火魅子伝サスペンス劇場

<決して愛される事の無かった私達>


作・BARD様



プロローグ:事件の始まりは一通のメールから



夏休みも半ばに差し掛かった頃。
その日も、私はいつもの様にPCの電源を入れた。
もう、習慣となってしまった幾つかの操作を繰り返して、メールチェックをする。


<新着メールは、一件です。>


ディスプレイに表示される結果までも、いつもと同じだった。
「時間ピッタリ。 本当、几帳面なのよね、清瑞って。」
思わず、私は苦笑してしまう。
清瑞と言うのは、私のメール友達。
以前、私の携帯に届いた間違いメールが切っ掛けとなって、それからメールのやりとりをする様になった。
話してみると、もう、驚くくらいに気が合っちゃって、今では、毎日の様にメールのやり取りをしている。

早速、私はメールを読む事にした。




Subject:
こんばんは。
Date:
Sun 15 Aug 2004 22:47:29
From:
清瑞
To:
炎輪 慧様




こんばんは。

夏休みに入ってから、随分と日が経ちました。
慧は如何、お過ごしですか。

今日、私は図書館に行って来ました。
夏は天王山とも言うし、少しは真面目に取り組まねば、と思ったのですが………。
残念な事に、あまり成果は上がりませんでした。
日々の精進が足らなかった事に、今更ながら、悔やんでいるところです。


さて、かねてから、慧にも相談していた、あの件。
ずっと悩んでいましたが、ようやく決心しました。
明日にでも、あの人に会って問い質してみるつもりです。
自分の大切な人が罪を犯した、その事は、どうしても許せそうにありませんから。

やはり、この事は、私は知らなくても良い事だった気がします。
知らないままだったら、普通に卒業も出来ただろうし、今まで通りに過ごせたと思う。

色々と、メールにも書きましたね。
あの人を遠くから見ているだけで満足していた自分の事とか、
一度で良いから、あの人の胸に飛び込んで抱き締められたかったと思っていた事とか、
今では、あの人と居るだけで物凄く安らぎを覚えてしまう事とか。

学校中から無視され続けた中で、私が今日までやって来られたのは、あの人が味方をしてくれたおかげだと思う。

あの人の事を書く度、当たり前だけど、慧は私の事を凄くからかいましたね。
そんな風に言われると、私は困ってしまうのですが、反面、凄く嬉しく思えました。
私とあの人が、凄く近しい存在だと言う証明の様に思えて。

多分、明日、あの人と話してしまったら、
もう、あの人とは今まで通りの関係では居られないでしょう。


きっと、いえ、絶対に、あの人は学園を辞めてしまう。

でも、あの人が罪を犯したのは、どうやら、私達のせいみたいです。
だから、私には、それを止める義務があると思います。
そして、きっと、止められるのは、私だけなんだと思えるから。

………すみません、今日のメールは意味不明ですね。
今、混乱していると言う事が、自分でも良く分かります。

でも、こんなにも、あの人の事を話したのは、慧が初めてです。
今までは、あの人の事だけは、誰にも秘密にして来たんですけど、
明日、全てが終わったなら、あの人の事を話そうと思います、慧にだけは。

きっと、驚く事でしょう、反応が楽しみです。
唯、メールでは、慧の驚いた顔が見られないので、残念ですけど。

来月から、こちらに転校してくるんですよね、楽しみにしています。
それでは、失礼します。



清瑞



相変わらず、実家が剣道の道場をやっているだけあって、堅苦しい感じ。
でも、長い付き合いなので、もう慣れちゃった。

「ふふっ♪ 私も会えるのが楽しみだよ。」

ふと、机の上に在る写真立てを見て、私は笑ってしまう。
そこに写っているのは、私と清瑞。
春先から何度か、清瑞の住んでいる街に行く用事があって、その時に撮った写真だ。
ちなみに、その用事と言うのは、私の転校の手続き。
そう、私は来月から転校するのだ、清瑞と同じ学校に。

「さって。 私も気合いを入れて返事を書かなきゃ!!!」

早速、私はキーボードに手を伸ばす。
(まず、書く事って言ったら、やっぱり『あの人』の事かな。)
そう考えて、私はニヤリと笑う。

『あの人』とは、清瑞が良くメールに書く人物の事。
幾ら、聞いても、何も教えてくれないので、私は仕方なしにこう呼んでる。
清瑞は『あの人』とは恋人同士じゃ無いって言い張るんだけど、
私は、密かに、二人は付き合ってると思ってる。
だって、清瑞が『あの人』を大切に思ってるって感じ、メールから伝わって来るもん。

それだけじゃ無くて、清瑞からのメールって、冗談抜きに半分近くは『あの人』の事が書いてあるし。

(いい加減、認めちゃえば良いのに。)

(そうしたら、からかうのも………。 いや、勿論、止めないけど。)

(今度のメールで認めたら、思いっきりからかってやろ♪)

そんな事を考えて、ふと、私は手を止めた。

(でも、清瑞がメールで言ってるけど、『あの人』って犯罪者なんだよね。)

(学校を辞めるって事は、退学? それで、逮捕なんか、されちゃったりして………。)

(あはは、まさか、ね。)

(清瑞って、普段からメールの文面が堅いもん。
本当は、犯罪って言っても、カンニングとか万引きとかなんじゃないかな。)

(人殺しとかだったら、嫌だよ。 転校早々、親に心配掛ける事になっちゃうし。)

そう思い直して、再び、私はメールを打ち始める。

この日、メールを送ったのは、日付が変わる少し前の事だった。
眠かったので、私はすぐに布団に入ってしまう。




後から知った事だけど、その翌日、一つの事件が起こったらしい。



某県、某市に在る耶麻台(やまと)学園で、一人の女生徒が飛び降り自殺をしたのだ。



女生徒の名前は清瑞。



私の大切なメールフレンドだった。



そして、秋、枯れ葉の舞う季節。


私は耶麻台(やまと)学園に入学する。


>NEXT


 <あとがき>

 お久しぶりです、Jで御座います。
 以前、リクエストを頂いてから、二年越しの完成!!!長々とお待たせしちゃってすみません。
 構想、執筆、合わせて二年以上も掛けたサスペンス作品、 <火魅子伝サスペンス劇場〜決して愛される事の無かった私達〜>、ようやく、陽の目を見る事が出来ます。
 一話完結の短編 → 前・後編の謎解きもの → 連載小説 そんな感じで、紆余曲折を経たこの作品ですが、受け取って頂けると、作者としては、この上無い喜びです。
 ちなみに、この作品、全二十話と言う膨大な量で完結する予定です。果たして、見事、書き切る事が出来るでしょうか。 では、次回、『第一話:転校、そして、友達』をお楽しみに!!!

『追伸』
 清瑞ファンの方、ごめんなさい………。


 Jさん(BARDさん)の長編サスペンス開始です^^
 いきなりパソコンの画面から始まるからびっくりしましたよ〜。さらに清瑞が・・・・Jさん勇気があるなあ(笑)
 犯人?は誰なのか。あの人とは?このサスペンスを取り巻く人間模様は、全20話が終わった時どう明らかになるのか、楽しみにしてます♪
 なお推理ものだけにテンポを大事にしたいので、最終話まで話ごとの評価アンケート、感想は入れません。届いたらなるべく早く更新するつもりですので、ご了承くださいませ。