※このSSには多少性的な描写が含まれています。18禁ではありませんが、15禁くらいかな?との作者さんの判断もありますので、15歳以下の方は閲覧されないようにお願いします。









魅 土  -未 明-


作・風車様




 雅比古は可笑しな程に寝姿を人前で見せたことが無い。
 ・・・・・・唯一、私だけが例外。
 
「ふふ、久しぶりだな、雅比古のこんな安らかな寝顔は」

 九峪と魅土が二人で各地を回り始めて二度ほど季節が廻るが、とても不思議なことがある。
 どんなに辛い戦いがあろうと。
 どんなに時間に追われ肉体を酷使しようと。
 私も既に千の時の流れに身を置くが、睡魔というものはある。
 だが、雅比古は違う。
 
 見兼ねて何度となく少しでも体を休めるようにと促したりもした。
 押し寄せる睡魔を我慢して雅比古に付き合ったりもした。
 ・・・・・・けど、先に眠りに落ちてしまうのは私。
 なんだか悔しく思う。

 普段見れない分、それが目の前にある時、何とも云えない感情が私を支配する。
 少しでも長くこの無防備な寝顔を。
 ・・・・・・見ていたい。

 男にしては少し長めの睫。
 僅かに開いた薄めの唇。
 ゆっくりと上下する胸。
 太腿の間に埋まる頭がなんだがこそばゆい。

 何とも穏やかに眠る彼。
 飽きることなく眺めた後。
 軽く触れる程度に口付けを落した。
 
 少し悪戯心が湧く。

 求めれば応えてくれるが、偶に、一方的なのも悪くない。
 陽の香りがする髪に。
 綺麗に生え際が揃った額に。
 柔らかな頬に。
 首元に。
 次々と口付けを落していく。
 
 耳元への口付け。
 湿った音に。
 小さく吐息が漏れる。

 顎先から唇をなぞり、鼻の頭に。
 鎖骨の窪みを擽り。
 胸元を啄む。
 思わず息を呑む所に印を刻んでいく、どうやら歯止めが効かなくなってしまったようだ。

「・・・・・・ふっ・・・ん!?」
 唇を割り差し入れた舌がいきなり吸われた。
 驚き、舌を引込めようとするが、絡められた舌がそれを許してくれない。
 肺の中の空気が無くなり、苦しくなったところでやっと、離してくれる。

「魅土・・・・・・おはよう」
「おはよう・・・・・・・・・ずるいな」
「どっちが?」
「両方共だ」
 艶やかな長い赤髪が九峪を包む。
 再び重ねた唇から暖かな温もりと甘さが伝わる。

「どうしたんだ?・・・・・・まだ夜明け前なのに」
 赤髪の海を、ゆっくりと指が梳く。
「欲しくなった・・・・・・駄目か?」
「いや、ぜんぜん」
 熱くなってきた身体を預ける。
 広く逞しい胸が、胸越しに伝わる鼓動が、心地好い。
「もしかして、食べられてる?」
「ふふ・・・・・・そうだな」

 身体を返され、普段は何も映さない瞳に見つめられる。
 腕を首に廻し、引寄せる。
「困らせたくなった」
 何時もの私らしからぬ表情。
「そっちこそ」
 身体がさらに熱くなる。

 口付けを重ね、何度も離れては繋がる。
 東の空が青味を増し、月明かりが徐々に弱まる中。
 私は何とも云えない至福の渦の中を漂う。
「熱いな・・・・・・とても」
 雅比古の腕が私の腰を抱き、私の手が雅比古の胸元を押さえつけ、痕をつける。
 うっすらと額に浮かぶ汗、背中に廻された掌が何とも安心できる。
 けど、少し悔しくなり。
 項を甘噛みする。
「くっ・・・・・・魅土」
 また、身体が熱くなる。
 
 魅土。
 たったその一言、雅比古の声がよみがえる。
 雅比古は、雅比古にしかできないやり方で、いつもその名前を言の葉に乗せる。
 あらゆる言葉を。
 誠実に、愛情を込めて。
 私は彼に名前を呼ばれるのが好きだ。
 魅土。
 ごく僅かに躊躇して、優しい声で呼ぶ。
 その声の温度が好きだ。

 制止しようとする彼の手を握り締めて。
 彼の身体を抱き寄せ、抱きしめ、証をつける。
 押し付けた豊満な乳房、痛いほど痼った先が堪らなく熱い。
「どうやら、抑えが利かなくなってしまったようだ」
 開きかけた口を塞ぎ、組み敷く。
「せめて、夜明けまでな」
 つないだ両手に力が篭る。





「ふぁ〜、もう少し寝ていたかったな」
 私の胸に抱かれた雅比古がそんなことを云う。
「勧めても寝ないのは雅比古だろ?」
 常々疑問に思っていた事を口にした。
 何だか意外といった表情の彼。
 何度か私の顔を、眼を瞬かせて見たあと。
 自分の身体を指す。

 そこには紅く咲いた無数の花。

「もう、捕われちゃってるから」
 と、はにかみながら微笑む。

 つられて微笑み返し。
「・・・・・・私もだ」

 彼の大きな欠伸にあわせて。
 雅比古がもう一度、眠りにつけるよう飽きることなく髪を撫ぜた。


〜了〜



お初な方からの投稿です^^
かなり大人な二人ですねえ。まだ背景設定とかがわかりませんが、九峪が少年、ではなく青年らしいのはわかりますね。
一番好きなキャラが魅土とのことで、魅土メインのSSをこれからも投稿されるとのこと。いろいろなことも今後明らかにされていくのではないかと思います。楽しみにしてますね♪