火魅子伝サスペンス劇場

<決して愛される事の無かった私達>


作・BARD様



第十一話:新たなる手掛かり




九月七日、転校してから一週間が経った、七日目。
そして、九峪先生と話をした、その翌日の朝。

あれだけの啖呵を切ったにも関わらず、私は、途方に暮れていた。

「あ〜あ。 結局、振り出しに戻っちゃったな。」

溜息混じりに、机に突っ伏す。

「しょうがないって。 私ら素人じゃ、こんなもんでしょ。」

頭上から声を掛けて来たのは、前の席に座る忌瀬さんだ。

九峪先生と話した時、私が自分の安全の為に連れて行った人であり、
あの時、その場に居た唯一の人でもある。
………とは言っても、私と九峪先生の会話を聞いていた訳じゃ無いけれど。

「でも、私はどうしても納得がいかないの!」

「絶対に、清瑞の自殺には裏がある。」

「これだけは確実。 だから、私は諦めないっ!!!」

既に、私は駄々っ子と化している。
こうなった時の私は誰にも止められないのだ、ちなみに、自覚症状はある。

「はい、はい。 それで、どうする訳?」

忌瀬さんが溜息混じりに聞いて来る。

(何だかんだで、付き合いは良いよね。 感謝!)

そんな事を考えながら、私は今後の方針について話し始めた。

「まず、原点に戻ろうと思うの。」

「私は清瑞の事をメールでしか知らない。」

「誰と親しかったか、誰と仲が悪かったか。 交友関係を把握しておきたい。」

「そうすれば、新しい事実が見付かるかも知れないし、今まで見えなかった関係も見えてくると思う。」

「今までに調べた人達も、もしかしたら、犯人だった可能性があるかも知れないし。」

言いながら、私は忌瀬さんを見つめる。

「ふむ、良いんじゃない?」

ふと、頷いて、忌瀬さんが私の視線に気付いた。

「………その視線。」

「もしかして、私が調べるの?」

「清瑞の交友関係。」

冷や汗混じりに呟く忌瀬さんへと向けて、私は満面の微笑を浮かべて頷いた。

「いぃぃぃやぁぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!」

次の瞬間、忌瀬さんの絶叫が学園中に木霊した。




それでも、忌瀬さんはたいしたものだった。

清瑞の交友関係を調べ始めた翌日、九月八日の放課後には、既に、九十九パーセントまで、まとめてくれていたのだ。

「まあ、前にも言ったけど、元から交友範囲の狭い人だったからね。」

「全員でも十人くらい。」

「流石に、細かいところまでは調べられないけど、これで十分だと思う。」

そう言って渡してくれたノートには、
男女合わせて十一人の事細かなデータが記されていた。

「九峪先生、伊万里さん、上乃さん、志野さん、珠洲………。」

「その辺りは、慧ちゃんも知ってるでしょ?」

「うん。 九峪先生以外は、一度、話しただけだけど。」

頷いて、ノートのページをめくる。

「あれ。 忌瀬さん、この星華って人は、誰?」

「生徒会長。 そして、清瑞を苛めてた奴らの首謀者だよ。」

「っ!!!」

私は息を呑んだ。

(この人が………、清瑞を苛めていた黒幕。)

そのページの上部には、如何にも優等生と言った雰囲気の女生徒を写した写真が貼られていた。

ちなみに、その直下には、赤のボールペンで『巨乳!!!』と書かれている。

「………忌瀬さん、これは?」

少しだけ、脱力感を覚えながら、私は尋ねる。

「あ、それ? 重要事項。」

「いや〜、星華って、学園で一番でかい胸してるからさ。」

「男子生徒から、良く質問があるんだよね。 胸のサイズ♪」

一気に場の空気がぶち壊された気がするのは、私の気のせいじゃ無いだろう、絶対。

「………。」

溜息混じりに、次のページを開く。

「そっから先は、星華の友達連中だよ。 幼稚園の頃からの付き合いらしいね。」

「ふぅん。 亜衣さんに、衣緒さんに、羽江さん、ね。」

「全員、ア行で名前がまとまってるんだ。 変わった名前の三姉妹だろ?」

「本当だ。 何だか、面白いね。」

そう言った後、私はノートから目を離す事無く質問した。

「この中でいじめに積極的だったのは?」

「長女の亜衣さん。 気に入らない奴には容赦しない、えげつない性格してるよ。」

「ふぅん………。 次女の衣緒さんは?」

「穏健派だね。 あまり、いじめには参加して無い。もっとも、いじめを止めようともしてなかったけど、ね。」

「三女の………、羽江ちゃんは中等部っ!?」

「そう。 この子は、姉にくっ付いてたってだけみたい。」

私の質問にスラスラと答える忌瀬さん。

(もしかして、忌瀬さんが居れば、ノートは必要無いんじゃ………?)

