火魅子伝〜神器に選ばれし者〜

第3話


作・ビック様








 九峪とキョウは森の中を歩いていた。

 キョウの話によると、召喚の際に人に見られるとなにかと不味いだろうということで、

 山人でも滅多に寄り付かない山の奥地に九峪を召喚したらしい。

 キョウと一緒に火魅子の素質を持つ女性を探す旅をすることにした九峪は、とりあえず街か村にでも行こうと山を降りていた。
 
 「なあ、キョウ」

 「ん、なにぃ?」

 「今の内にこの世界の事を教えてくれ、一般常識とか人の暮らし方とか」

 「あ、そうだね♪」

 山道は日魅子に鍛えられ山で育った九峪にとって苦になるようなものではなかったが、九峪はこの世界について何も知らない。

 キョウからこの世界について聞いて見る事にした。

 (知らず知らずの内に恥かくなんて勘弁だしな…)

 「まずこの世界のことなんだけど、この世界は五つの世界が重なるようにして成り立っているんだ」

 「五つの世界?」

 「そう♪ 五つの世界は上から『天界』『仙人界』『人間界』『魔獣界』『魔界』と異空間を通して重なってるんだ。

  あ、『異空間ってなんだ?』…なんて聞かないでよ? ボクだってよく分かってないんだから♪」

 「………」

 (RPGかよっ!?)

 九峪は心の中で突っ込みをいれた。

 非常識な事が続いているため信じないなんてことはないが、さすがにこの展開には呆れていた。

 「でね、名前の通り天界には『神』、仙人界には『仙人』、人間界には『人間』、魔獣界には『魔獣』、魔界には『魔人』が主に暮らしてるんだけど…、

  厄介な事に昔天界と魔界で戦争があってさぁ〜、その時の影響で人間界に魔獣なんかが残ってて結構物騒な世の中なんだよ〜〜♪」

 「今の話、笑って言うところか?」

 「まあまあ♪ そうゆうわけだから人々は城の中に家を立てて暮らしてるんだ。

  城って言っても『街』ってみんな呼んでるんだけど…、簡単に言うと昔の中国の城郭都市を想像してみるといいのかな?」


 この世界の住人は主に街に住んでいる。

 理由は魔獣や盗賊、外敵から身を守る為である。

 街に住んでいる住人は自分達の安全と生活の為にその街を治める領主に税を払う。

 領主は税を貰う代わりに住民の安全を保障する。

 いうなればギブ・アンド・テイクな関係なのだ。

 もちろん、街の中で畑なんて作れるわけがないので、農民は街の近くに小さな集落、『村』を作って暮らしている。

 街の外に住んでいるので彼らは危険性が高い。

 緊急時には街の中に逃げる事を認められているが、やはりこの時代は身分の差というものがあるのだろう。


 「へ〜〜、城って行っても出入りは自由なんだろ?」

 「うん♪ さすがに商人や旅人とか物資の交流がないと生活なんて出来ないからね。

  でも、町の住人でもない限り夜には追い出されるよ?入る時に番号札渡されてさぁ、ちゃんと確認してるんだよ〜」

 「げっ!! マジかよ…」

 「マジマジ♪」

 「じゃあ、宿屋とかは無い訳か……はぁ、先が思いやられるわ」

 「まあまあ♪ 耶麻台国復興目指して頑張ろうよ♪」

 キョウは不自然なほど明るく言う。

 「そうだな………って、テメェまだ諦めてなかったのか!?

  俺は火魅子の素質を持つ女性を探すのを手伝うだけって言っただろが!」

 「むぅ〜〜〜!! ケチッ!!」

 キョウは頬を丸く膨らめて九峪を睨みつけるが、九峪は全く気にかけていない。

 「ケチで結構!!」

 「むぅ〜〜〜〜!」

 「唸っても駄目だ。ったく、まだ諦めてなかったのか」

 九峪は呆れて溜息をつく。


 「――――ッ!!」

 突然背後から妙な気配を感じた。

 「おい、キョウ!」

 「何? もしかしてやる気になってくれたの?」

 「バカッ! そんなこと言ってる場合じゃねぇ、後ろ見てみろ!」

 九峪はキョウの後ろをにむかって指差した。

 そこには20〜30匹はいるであろう狼の大群が今にも襲いかかろうと近づいてきていた。

 キョウの顔から血の気が引いていった。

 そうしている間にも狼の群れは九峪とキョウを取り囲んでいく。

 「うわぁぁぁ! く、くたにぃ!! どうしよう!?」

 「落ち着け! とりあえずお前は鏡に戻れ! 俺がなんとかするから!!」

 「う、うん。 九峪……きをつけて…」

 ボンッ

 キョウは九峪の意図に気づき素早く鏡に戻る。

 自分がいては足手まといになるということをキョウは理解していた。

 鏡に戻ったキョウを九峪はすかさず自分の懐にしまう。

 ジリッ

 周囲を警戒しながら九峪は構えた。

 既に九峪の周りは完全に狼達に包囲されており逃げ出す事は出来なくなっている。

 (なんか…昔野犬の群に襲われた時のこと思い出すなぁ)

 「っく!」

 一匹が九峪の足に噛み付こうと襲い掛かってきた。

 すかさず体を反転させてかわすが背後から別の狼がすぐさま襲いかかってきた。

 ドカッ

 回転と同時に殴りつける。

 殴りつけられた狼は動かなくなったが、狼の群はそれをきっかけに一斉に襲いかかってきた。

 九峪は持ち前の身体能力でなんとかかわし、時には反撃していくが狼の数が多すぎた。

 (くそっ! 数が多い!! しかも犬よりも断然速い!!)

