火魅子伝〜神器に選ばれし者〜

第4話


作・ビック様




 ボクは………あの時の事を………忘れない。

 忘れようとしても……ボクが生きてる限り忘れるなんてこと……………ない。

 ボクは『力』を持っていた。

 でも、それは戦うための『力』じゃなかった。

 戦う力を持っていないボクはただ見ているしかなかった。

 ただ……見ることしか………出来なかったんだ……………

 あの時の事を思い出すと今でも……涙が出そうになる。

 いつもなら………綺麗な夕日を背に皆と遊んでいたはずなのに……

 空は……。

 炎からでる黒い煙で………真っ黒に染まってた。



 ただ見ているだけだなんてボクは嫌だ!!

 だから、自分の『力』を全て使って日魅子と名付けられた、生まれたばかりの赤ん坊を別の世界に逃がした。

 日魅子はいつか火魅子となり、この国を救ってくれるはずだ……。

 辿りついた世界は平和そうで、ボクが起きた時には泣いていた日魅子を抱きとめている人影を見た。

 ……うん。

 いい人みたいだ。

 そう思って、日魅子の成長を祈りながらボクは眠りについたんだ。

 元の世界に戻るためには力を溜めなきゃ……



 ようやく元の世界に戻るだけの力が溜まりボクは目を覚ました。

 あとは日魅子がボクの所に来てくれるのを待つだけだったんだ……

 でも………ボクの目の前に現れた日魅子は……年老いていた。

 力を溜めるのに時間がかかり過ぎたんだ!!

 ボクは愕然とした。

 まさかここまで時が経っていたなんて!

 ………こんな……こんな事になるなんて……

 老いているとはいえ日魅子からは強い力を感じる。

 でもそれだけじゃ駄目なんだ!

 確かに力は必要だけど…………

 九洲の民が火魅子に求めている物は誰もが笑って暮らせる平和な世の中なんだ。

 だから人々に『明日への希望』を与えられる存在じゃなきゃいけない。

 今日魅子を連れて行って、仮に耶麻台国が復興したとしても、

 寿命や病気ですぐに死んでしまっては国は混乱し、滅んでいくと思う。

 だから…未来ある若き力が必要不可欠だったのに……


 ………それでも………耶麻台国を復興させて、

 苦しんでる九洲の人達をすくわなきゃいけない。


 そう思って日魅子に向かい力を使った丁度その時だったんだ!

 九峪が現れたのは!!


 …………!!!

 この時は驚きのあまり思考も止まってた。

 蒼竜玉の気配!?

 確かに一緒にこっちの世界に来たはずだけど、

 日魅子を元の世界に戻すのに夢中で今まで傍に蒼竜玉がないのに気づかなかった。

 ボクが驚いていると木々の間から人が現れた。

 ……蒼竜玉の気配がする青年………

 …………………………もしかして!!

 選ばれし者ぉぉぉ!?

 ま、ま、ま、まさか選ばれし者が現れるなんて!?

 しかも選んだのが蒼竜玉ぅぅ?

 どうなってるのさぁ〜〜〜〜〜〜!?

 でで、でもこれは…………

 その時ボクの頭脳は天啓を得たかのように閃いた。

 火魅子の素質をもった子供が他にも何人か生まれていたはずなんだ。

 その子と選ばれし者が一緒に狗根国と戦えば耶麻台国復興も夢じゃない!!!


 実際、選ばれし者………九峪の力は凄かった。

 まだ全然使いこなせていないようだけど………

 九峪自身も何か武術をやってたみたいで、咄嗟の判断力には目を見張るものがある。

 耶麻台国復興の協力はしてくれないみたいだけど、火魅子の素質を持つ女性を探すのは手伝ってくれるらしい。
 
 もちろんボクの魅力を駆使して絶対いつか協力してもらうつもりだけどね♪


 でも!

 でも…………でも………………でも!!!

 「どうしてその九峪が迷子になってるんだよ〜〜〜〜!!!」 


 「ったくどこ行ったんだよキョウは〜〜?」

 九峪は当麻の街で……………迷っていた。

 九峪はこう言っているが実際にはぐれた原因は九峪にある。

 街に入ったとたんトイレに行きたくなった九峪は、キョウに「ここで待ってろ」と言ってあてもなく走っていってしまったのだが……

 この世界(時代)に公衆便所というものがあるはずがなく、その事に気付くまで、九峪は街中を走り回るはめになってしまったのだった。

 ようやく気付き目に付いた民家で事を済ませ、いざキョウの所に戻ろうとした時にはどこをどう来たのかわからなくなっていた。

 ………なんとも情けない話である。


 ザワザワ

 ザワザワ

 「んっ? なんだ?」

 しばらく歩いていると前方に人だかりが出来ている。

 (なんだろ?)

 気になった九峪は人垣を掻き分けていった。

 (……喧嘩………かな………)

 目の前では大柄ないかにも悪人面した男とお使いの帰りなのか、背中に袋を背負っている黒い服をきた少女が睨みあっていた。

 「………………」

 「テメェ! 黙ってねぇでなんとか言ったらどうだぁ!?」

 「…………………」

 「……このガキィ!!」

 男は少女が話そうともしないのが気に入らないらしく今にも殴りかかりそうだ。

 (……オイオイ、子供相手にムキになるなよ)

 「すいません」

 「ん? なんだい?」

 「あの二人、なんであんな…」

 「ああ、なんでもあの女の子は数日前この街に来た旅芸人の一座の子らしいんだけどね?

