火魅子伝サスペンス劇場

<決して愛される事の無かった私達>


作・BARD様



第一話:転校、そして、友達



夏も真っ盛りの時期、突如として飛び降り自殺をした、
耶麻台(やまと)学園の女生徒、清瑞。


警察の手により、彼女の死は、あっさりと自殺で片付けられてしまった。


耶麻台(やまと)学園に通う生徒達の証言によって分かった、彼女がいじめられていたと言う事実だけで。



清瑞は遺書を残していなかったと言うのに。
飛び降り自殺をした時、靴を履いたままだったのにも関わらず。
私宛てに、普段と全く変わり無いメールを送って来たのに。

そう、誰も知る事の無い、清瑞から送られて来た私宛てのメール。

私は、そこに綴られた文を読み返す度に、思う。



清瑞が自殺をするなんて考えられない。



それじゃあ、何で、清瑞は屋上から飛び降りたんだろう。
無性に、私はその理由が知りたくなった。

(まずは捜して見よう、清瑞が最後に会ったと思われる人物、『あの人』を………。)



まだ、残暑も厳しい頃、九月一日、私は耶麻台(やまと)学園に転校する。




始業式の後、私が案内されたのは、三年一組のクラスだった。

「先月の下旬に、親の仕事の都合で引っ越して来ました。」

「ちょっと変わった名前だけど、炎輪(ほのわ)慧って言います。」

「えっと、まだこの街に慣れてませんけど、よろしくお願いします。」

少し、いや、かなり緊張しながら、私は無難に自己紹介をする。


「「「うおおおおおっ!!!」」」

途端に、教室中がどよめいた。

「あ〜っ! お前ら、静かにしろっての。 転校生が驚くだろうがっ!!!」

三年一組の担任、九峪先生が疲れた風に怒鳴り散らす。

「悪いな、慧。」

「お前は知らないだろうけど、耶麻台(やまと)学園ってのはエスカレータ式なんだ。
おまけに、結構、編入試験のレベルも高くて、な。」

「それで、他の学校から転校して来る生徒ってのは珍しいんだよ。
特に、お前みたいに可愛いのは、尚更だ。」

平然と、九峪先生はとんでもない事を言ってのける。

(………あ、あはは。 何、この担任教師は。)

ちょっと引いちゃった。
そんな私の気持ちなんか知ってる筈も無く、九峪先生は話を続ける。

「分からない事があったら、あそこに居る忌瀬に聞くと良い。」

「一応、このクラスで一番優秀な生徒だ。」

「その反面、学年で一番の問題児でもあるけど、な。」

九峪先生の言葉に、
教室の後ろの席に座っていた女生徒が、大袈裟なくらいに仰け反って見せた。

「あいた〜っ! ちょっと、九峪センセ、それは酷くない?」

「いや。 全く、そうは思わないな。 ほら、喚いてないで、挨拶しろよ。」

「ううっ、最近、センセが冷たい………。」

一瞬、二人はどんな関係なのだろう、と思ってしまう。

「………。」

私が反応に困っていると、忌瀬さんはウインク混じりに挨拶をしてくれた。

「忌瀬っス。 よろしくね、慧ちゃん♪」

「あ、うん。 よろしくっ!」

「あいや、元気だね。 そう言うの好きだよ。 気に入った、仲良くやりましょう♪」

見た目な知的な雰囲気だったけど、そんな外見を見事に裏切ってしまうくらい、忌瀬さんは明るい感じで手を振ってくれた。



私の席は、窓際の一番後ろ。

授業中、他の事をしたり、眠ったり。
そんな好き勝手な事をするのに好都合な、クラスでも競争率の高い特等席だ。

ちなみに、忌瀬さんは、私の前の席に座っていた。

「ご近所さんだね。 何か、縁があるなぁ〜。」

「うん。 色々と迷惑を掛けるかも知れないけど、よろしく。」

「あいよ。 まあ、分からない事や知りたい事があったら、何でも聞いて。」

「ありがと♪ 何でもって………、学園内の事には詳しいの?」

「人並みには。 私って、根が野次馬っぽい性格してるんだ。」

「あははっ♪ そうなんだ?」

笑いながら、私は内心では別の事を考えていた。

(忌瀬さんは知ってるんだろうか、清瑞の事。)

(でも、いきなり聞く訳にはいかないよね。)

(機会があったら、さりげなく、聞いてみよう。)

そう、心に決めながら、私は九峪先生の話に耳を傾けていた。



清瑞の居ない耶麻台(やまと)学園。
秋からは一緒に通えると思って、春先からずっと楽しみにしてた。



お互いに、辛い時なんかは、一生懸命に励まし合った。

お互いに、嬉しい時には、心の底から笑い合った。

お互いに、哀しい時は、一晩中、ディスプレイの前で涙し合った。


普段はメールのやりとりをするだけ、到底、会う事なんか自由に出来ない。
おまけに、知り合う切っ掛けは、一通の間違いメール。
そんな私達の付き合いだったけど、そこには、確かに友情があったと思ってる。


でも、私の転校を楽しみにしていると言ってくれた、そのメール友達は、
もう、何処にも居ない。



死んだ。



彼女は自殺したのだ。



誰かは分からない、だけど、彼女がずっと想い続けて来た『あの人』に会おうとして。



『あの人』と何があったかは分からないけれど、自殺をするまで追い詰められたとは思えない。



(殺されたの………?)



そこまでの考えに至って、私は背筋に寒気を感じた。


そう、清瑞が自殺をしたんじゃ無いと言う風に考えれば、誰かに殺された可能性も出て来るのだ。


そうだとしたら、犯人は何処に居るのだろう。


清瑞のメールを手掛かりとするならば、
犯人は、おそらくは耶麻台(やまと)学園の何処かに居る事になる。


もしかすると、今も何食わぬ顔をして、授業に出ているかも知れない。


(そうだとしたら、私は、犯人を許さない。 それだけは、絶対に許さない。)


ネットの中だけの友人だったとしても、
間違いメールで繋がった奇妙な友情だったとしても。


誰が何と言おうと、私と清瑞とは、友達同士だった。


そして、その友情は、私を突き動かすには十分な理由だった。


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