 「はぁ!!」

 足元に噛み付こうとする狼をすかさず飛んでかわす。

 (けど行動は犬によく似てる……となれば方法は一つ!)

 九峪は着地と同時に一匹の狼を睨み付けた。
 
 「リーダーをぶっ潰す!!」

 犬や狼の群の場合、その群には必ずその群を統制するリーダーが存在する。

 九峪はそのリーダーを倒すことで他の狼達を追い払おうと考えた。

 以前野犬の群に襲われた時は、この方法で窮地を逃れていた。

 九峪が睨み付けた先には他の狼より一回り大きく、森の中に小さくある丘の上でこちらを見下ろしてる狼がいた。

 「生意気にも見下しやがって!!」

 バチッ!!

 右腕に蒼い雷が絡みつく。

 「そういやここに来る前に獲った狼…食い損ねてたな…」

 襲ってくる狼を左足を軸に半回転してかわし、そのまま目標の狼に向かって一直線に走る。

 次々と襲ってくる狼を最小の動きでかわしながら九峪は上着を脱ぎ左手に巻きつけた。

 狼のリーダーも危険と感じたのか九峪に向かってくる。

 「テメェをぶっ倒して、美味しく喰らってやらぁ!!」

 声を発するのと同時に狼は口を大きく開けて噛み付いてきた。

 九峪は上着を巻きつけた左手で狼の口目掛けて殴りつけた。

 「ガァッ!!!!」

 狼の口に九峪の左手がスッポリとはまり抜けなくなる。

 噛み付こうにも服が邪魔でどうにもできなかった。

 「これで終わりだぁ!!」

 すかさず雷をまとった右手で狼の頭を上から思いっきり殴りつけた。

 ガンッ!

 バチバチバチッ!!

 「―――――ッ!!!」

 九峪が殴りつけると左手が外れ、狼は地面に倒れて叫び声もあげることなく絶命した。





 「志野、見えて来たよ」

 小さな少女が隣を歩く女性に話しかける。

 大きな荷物を運ぶ一団が街道を移動していた。

 どうやら旅芸人の一座のようだ。

 「おっ! あの街にいるかも知れないんだろ?」

 少し後ろで疲れた様子もなく大きな箱を肩に担いだ女性が志野と呼ばれた女性に話しかける。

 「えぇ……あの街にいるはずです…」

 志野と呼ばれた女性は決意を秘めた瞳で目の前の街を睨み付けた。

 「あの『当麻の街』に………多李敷が……」




 「大猟大猟〜♪」

 九峪は背中に3匹の狼を背負って山を降りていた。

 まだ倒れている狼はいたが、息があったので見逃しておいた。

 死んでいた狼には軽く黙祷をささげて運びやすいように縛った。

 ちなみに狼は手足を縄で縛っているのだが、これはキョウがどこからともなく渡してくれた。

 九峪が「お前縄なんて持ってたのか?」と聞くと「企業秘密だよ♪」と、何度聞いてもキョウはそれしか言わなかった。

 意外と謎の多いキョウであった。

 「九峪ぃ、3匹の内2匹は食べないで残しておいた方がいいよぉ」

 忠告するかのようにキョウは言った。

 「どうしてだ?」

 「まだこの国は物々交換が主流だからね♪上手くやればいい物が手に入るかもしれないよ?」

 「そっか……」

 そこまでいって急に九峪は黙り込んだ。

 「どうしたの?」

 「ん〜〜、服も手に入れたほうがいいかなと思ったんだけど…」

 九峪の今の服装はGパンに白のTシャツ、その上から黒の袖無しのベストを着ていた。

 腰にはショルダーポーチをつけている。

 中には非常時にそなえて色々と入っているようだ。

 「大丈夫だよ♪この国では自分で服作っちゃう人が多いから、人の服装も千差万別なんだ♪

  だから九峪の格好も別に変じゃないと思うよ?」

 「そっか。 でも自分で作るってのは凄いな〜」

 「そう? その方がお金だってかからないし自分の好みで服を作れていいと思うけど?」

 「でも手間がかかって………おっ? おいキョウ! あそこに見えるの街じゃないか?」

 「ほぇ?」

 九峪に言われてキョウは前方に目を向けた。

 どうやら話している最中に山を抜けていたようだ。

 「多分あれは『当麻の街』だよ!」

 「よし、いくぞ!」

 「うん♪」


 



 あとがき

 遅くなってすいません(土下座) 精神的にちょっとヤバイ状況にありました(^^;
 まあそれはともかく(オイ 今回は戦闘シーンがあったのできつかったです(笑
 初めてなのでおかしいところがあったと思いますが広い心でお許しください。


ビックさん、だいじょうぶですかあ?^^;無理はなさらぬよう。
上げるの遅くなってすいません、神器に選ばれし者3話を掲載しました。
伊万里たちより、志野一座と先に遭遇しそうですね。狼3匹背負った九峪ですか・・・ワイルドだ(笑)素手でやってるし、かっこいいですねえ。
九峪とであった志野の反応が楽しみかも。火魅子候補だとわかるのか、わかったとして九峪はどう接するのかも興味ありますね^^
楽しみにしています、ビックさん♪
 


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