  あの男が一座の座長を紹介してくれって頼んだらしいんだけど……見事に無視されてあの通り。

  まあ、悪い噂しか聞いたことがないような男だから邪な目的であることは間違いないだろうけどね」

 「へぇ〜〜」

 「私もまだ見た事ないんだが、その座長は大変な美人で踊りの腕も超一流らしいよ?

  そのうち私も見に行こうと思ってるんだけどねぇ」

 「ハハ、そうなんすか」

 (なるほどねぇ〜)

 九峪が近くにいた街の人に何があったのか聞いていると少女が「ハァ」と溜息をしてから喋り出した。

 「さっきからしつこい。あんた昨日志野に振られたのにまだ諦めてないの?」

 少女は呆れるように言う。

 「このガキィ!!」

 (なるほど…既に玉砕済みか…それであの子をだしにまた迫ろうと……)

 九峪は事の起こりを納得しつつ何時でも飛び出せる体制をとる。

 男はいつ殴りかかってもおかしくない状態になっていた。

 「そんな話断るに決まってる。もういいでしょ? 急いでるの」

 少女はそう言って男から背を向けて歩きだした。

 「………ざけんなぁぁぁ!!」

 男は後ろから少女に向かって殴りかかった。

 (ッッック!!)

 九峪はすかさず止めに入ろうと駆け出そうとする。

 パシッ!

 助けに入ろうとした瞬間、男の拳は横から伸びる手によって受け止められた。

 「うぉっとっと!」

 九峪は走り出そうとしたところに急にブレーキをかけたため、よろけてしまった。

 「珠洲、何道草食ってんだよ!こっちは人手が足りないってのに……」

 (すげぇ! あの細腕であの男の力完全に押さえつけてる!!)

 拳を受け止めたのは緑色の髪をした20才くらいの女性だった。

 容姿は綺麗というよりカッコイイという感じだ。

 「織部姉ぇ……そんな奴……私でも倒せるのに……」

 「駄目だって……珠洲は手加減てものを知らないんだから、今のだってこの男の腕切り落とすつもりだったろ?」

 掴まれた拳が外れず、なんとか外そうともがいていた男だったが、今の話を聞き顔色が悪くなっていった。

 「そ、そんなこけおどしが通じ「ガンッ!!」」

 バタッ

 「ふう、これで静かになった……、ほら珠洲、行くよ!」

 「うん」

 織部は男を殴って気絶させ、何事もなかったかのように珠洲を連れ歩き出した。

 (ふぅ、大した事もなく済んでよかったけど……あの二人凄いな………なんかもう色々と…)

 九峪は最後の部分で冷や汗を掻いていた。

 「……っと」

 「織部姉ぇ、どうしたの?」

 「いやちょっとな……」

 織部は立ち止まり九峪に顔を向けた。

 「そこのアンタ!」

 「…え? 俺?」

 九峪もまさか自分が呼ばれると思わず驚いた。

 「珠洲を助けようとしてくれたろ?ありがとな!」

 「………!!!」

 (気付いてたのか!?)

 確かに助けようとしていたが、あんなやり取りの最中に自分の事にも気付いていたことに九峪は驚愕した。

 「俺達この道の先にある広場で色々と芸見せてるんだ、よかったら見に来てくれ!

  じゃな!」

 織部は九峪の返事も聴かず歩き出した。

 珠洲も九峪をチラッと見た後、ペコッっと注意しなければ気付かない程度に頭を下げて、織部の後に付いて行った。



 「なんかどっと疲れたな〜」

 「九峪〜〜〜〜〜!!」

 二人が去り、とりあえずキョウが居た場所を探そうと歩いていると、キョウが九峪に向かって右手を振りながら走って来た。

 九峪がキョウに預けておいた狼を引きずりながら……

 「もう!! 何処行ってたのさぁ〜〜、心配したんだからね!?」

 「悪い、道に迷っちゃってさ…」

 「九峪はまだこの世界に不慣れなんだから気を付けてよね!!」

 「ああ、心配してくれてありがとな」

 「うん♪ どういたしまして♪」

 「それにしてもよく俺の居るところが分かったな?」

 「神器の気配を辿ってきたからね♪」

 「へぇ〜〜」

 (そんなこと出来るのか)

 「ねぇ九峪♪」

 「ん?」

 「九峪を探す途中広場で芸人の一座を見かけたんだ♪面白そうだし行ってみない?」

 「えっ?」

 (それってさっきの………)

 先ほどの織部の言葉が脳裏をよぎる。

 (あの二人がいる一座か……興味あるな……)

 「そうだな………行ってみるか」

 「やった〜〜♪」





 あとがき

 や、やっと4話目……自分の文才のなさが憎い…(号泣


 かなりお忙しい中、投稿ありがとうございました、ビックさん♪

 志野はおあずけとは憎いことをなさる(ぇ)次こそは登場ですね。そして珠洲が意外にも?わり〜〜と素直な性格?なんでしょうかね。・・・ゲーム版みたく、ひそか〜に応援してるような珠洲も、ちょっとみてみたいんですけどね(笑)織部さんはデキる人で、やっぱカッコいいです。
 キョウの願いに九峪が応えてくれるのはいつになるのでしょうか。期待してます、ビックさん^^ああでも無理はしないようにしてくださいね〜。
 


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