何でも…。」

急に話し掛けられたので、私は焦ってしまう。

「あ〜、ごめんね。 ほったらかしで。 おまけに、つまらないでしょ、話。」

そんな私の返事に勘違いをしたのか、忌瀬さんは謝りながら席を立った。

「行こっか。 良かったら、昼休みの残りの時間、学園の中を案内したげるよ。」

さっきまで暇だったのは事実だし、何よりも、忌瀬さんの気遣いがありがたかった。

「ありがとう♪」

私は素直に御礼を言って席を立つ。

「隣のクラスの………。」

「………と付き合ってるみたいで………。」

「………え〜っ! ショック!!!」

ふと、まだお喋りに夢中になっているクラスメイト達の会話を聞いてみると、
既に別の話題へと移っていた。

(これ以上、ここに居ても意味が無いかな。)

そう考えて、私は忌瀬さんと一緒に食堂を後にした。





(九峪先生………、清瑞の相談相手。)



(そして、噂になるくらい、清瑞と仲が良かったと言う人物。)



(もしかしたら、九峪先生が、清瑞が言う『あの人』なのだろうか。)



(………だとしたら、九峪先生は、何の罪を犯したと言うんだろう。)



(そして、清瑞が死ななければならなかった理由は?)



午後の授業中、そんな考えが、ずっと頭の中を離れなかった。





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