火魅子伝サスペンス劇場

<決して愛される事の無かった私達>


作・BARD様



第十四話:残された真実



清瑞の家は、割とすぐに見付かった。

何度も表札を確認すると、激しく高鳴る心臓の鼓動を押さえ込んで、
私は慎重にインターホンに手を伸ばした。


ピンポーン


よくある機械音が、私の耳に届く。

「………はい?」

続いて、インターホンから、女性の声が聞こえて来た。



清瑞の母と名乗った女性は、私が用件を告げると、快く出迎えてくれた。

「あの子に、メール友達が居たなんて………。 初耳でした。」

「そうなんですか?」

「普段から口数も少ない、真面目な子だったんです。
 まさか、あんな事をする程、思い悩んでいたなんて………。」

そう言って、清瑞のお母さんは僅かに肩を震わせる。

「………これ、清瑞さんから、私宛て送られて来たメールです。
よろしければ、読んで下さい。」

そっと、私はメールをプリントアウトした紙を差し出した。

「………ありがとうございます。」

清瑞のお母さんは丁寧な仕草で受け取った。

「あの………。 よろしければ、清瑞さんのお部屋を見せて頂いてよろしいですか?」

「ええ。 こちらです。」

清瑞のお母さんに案内されて入ったのは、シンプルな感じの部屋だった。

ぬいぐるみやポスターと言った装飾品は見当たらなかった。
机の上にはパソコン、本棚には参考書、と実用重視な印象が見受けられる。

「まだ、あの子が居た頃のままにしてありますよ。」

「………ありがとうございます。」

一礼して、私は清瑞の部屋に入る。

「図々しいお願いかも知れませんが、少し、遺品を触らせて頂いて良いですか?」

「そうですね。 あの子のお友達に訪ねて頂いたのですし、少しだけなら。」

「………ありがとうございます。
決して、汚したり、壊したりは致しません、お約束致します。」

そう言って、私は深々と頭を下げた。
清瑞のお母さんが部屋を出て行ったのを確認して、パソコンの前に向かう。

(ごめんなさい、清瑞。 貴方のプライベートに足を踏み入れます。)

まず最初に、心の中で謝る。


ブゥン………


そして、パソコンの電源を入れた。


カタカタカタ………


幾つかの操作を経て、ファイルを検索する。

(………駄目。)

だけど、目的のファイルは見付からなかった。


カタカタカタ………


今度は手当たり次第にフォルダを開いていく。
けれども、それらしいものは全く見当たらなかった。

(全部、消してしまったの?)

次第に、私は焦ってしまう。


カタカタカタ………


テキストファイルを探しては開いてみた。
もしかしたら、ファイル名と内容が違っているかも知れないと思ったのだ。

(やっぱり………、無い。)

無駄足だった。
第一、自宅の机に置いてあるパソコンで、そんな面倒な事をする筈も無かった。


プツ………ッ


パソコンの電源を切る。

(ここじゃ無かった。 それなら………。)

私は机の傍にある本棚へと向かった。
幾つか、参考書に混じって、何冊かのファイルが並んでいる。

「これも違う。 あれも違う。」

慎重に、一冊ずつ手に取っては中身を確認して行く。

「これも、あれも、それも………。」

次第に、焦りは大きくなって行く。

「………駄目。 無い。」

最後のファイルを本棚に戻して、私は、力無くその場に座り込んだ。

「っ! まだまだ………っ!!!」

今度は引き出しだ。


ガラッ!


一番上の引き出しを空けて見る。

(小物類が一杯………。 違うみたい。)

私は溜息混じりに引き出しを閉じた。

(………次。)

気を取り直す、引き出しに手を伸ばす。


ガラッ!


二番目の引き出しを開けた。

(学校関係のプリントの束。 綺麗にまとめられているわ。)

何枚かを手に取って調べてみる。

(………違う。)

元に戻すと、ゆっくりと引き出しを閉じた。

(お願い、次こそは………っ!)

祈る様な気持ちで、引き出しに手を伸ばす。


ガラッ!


三番目の引き出しを開けた。

(………何も入ってない?)

私の心臓が大きく跳ね上がった。

(もしかして、私の捜しているものがここに?)

(自殺する前に、全部、処分しちゃったの?)

(考えられない事も無いけど、そんな………っ!)

私は愕然とする。

そうだ、自殺する前に身辺整理をする可能性は無い訳じゃ無い。
最悪の場合、癇癪を起こして、自殺の原因をまとめて処分する事もありうるのだ。

(………駄目だった、か。)

がっくりと項垂れて、私は引き出しを閉める。

(もう………、手掛かりは………、無い。)

そんな事を考えながら、一番最後の引き出しに手を伸ばした。


ガラ………ッ!


先程までとは違い、ゆっくりと慎重に開ける。

「………えっ?」

ふと、私は首を傾げた。

四つの引き出しの中で一番大きな引き出しは、一番使われていなかった。
何故なら、そこには、ノートが一冊入っているだけだったのだから。

「随分と、あっさりした………。」

ノートを手に取って、私はゆっくりとページをめくる。

「っ!!!」

その瞬間、私は凍り付いた。

「これ………、清瑞の日記帳じゃないっ!!!」

慌てて、私はページをめくる。



そこには、全てが書かれていた。





清瑞が過ごした、耶麻台(やまと)学園での日々。



清瑞が募らせた、『あの人』への想い。



清瑞が気付いてしまった、『あの人』の罪。



清瑞が感じた、日々の苦悩。



そして、最後の行には、彼女の真摯な想いが綴られていた。



全てを読み終えて、私は丁寧に日記を閉じて引き出しに戻した。
再び、脳裏に疑問が過ぎり、私は盛大に首を傾げる。


「あの人が………? 何故? だって、あの人は………。」


そう呟いた瞬間。


「っ!!!?」


不意に、私は凍り付いた。


「………って、ちょっと待って!!!」


慌てて、今までの出来事を思い返す。




「ま、まさか………?」



「そんな………。 もしかして、あの日、清瑞が会ったのって。」



「そして、私を狙った犯人って………。」



身体を震わせながら、私は窓の外を見やる。
その時、私の脳裏には、ある人物の姿が思い描かれていた。


>>NEXT





<あとがき>

お久しぶりです、Jで御座います。

お待たせ致しました。

<火魅子伝サスペンス劇場 〜決して愛される事の無かった私達〜>、

無事に第十四話を投稿する事が出来ました。

ついに、真相へと辿り着いた慧。

いよいよ、次回より、謎解き開始っ!!!

そこには、意外な結末が………っ!?

では、次回、『第十五話:全てを明らかにする、その前に………』をお楽しみに!!!