私がそんな事を思ったのは秘密にしておこう。

「次は………。」

「あ、次は見ると驚くと思うな、私。」

「驚くって、何で、さ? ………って、伊雅理事長っ!!?」

「あはは! やっぱり、驚いた。」

悪戯が成功したと言わんばかりに笑う忌瀬さん。

「でも、聞いてみると、納得だよ。」

「清瑞さん、理事長にも相談していたみたい。」

「何故か、いじめとは別件らしいけど、ね。」

その言葉に、私は首を傾げる。

「何故? いじめの事、隠す必要は無いじゃない。」

すると、忌瀬さんは肩を竦めて答えた。

「話しはしたけど、相手にされなかったって話だよ。」

「星華さんの家、ここら辺でも有数の資産家だからね。」

「耶麻台(やまと)学園にも、多額の寄付をしてるって噂だし。」

途端に、私は顔を顰めてしまう。

「………嫌な話。」

「全く。 だから、清瑞も、理事長よりは九峪先生に相談する事が多かったみたいね。」

「ふぅん。」

頷きながら、さらにページをめくった。

その瞬間、完全に、私の動きが止まった。
ゆっくりと顔を上げて、正面に座る忌瀬さんの顔を睨み付ける。

「………何で、私のデータが載ってる訳?」

私が地の底から響く様な低い声音で問い掛けると、忌瀬さんは明後日の方向を向いたままに答えた。

「いや〜、清瑞の関係者って言われたもんだから、つい♪」

「つい、じゃなぁ〜いっ! いつ調べた? しかも、スリーサイズまでっ!!!」

「あ、それ、大体で適当に書いてみました。」

「適当って………。 そんなの載せるなぁ〜っ!!!」

「大丈夫♪ 私の親切心で水増ししてるから。」

「尚、悪いわぁ〜っ!!!」

「悪い訳無いでしょっ!
 突然現れた、麗しの転校生に対する、男子生徒の夢を壊す気っ!!?」

「打ち砕いて水洗便所に流し込んじゃえ、そんなもん。」

互いの主張は平行線のまま、ついには、追いかけっこにまで発展した。

「こンのっ! 待てぇ〜〜〜っ!!!」

「ひゃあ〜、お許しをぉぉぉ〜〜〜〜〜っ♪」

「許さなぁ〜いっ!!!」

結局、その日は帰宅時間まで追いかけっこをしていた為、
情報を手に入れただけで終わった。



新たに広がる交友関係。


清瑞をいじめていたと言う四人の女生徒、星華、亜衣、衣緒、羽江。


そして、清瑞が頼る事の無かった相談者、伊雅理事長。



(犯人は、この中に居るんだろうか。)


(それとも、もしかしたら、今までに調べた人達の中に居るのかも知れない。)


(そして、犯人は、私が事件について調べている事に気付いてる筈。)


(もし、犯人が清瑞を殺したんだとしたら、私の命も狙って来るかも知れない。)


(分からない………。 清瑞の自殺に、一体、どんな裏があるって言うんだろう。)


漠然とした不安を打ち消して、私は、忌瀬さんから貰ったノートを抱き締めた。


>>NEXT





<あとがき>

お久しぶりです、Jで御座います。
お待たせ致しました。

<火魅子伝サスペンス劇場 〜決して愛される事の無かった私達〜>、

無事に第十一話を投稿する事が出来ました。

星華、登場。
彼女のファンでいらっしゃる方、ごめんなさい。
いじめっ子にしてしまいました。
でも、何故か、ピッタリって感じがしちゃってます。
う〜ん、巨乳をアピール出来たから良いや。(笑)

では、次回、『第十二話:いじめと警告と危機一髪と』をお楽しみに!!!